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【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレー】7月を振り返る
宇都宮から別府まで、7月も色々な街でカレーを食べました。カレーブームという意味では全国的な盛り上がりをどこに行っても感じるのですが、その土地土地で流行の仕方が違うように思います。つまり同じカレーが全国で流行しているというわけではなく、街ごとに流行っているカレーが違うのです。
様々なスタイルのカレーが色々な街でそれぞれ違う形で流行し、それらが融合してこの大きな流れに繋がっていると言えるでしょう。カレー好きの皆さんにもその面白さを体感していただきたいです。夏休みにカレー旅行、おすすめですよ\(^o^)/
【第1週のカレー】スプーンで切れるチキンカツ?! 宇都宮の隠れた名店で出合ったカレーとは?
地方でおいしいもの探しの際に食べログを利用する場合、点数だけで判断してはいけないと普段から考えています。もちろん地方に限らずそうなのですが、基本的には自分と味覚や感覚の近いレビュアーを探し、その人の意見を参考にするのが最もハズレが少ないでしょう。ただそれが地方店となると、レビュアーの数が少ないこともあって、なかなか正しく点数に反映されにくいと感じています。
その場合どうすれば良いかというと、高評価レビューと低評価レビュー、どちらも読むのです。食の好みは人それぞれですから、万人がおいしいというものはありえません。「自分はこれダメだった」という人のその理由を読めば、逆に「自分はそれ好きだな」と気づいたりすることもありますから。そもそもレビュー数が少ない場合は、これはもう食べてみて自分でレビューを書いてしまいましょう。それが食べログの楽しさであり、信頼度向上につながると僕は考えています。
今回ご紹介するお店は、東武鉄道宇都宮線・東武宇都宮駅近くにある「カレー屋 ドリトル」。2019年7月現在、食べログの点数は約3.2ということで決して高いわけではないのですが、実質はもっと高評価されてしかるべきお店だと思います。
店内はカフェ風。カウンター席とテーブル席、ピンク色のカーテンがリゾート的雰囲気も感じさせて居心地が良いです。「カレーは飯だ」というマスターの信念のもとに作られたオリジナルのカレーは、おいしいご飯をおいしく食べるためのカレーを目指しているとのこと。そのため、ご飯に合うように味噌や醤油、ナンプラーといったアジアの発酵調味料を使用し、だしにもスパイスにもこだわった逸品。

僕がいただいたのは、「ベジカレー(ミニ)」620円に「チキンカツ」200円をトッピング。僕は普段からご飯少な目で頼むことが多いのですが、ミニサイズでもご飯は180gということだったので個人的にちょうど良い量ですし、値段が少し安くなるのも嬉しいです。
まず最初にチキンスープが出てくるのですが、雑味の無い奥行きのあるおいしさで、その後のカレーの期待感を膨らませます。ベジカレーはサブジ(インド料理の野菜スパイス炒め煮)を中心とした7種の色とりどりの野菜がのり、見た目的にも健康的にも良い一皿です。

これに肉っ気も欲しかったのでチキンカツをトッピングしたのですが、切れ目が入っていません。提供の際に「カツは柔らかいのでスプーンで切って召し上がってください」と。

試しにスプーンで切ってみると、確かに簡単に切れます。このカツをスプーンで切るという行為の持つ、ある種のエンタメ感がこのカレーの美味しさを引き上げます。
フワっと、そしてサクっとした衣に柔らかく薄目にカットされたチキン。野菜の食感と味の変化、カレーの奥深さと程良いスパイス感、そして何よりこちらの主役ともいえるご飯の美味しさ。これらがそれぞれの味を高め合い、食べて行く程においしさが上がるタイプのカレーです。ファーストインパクトよりも、食べ終わった後の方が満足度が高いタイプ。

卓上に置かれたスパイスやソースも良い仕事をしてくれて、途中からスパイスを追加して食べるとさらにおいしさのレベルが上がりました。
うーん、やっぱり凄い。このレベルのカレー、東京でもなかなか出会えません。特にこのベジカレーにチキンカツトッピングという組み合わせが大成功だったなと思います。しかもめちゃめちゃ安いですから恐れ入ります。これだけおいしいのであれば他のカレーや料理にも期待が膨らみますね。夜はスパイスおつまみもあり、飲み屋営業しているそうです。
東京在住の僕としてはなかなか気軽に行けない場所ではありますが、またいつかきっと再訪したいと思える素敵なお店でした。近隣在住の方、こんな素敵な隠れた名店が近くにあるのですから、行かねば損ですよ!
※価格はすべて税込
【第2週のカレー】カレー=酒の肴は常識? スパイス料理をリーズナブルに楽しめるカレー居酒屋
カレーを食べながらお酒を飲む、あるいはカレーをつまみにお酒を飲むというと、カレーマニアではない方からするとまだ違和感があるようで驚かれることもしばしばなのですが、カレーとお酒は合うんです。
そもそもカレーにはターメリック、つまり“ウコン”が入っていますから、カレーを食べながらお酒を飲めば悪酔いしにくいとも考えられるわけで。確かに昔はカレーのお店でお酒を飲むというスタイルは珍しかったかもしれませんが、ここ数年でお酒ありきのカレーのお店も増えてきています。
その中でも特に個性的なお店が東京・新中野にある「やるき」です。カレー仲間が集まって、やるきでカレー宴会。まずは「カレーキャベツ」250円、「やるきポテトサラダ」300円、「さばの開きスパイス焼き」580円をつまみに乾杯。そしてこれ、全てがカレー味なんですよ!

