自家製アンチョビの塩気がたまらない「生アンチョビとバターのクロスティーニ」

「生アンチョビとバターのクロスティーニ」1ピース800円

クロスティーニとは、カリッと焼いた小さなパンに野菜やペーストなどをのせていただくイタリアの前菜。バターとアンチョビも定番の組み合わせだが、同店では自家製素材を使用しているのが特徴だ。

レーズン作りから仕込む自家製天然酵母で焼いた全粒粉とライ麦のパンに、冷たいままの発酵バターと真鰯を使った自家製アンチョビをオン。
チーズのような感覚でバターにかじり付くと、小麦の豊かな香りとバターのまろやかなコクが広がり、後からアンチョビの塩気と旨みを感じる背徳的な味わい。アテにすればついついワインがすすむ。

また、パンにドライイーストを使用しないことで後からお腹の中で膨らむ感覚がないなど、アピールしていないが実は体に優しいというのもうれしいポイント。

天然酵母は、通常レーズンを水に漬ける作り方が一般的だが、同店ではワイン用の無農薬ブドウを干し、レーズン作りから行っている

ロゼと相性抜群な「イタリアンカツ煮」

「イタリアンカツ煮」1,600円

こちらはイタリア・トスカーナ地方の郷土料理「リファッタ」を、日本人にもわかりやすく「カツ煮」として提供。薄く叩いた国産牛のランプ肉を牛乳でマリネし、カツレツにしてからトマトソースでさっと煮たもので「味の輪郭がはっきりする」との理由であえて常温で提供している。

メイン料理に見えて、冷菜

一見ボリュームあるメイン料理のようだが、冷菜としてスピーディーに提供されるため、驚く人も多いそう。冷たいトマトソースの酸味や甘みが際立ち、重さを感じない味わいも新鮮だ。ロゼワインに合わせるのがおすすめ。

コクのある肝入りでつまみにも 「イカスミスパゲッティ」

「イカスミスパゲッティ」2,100円

数種のパスタの中でも、伊藤さん自身の好物であり「カジュアルな店だからこそ、汚れを気にせず楽しんでほしい」と特におすすめなのが「イカスミスパゲッティ」。
ソースのみを絡めてあるのではなく、ヤリイカの身や肝も入ったイカの墨煮をベースにしているため、旨みも食べ応えもたっぷり。具材のみを赤ワインのつまみにしても美味。

後ひく味わいのヘルシージャンクフード「フライドズッキーニとロザマリーナ」

「フライドズッキーニとロザマリーナ」1,600円

フライドポテトのようなお手軽感を求めつつ、料理人として納得できる味を……と考えた結果、誕生したのがこちら。
スティック状にカットしたズッキーニに、セモリナ粉やチーズ、ポレンタ粉(トウモロコシ粉)などをミックスした衣をまとわせて揚げたフライドズッキーニに、自家製のロザマリーナを添えている。

ズッキーニはそのままでも外はカリッと中はしっとりした食感に、チーズの風味と塩気が感じられておいしいが、自家製ロザマリーナのピリ辛感と発酵食品ならではの奥深い旨みを加えれば、いっそう後をひく味わいに。

衣を付けたあと2日ほど寝かせてから揚げることで、ズッキーニから出る水分と粉がなじみ、衣に厚みが出てサクサクの食感に仕上がる

次の世代にも愛される店を目指して 

「mici」という店名は伊藤さんのあだ名から。ロゴデザインは、今年小学生になる伊藤さんの長男が書いた文字を採用。看板の刺繍は裁縫の仕事をする母によるもの。温もり感のあるハンドメイドが店の雰囲気にマッチしている

“老若男女が気軽に立ち寄り、ワインや食事を楽しめる場所”という伊藤さんのイメージ通り、オープン2カ月にして連日多くの人で賑わっている「mici」。
6月からは日曜祝日のみ、14〜19時オープンの「ヒルミチ」(昼飲み)もスタートしている。
「家族で食事に来ていた子どもが、十数年後大人になってここで最初のお酒を飲もうとまた来てくれるような、街に長く根付く店にできたらいいですね」と伊藤さん。
「リ・カーリカ」時代の伊藤さんを知る人だけでなく、純粋に心地よい場所として足を運ぶファンが今後ますます増えていきそうだ。

※価格はすべて税込

文:當間優子、食べログマガジン編集部 撮影:ジェイムス・オザワ