〈New Open News〉
毎日、たくさんの新しいお店が登録されている「食べログ」。そんな「食べログ」のデータベースの中でも、オープン早々、高い評価の口コミがあったり、多くの「保存」をされたりしている『注目のお店』を食いしん坊ライターが紹介します。
並木橋みりん(東京・代官山)

2025年10月、代官山駅より徒歩10分ほどの場所に、居酒屋以上割烹未満の大人の和食店「並木橋みりん」がオープンしました。店名の「みりん」には、“味の鱗(うろこ)”という意味が込められ、素材の持つ個性を丁寧に引き出すという思いが表現されています。

店主の田中秀和氏は、20歳から飲食の世界に身を置き、和食店で研鑽を積んできた料理人。2019年に三軒茶屋で開いた魚割烹居酒屋「魚と酒 めから鱗」は瞬く間に人気店となり、続く2023年には池尻大橋に「酒と麺 タイノタイ 池尻本店」を出店。和の技法と遊び心を融合させた料理で、多くの食通を魅了してきました。そして今回、満を持してオープンしたのが「並木橋みりん」です。

レトロなガラス扉を開けると、ほのかに立ちのぼる炭と薪の香りが出迎えます。店内は照明を控えめに落としたシックな設え。カウンターには炎のゆらめきが映り、まるで時間がゆっくりと流れているような感覚に包まれます。客席はカウンター10席とテーブル11席。炭火台を囲むカウンター席では、調理する姿を間近に見ることができ、臨場感と香ばしい香りに食欲がそそられます。デートや少人数の会食、大切な人との食事など、静かに味わう夜にぴったりの空間です。

メニューは「5,500円コース」のみ。その日の仕入れによって内容が変わる、旬を映す構成です。産地直送の魚介、全国から届く旬菜を、炭・薪・藁という3種の熱源を使い分けて火入れします。「のどぐろ蕪蒸し」は、ふっくらとした白身に蕪の甘みが溶け合い、上品な出汁の香りが余韻を残す一品。「甘鯛松笠薪焼きとアンデスレッド」は、薪火で甘鯛の皮目を香ばしく仕上げ、ホクホクのジャガイモとともに旨みの重なりを楽しめます。「長崎県 鰹の薪藁焼き」は、表面を藁で一気に燻し上げ、香ばしさの中にほのかな甘みを感じる逸品。

そして食事の締めを飾るのが、名物の「かまどご飯」。左官職人と共に造り上げた特注の竈で、選び抜いた名水と土鍋炊きの技を掛け合わせ、米一粒一粒がつややかに立ち上がります。炊き立ての湯気とともに香りが広がる瞬間は、この店ならではの幸福なひととき。

料理に合わせるのは、厳選された日本酒と12種以上のナチュラルワイン。軽やかで香り高いペアリングが、炭火の香りや魚の旨みをより一層引き立てます。和の中にモダンなニュアンスを添えるセンスが、田中氏の料理哲学を物語っています。

都会の喧騒を離れ、火のぬくもりと季節の味わいに浸る夜。「並木橋みりん」は、五感を満たす“大人の隠れ家”として、これから代官山の夜に新たな灯をともすことでしょう。
食べログレビュアーのコメント

『「魚真」にて十年の研鑽を重ね、三軒茶屋に「めから鱗」、池尻大橋に「タイノタイ」を開業した田中秀和氏。三店舗目となる「並木橋みりん」では、居酒屋の親しみやすさと割烹の品格を一皿に凝縮する。薪や藁の香りが店内をほのかに漂い、丁寧な焼き加減が料理に豊かな深みを与え、ひと口ごとに確かな技と意思を感じさせる。追加できる〆の食事には、竈で炊き上げたごはんと多彩なおかずが待ち受ける。その温もりに導かれるように渋谷の喧騒を忘れさせる静かな満足感がここにある。味の余韻がいつまでも心にやさしく滲んでいた。以下、コース内容。
ハーフコース ¥5.500
・のどぐろ蕪蒸し 菊庵
・郡山地野菜のタコス 生地にはほうれん草 味噌トマトソース
・柿白和 栗豆腐 丸十蜜煮 レバーペースト 水雲酢
・揚げ里芋 唐墨 白子の昆布焼き
・本日の鮮魚(真子鰈、鮑、泥障烏賊)
・岩手県合鴨薪焼き きたあかりのマッシュポテト 大葉ソース 山椒
・長崎県鰹藁薪焼き
・海老身上 白茄子 松茸
〆のご飯 +¥2,000
・名物竈ごはん(南魚沼こしひかり)
・牛つくね
・山利の秋しらす
・明太子
・海苔の佃煮
・椎茸出汁のお味噌汁
・香の物
・海老出汁カレー』(ジョン照井さん)
※価格は税込。