「カレーキャベツ」にはカレーディップがついており、そのカレーがしっかりとしたインドのキーマカレーなのが最高です。

ポテトサラダもカレー的スパイス感で食欲が進み、焼き魚でさえもカレー味で、しかもそれがおいしいんですからカレー好きにはたまりません!

魚に関しては、以前はほっけだったのですが、今はさばに替わったようです。しかし、さばといえばカレーとの相性が最高に良い魚ですからね。いずれにしてもおいしいです。ベクトルが変わっただけでクオリティは全く変わっていません。
続いて串焼きをおまかせで、そして「カレー焼きうどん」600円、「マハラジャナンピザ」480円、「マトンカレーライス」600円と、しっかり食事メニューも。

「串焼き」は、タンドリーチキン味の焼鳥をはじめ、鶏レバー、砂肝、ビーフがそれぞれスパイスで焼かれていて食欲が進みますしお酒との相性も完璧です。

「カレー焼きうどん」は、ただカレースパイスで味付けただけでなく、カレーソースを炒め合わせたものであり、万人受けするおいしさ。


「マトンカレーライス」は辛さセレクト可能で、カレー好きの会だったので辛口の5辛でお願いしたのですが、皆感心するおいしさ。奇をてらったように見えるカレー創作料理が多い中で、王道のカレーライスがしっかりおいしいというのがこのお店の凄さであり、素晴らしさだと思います。
店主のトニーさんはインド人でありながら、日本の居酒屋チェーンで長く働いていた方。だからこそ居酒屋メニューとインド料理の融合がこれだけ高いレベルで成し遂げられているのでしょう。気取った言い方をするなら、フュージョン料理とも言えます。でも、あくまで居酒屋ということで値段も非常にお手頃。接客も気さくで、下町の居酒屋のような雰囲気が楽しくて心地よいです。
「安い・うまい・楽しい」の三拍子がそろったカレー居酒屋。お酒を売りにしたカレーのお店も増えたと最初に書きましたが、多くはバーのような落ち着いた雰囲気のお店です。そんな中、完全に居酒屋スタイルで気軽に手軽に飲めてカレーを食べられるこちらのお店は貴重な存在。カレー好きでお酒好きな方なら、一度は行っておくべきお店ですよ!
※価格はすべて税込
【第3週のカレー】名物はカツカレー! 複合施設内で味わえる今どきジャパニーズカレーとは?

「インバウンド」という言葉も一般化したと言えるほど、海外からの観光客が増えています。そしてその観光客をどう取り込むかは飲食業界のテーマでもあるわけです。僕も一日本人として、海外の方に日本ならではのおいしいものを食べてもらいたいと思っているのですが、僕が海外の方に一番食べてほしいのは、やっぱりカレーなのです。
カレーは日本食ではないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日本人に好きな食べ物を聞けば確実に上位に入ってくる食べものです。そもそもラーメンも日本なりの進化を遂げ、もはや日本食として海外へ広まっています。カレーも徐々にそうなりつつあるのですが、現在海外へ広まっているのは昔ながらのルーカレーであり、今の日本で大きな話題となっているスパイスカレーの文化はまだまだ海外へは広がっていない状況です。
そんな中、今回ご紹介するようなお店が増えてくると、海外の方へ「ジャパニーズカレーは面白くておいしい」と伝わっていくのではないかと思うのです。

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは2018年にオープンした、ホテルや飲食店、オフィスが一体となった施設、渋谷ブリッジの中にあるカレー居酒屋「トライアングルカレー」です。
店内は開放的な空間であり、かなりの人数が入れそうです。客層は若い日本人。そして外国人客もちらほら。やはり近くのホテルからこちらに来やすいということもあるのでしょう。

カレー居酒屋というだけあり、夜のメニューは居酒屋系おつまみも豊富。「よだれ鶏」600円はさっぱりとしながらもピリっとした刺激とザーサイの食感がアクセントとなり、一品目のおつまみとして非常に良い感じ。

天ぷらメニューも豊富であり、こだわりを感じたので「野菜天盛り合わせ」1,000円も注文。こちらは茄子、アスパラ、オクラなど様々な野菜がさっくりと軽やかに揚げられ、塩でいただくので重さもなくて良いです。

