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辺境料理はおもしろい!
超大型連休も終わってあっという間に日常に戻り、憂鬱な梅雨も間もなく。「気分転換にちょっと変わった外国料理を食べてみたい」「どうせしばらく休みも取れないし、料理だけでも海外旅行気分を味わいたい」……そんなことを考えている人、いませんか? 本当にバラエティに富んだ外国料理が食べられる昨今ですが、せっかくなら「辺境料理」をチョイスしてみてはいかがでしょうか。
ところで、「辺境」とはなんぞや? 辞書で引いてみると「中央から遠く離れた国ざかい、または地域」と出てきます。海外の地域に関して使うときは、誰もが知る首都や大都市ではなく、都市部から離れた地域を意味することが多いようです。というわけで、その国のメジャーな地域の料理ではなく、ちょっとローカルな場所だったり、一部の場所で食べられている地域色豊かな料理を、この連載では「辺境料理」としたいと思います。
では、辺境料理がなぜ面白いのか? それには3つの理由があると筆者は思うのです。
理由1 「食べたことがない料理」がたくさん!
東京では今、海外旅行先としてもあまりメジャーではない国や地域の料理を食べられる店がどんどん増加中です。ウズベキスタン、アフガニスタン、イスラエル、チュニジア、ミャンマー……私達には身近な中国料理でも、有名な北京や広東、四川の料理だけでなく、湖北料理や山西料理といった今まではマイナーだった地方の料理を食べられる店が登場。素材や調理法、味付けなど、これまでの自分の記憶や経験にない料理を食べてみることは、新鮮な驚きや経験をもたらしてくれるはず。まったく味の想像がつかないような料理名に遭遇したら、遠慮なく店員さんに聞いてみましょう。このコミュニケーションもまた楽しいですよ。
理由2 「日本人向け」ではない、ローカルな味が楽しめる!
そういった「辺境料理」を食べられる店では、あえて日本人向けの味付けにせず、現地の人達が日常的に食べている“ローカルの味”を出しているお店もとても多いように感じます。これには、在留外国人の増加だったり、チャイナタウン化している埼玉県・西川口や新小岩、ミャンマー人が多いことから「リトルヤンゴン」と呼ばれる高田馬場など新たな在日外国人コミュニティが増えていたりと、さまざまな要因が。そのため、食べに行くと店内に日本人は自分だけ、なんてこともザラ。でもこの“アウェイ感”が逆に楽しいというか、ちょっとした非日常感を味わえる気がするのです。
理由3 知らなかった文化を、ちょっとだけ知ることができる
日本でも北と南では味付けが違いますし、郷土料理もたくさんありますよね。それと同じように、どんな国にも地方ごとに郷土料理があるのです。ローカルな味を出す店が増えているということは、そういった差異が出てくるということ。同じ国の料理でもいくつかの店を食べ歩き、「あれ、この料理初めて見たな」「この料理、味付けor素材が別の店のと違うかも」と差異を見つけたなら、スタッフの人に聞いてみると面白いかも知れません。シェフの生まれた場所での特徴だったり、オーナーの郷土の料理だったり、というパターンもありますよ。
食には、その国の文化が強く表れます。時にはウイグル人の郷土料理である「ウイグル料理」のように、“国”というカテゴライズはできない民族料理も。そういう人々にとって、料理は大切な“継承すべき文化”。そういった部分に思いを馳せて食べると、料理を食べることで少しだけ自分の視野が広がる……そんな経験になるような気がするのです。
まずはここから! おすすめ辺境料理店
そんなわけで、これから「辺境料理」についていろいろとご紹介していきたいと思います。まず初回は筆者オススメの一店ということで、東中野の「キャラバンサライ包(パオ)」を。ここは日本人オーナーが経営しているお店なのですが、日本では珍しいアフガニスタン・パキスタンの料理……厳密に言うと、アフガニスタンに多く住む「パシュトゥーン人」の郷土料理を食べることができます。
異国情緒あふれるインテリアで、小旅行気分に 出典:超力招来さん
本場のアフガニスタン絨毯が敷き詰められた店内は、なんだか遊牧民族の住居にお邪魔したかのよう。遊牧民族にルーツを持ち、大半がイスラム教徒のパシュトゥーン人の料理ということで、この店で食べられる肉料理は当然羊が中心です。でもこれが、ものすごくおいしい! 鉄串で焼き上げる「カバブ」や「コフタ」はスパイスの使い方が絶妙で、「羊肉は苦手」という人でも食べられるはず。
また、ぜひ食べてほしいのは名物の「カラヒィ」。この「カラヒィ」とは鉄鍋のことで、オリジナルの小さなサイズの鉄鍋で肉や野菜を炒めた料理なんですが、これがシンプルながらとても奥深い味わい。香ばしいナンと一緒に食べればボリュームもたっぷりですし、個人的にはオプションのヨーグルトと合わせるのが好きです。
羊肉の「カラヒィ」とナン。ヨーグルトと合わせても 出典:Tokiyaさん
そうそう、メニューには麺料理「ラグマン」も。この「ラグマン」、中央アジア全域にわたって食べられている“元祖・麺料理”ともいうべき存在なのですが、最近いろいろな国のお店で食べられるんですよね。でも微妙に具材や炒め方に差異があって、比べてみるとこれがまた面白い!
お店の個性があらわれる「ラグマン」 出典:まさいさん
余談ですが。ISをはじめとしたイスラム武装勢力の問題があり、現在では一般の日本人は渡航できない国・アフガニスタン。でも石仏・石窟で有名なバーミヤンをはじめ、美しい世界遺産を持つ国でもあるんですよね。普段ニュースでしか耳にしない国でも、おいしい料理を食べながら思いを馳せると、これまでとは違う印象になるかもしれません。
次回はウイグル料理を紹介予定です。お楽しみに。