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お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度美味しいこの連載。第10回は、東京・白金高輪で出会える、今話題の「バスクスイーツ」を紹介します。
【猫井登のスイーツ探訪10】白金高輪で発見! バスクスイーツの魅力に迫る
編集(以下、編):さすが、高級住宅街として知られる白金高輪。立派な高層マンションが、ドーンとそびえ立っていますね!
猫井(以下、猫):白金高輪のランドマーク「白金タワー」ですね。42階建てだそうですよ! 今日目指すのは、あのマンションのすぐ向こう側です。
編:あのマンションの向こう側には一体、何が待っているんですか?(ワクワク)
猫:ずばり「バスクスイーツ」です!
編:バスクって、今流行ってる「バスクチーズケーキ」のバスクですか?
猫:そうです! バスクは、ヨーロッパの南西部、スペインとフランスの両方にまたがる地域です。独特の文化を持ち、またフランスとスペインの要素が融合し、個性的な料理やお菓子が多いんですよ。
編:それは楽しみです!
猫:……その前に、目の前にとっておきのお店があるので1軒寄り道をしましょうか。
【1軒め】テイクアウトもOK! 美しきスイーツに出会える「リーブル 白金高輪店」
出典:みるみんくさん
編:こちらは、どんなお店なんですか?
猫:フランス・パリで、五ツ星より上のランクである「パラス」の称号を持つ最高級ホテル「フォーシーズンズ ジョルジュ サンク パリ」内にある、世界的に有名な三ツ星レストラン「Le Cinq(ル・サンク)」にて、副料理長を務められた田熊一衛シェフがオープンしたお店です。
時間帯によって「パティスリー&サロン・ド・テ」「レストラン」「バー」とお店の形態が変化する珍しいスタイルをとっています。
編:へぇ〜! 色んなタイプの料理が楽しめそうですね。こちらでオススメのスイーツとは!?
猫:本物の果実のような外見をした新感覚スイーツ「フリュレ」各900円(税抜)と、見た目にも美しいフランスの伝統菓子「パリ・ブレスト」をアレンジした「パリ ブレスト」480円〜(税抜)の2系統があります。
各種「フリュレ」/出典:毎日外食グルメ豚さん
「パリ ブレスト」/出典:毎日外食グルメ豚さん
猫:今回は、田熊シェフがフランスで習得した技術で仕上げた至極のスイーツ「フリュレ」をテイクアウトしましょう。季節によって、「ココナッツ」「フレーズ(いちごのムースにパイナップルの果肉)」など、色々な種類が登場しますが、今の時期は「マンゴー」が特にオススメです。
編:わぁ〜。瓶に入っていて可愛いですね!
マンゴーの「フリュレ」(瓶入り)
猫:「マンゴー」のフリュレは、外側の薄いチョコレートの殻を割ると、中からマンゴーとヨーグルトのジェラートクリーム、さらに宇和島産のブラッドオレンジとミントのソース、マンゴー色の2種のソースがとろ~りとあふれ出てくる至極の逸品ですよ!
マンゴーの「フリュレ」/出典:みるみんくさん
編:三ツ星レストランの副料理長が作るスイーツをテイクアウトできるなんて嬉しいですね。これからの季節、ホームパーティーの手土産にも喜ばれそう!
猫:それでは、本日のメインテーマ「バスクスイーツ」のお店に向かいましょう。はい、着きました! 徒歩1分。
編:早っ!
猫:「リーブル 白金高輪店」の角を挟むように、2軒のバスクスイーツのお店があるんですよ。まずは、右側にある「ガスタ」に行ってみましょう!
【2軒め】本場スペインの味を再現! バスクチーズケーキ専門店「ガスタ」
猫:こちらは、バスクチーズケーキの専門店です。スペイン・サンセバスティアンの旧市街にある有名なバル「La Vina(ラ ヴィーニャ)」の看板メニューであるバスクチーズケーキを再現しています。
編:そのお店って、そんなに有名なんですか?
猫:バスクチーズケーキが絶品なことで、世界的に有名なお店ですよ! 現地でバルといえば、タパスという小皿料理を食べながら一杯やるというのが一般的なんですが、「La Vina」ではチーズケーキが圧倒的な人気を誇っているんです。
で、そちらの門外不出といわれたレシピを、「ガスタ」のシェフ・パティシエールである勝羅沙織さんが授かり、再現したわけです。
「バスク チーズケーキ(8cm・一人用)」700円(税抜)/出典:la_la_lasagna*さん
編:見るからに美味しそうです……。どんな味わいなんですか?
猫:まず、食感は「ふんわり」「なめらか」なんですが、スフレチーズケーキとは異なり、瑞々しさがあります。焼き目のついた上部は、比較的しっかりとしていますが、中はトロッ。
味わいは、卵の風味にチーズの香りがふわりと溶け合っていて、敢えて例えるなら、上質なプリンにたっぷりとクリームチーズを合わせて焼き上げた感じでしょうか。
編:ふんわり、なめらか。しかも瑞々しいとは、調理法がすごく難しそうです。
猫:特に温度管理が相当難しいと思いますよ。チーズケーキをオーブンから出したあと、穴のあいた木の板の上で3時間以上休ませつつ、余熱で中心部まで火を入れるのだとか……。
編:これは、心していただかねばなりませんね!
猫:さあ、もう1軒の方に行ってみましょう。
【3軒め】チーズケーキに次ぐ注目のバスクスイーツが食べたいなら「メゾン・ダーニ」
出典:コスモス007さん
編:こちらももしや、バスクチーズケーキのお店ですか?
猫:いえいえ! バスク地方の伝統菓子である「ガトー バスク」450円(税抜)が有名なお店です。シェフパティシエの戸谷尚弘さんは、都内のレストランでパティシエとして修行された後、フランスへ行かれ、本場バスク地方で100年以上の歴史を持つ老舗菓子店「Miremont(ミレモン)」で修業をされた方です。
出典:八坂牛太さん
編:「ガトー バスク」って聞いたことはあるけれど、食べたことはないかもしれません。
猫:食感は、外は軽くさっくり、中はしっとり。アーモンドパウダー入りのサブレ生地とブラックチェリーのジャムがほどよい甘酸っぱさでよく合います。お店では1日10回も焼き上げているので、イートインで焼き立てを食べるのが一番だと思いますが、持ち帰りで冷めても、オーブントースターなどで温めれば、美味しく味わえますよ。
出典:tomon825さん
編:それにしても、こんなに近くでバスクスイーツのお店が2軒もあって、お客さんの取り合いにならないんですかね?
猫:実は、先程紹介した「ガスタ」は、「メゾン・ダーニ」の新業態だそうですよ。販売商品が全く違うので、両方に行ってバスクスイーツを堪能するときっと楽しいですよ!
写真・文:猫井登