メインのカレーは「カツカレー」1,000円に。玉葱ベースのシャバっとした食感の小麦粉不使用スパイスカレー。スパイス感はクローブを中心にバランス良く香り、だしの旨味も感じるカレーです。

まさに今カレー界を席巻しているスパイスカレーのスタイルなのですが、これをそのようには見せず渋くシンプルなカツカレーにしているという所に心意気を感じました。このカレーはきっと老若男女誰もがおいしいと思えるカレーであり、宗教的な縛りが無い限り、国や文化が違う方にも受け入れられるおいしさだと思います。

週替わりのカレーも、蟹カレーだったり鮎カレーだったりと意欲的なメニューが並び、通っても飽きがこなさそう。良い意味で気さくで気楽な接客も、ゆっくりとお酒を飲むのに良いです。ランチタイムにカレーだけ食べにくるのにも重宝するでしょうね。
まさに良い意味で「今どき」のカレー屋さんであり、カレー居酒屋。こういうお店が増えて、世界に日本のカレーの美味しさと楽しさを伝えていってくれたらなと思います。
※価格はすべて税込
【第4週のカレー】カレーの達人が唱える“水が変わるとカレーはさらにおいしくなる説”とは?
東京の人気店で腕を振るっていた方が九州へ移動してお店を開き、そちらも人気店となる流れが増えてきました。東京在住の僕としては、大好きなお店が九州へ行ってしまったことを寂しく思いながら九州まで食べに行ってみたら、東京時代よりも確実においしくなっていて「こんなにおいしいカレーを出されたら納得するしかない。確かに九州でやるべきだ。また九州まで食べに行けば良い」と思ったことが過去に複数回あります。
そしてまたそんなお店が大分・別府にできました。東京・幡ヶ谷に今もある「Curry&Spice 青い鳥」の姉妹店「カレー&スパイス 青い鳥 別府」です。
インドやスリランカの料理と、日本の「重ね煮」という、砂糖や化学調味料を使用せず、陰陽バランスを整えるという調理法を組み合わせた、オリジナルの重ね煮カレーで東京でも大人気の「Curry&Spice 青い鳥」。
こちらで腕を振るっていたちえさんが地元である大分県に戻り、「青い鳥別府」としてしばらく間借り営業をしていたのですが、ちえさんの誕生日でもある7月16日に独立店舗としてめでたく開店しました。八幡朝見神社の参道に位置するお店は、白を基調とした温かみのある雰囲気で、居心地の良い空間です。
開店日のメニューは、「塩カボスチキンカレー馬告」「豆とビーツのカレー」「海老のココナッツカレー」の3種の中から1種、もしくは2種を選ぶというもので、今回は「塩カボスチキンカレー馬告」と「海老のココナッツカレー」計1,600円を選びました。
「塩カボスチキンカレー馬告」は、カボスの甘酸っぱさとほろ苦さがチキンの旨味と見事に融合し、世界的に注目を集めている台湾の山胡椒「馬告(マーガオ)」が味をビシっと引き締めていました。味覚で感じられる全ての味がこのカレーひとつで味わえるという高次元のおいしさに驚きつつ、「海老のココナッツカレー」を一口食べてみるとさらなる驚きがありました。
この海老カレー、東京でも同じメニューを食べたことがあります。その時ももちろん最高においしかったのですが、確実においしさのレベルが上がっていたんです。思わずちえさんに「これ凄い! 東京時代より断然おいしい! 何か作り方変えたんですか?」と聞いてみると、「何も変えてないんですけど……あ! お水が変わりました! このお水、神社の湧水を使っているんです」と。
水が変わっただけでそんなに味が変わるのかと不思議に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、確実に変わります。「食べログ カレー 百名店 WEST 2019」にも選出された「月と亀」の小松さんも東京から九州へ移った方なのですが、全く同じことをおっしゃっていたのを思い出しました。
もちろん水だけではなく、野菜もより新鮮なものを使える状況や、ご本人の腕がさらに上がったこと、自分の地元でやれている心の安定感のようなものも色々と重なってこそのおいしさなのでしょう。そして、その中において水の役割がかなり大きいということなのでしょう。
カレーのみならずデザートも最高なんです! 「智恵美人の酒粕、カルダモン、ジンジャーのアイス」400円は、アイスクリーマーを使わずに手作りしたそうで、その手間暇のかけ方が確実においしさに繋がっていました。
九州は福岡を中心にカレーが非常に盛り上がっています。別府も福岡に続けとばかりに大きな動きが感じられる街です。温泉もあって非常に癒やされる街。温泉がてらカレー、あるいはカレーついでに温泉。どちらも楽しみな別府旅行。夏休みの時期にもおすすめですよ!
※価格はすべて税込
取材・文・写真:カレーおじさん\(^o^)/