〈食を制す者、ビジネスを制す〉

若き日のビル・ゲイツが行った“シンク・ウィーク”を真似てみたら……?

どう休むのか? それが問題だ

そろそろお盆休み。皆さんは酷暑の続く中、どんな夏休みを取られる予定だろうか? 周囲にヒアリングすると、実家へ帰省する人、台湾やベトナムなど海外旅行を予定している人、京都へ遊びに行く人など様々だ。私は、どちらかと言えば、国内で過ごすほうが多いのだが、いつも悩むのが休みをどう過ごせばいいのかということだ。どうも私は休みの取り方が上手ではない。実家に帰っても、20代の頃はリフレッシュできたのだが、最近は地元に帰って、行きたい場所もとくに思い浮かばなくなった。何となく仕事の感覚も抜けず、思い切って楽しむということもできない。

 

また、都内から少し離れて休みを過ごそうと思っても、先立つのは暑さと混雑。どこの観光地へ行っても暑いし、混雑していると思うとどうしても気が引けてしまう。結果として、都内のいつもの店で過ごすほかは、ちょっと足を延ばして、横浜の中華街へ、といったことが多くなる。それはそれで楽しいのだが、いつも心のどこかで満足していない自分がいて、もっと「いい休みだった!」と心から言えるような休みを取れないものか。いつも悩んでいるのである。

 

ビル・ゲイツの休みの過ごし方

一方、世界のビジネスリーダーは休みの過ごし方が違う。例えば、世界トップクラスの億万長者であるビル・ゲイツ。自分が所有する巨大クルーザーで、家族やお手伝い、料理人を率いてイタリアなどを旅行し、その費用に数億円かけるという。まさにお金持ちらしい豪華な休みの取り方なのだが、これでは参考にならない。

 

むしろ私が注目するのは、ゲイツが現役の頃の休みの過ごし方だ。ゲイツは年に一度、世間との連絡を一切断ち切り、一人別荘に閉じこもって、将来のビジョンや新規事業について考え抜く作業をしていた。これを“シンク・ウィーク”と称した。考えるための本や書類などあらゆる資料を大量に持ち込んで、一人で考えるだけの時間を過ごす。食事も簡単なものをとるだけで、1週間程度集中して、読書や勉強をするのである。

 

ゲイツの著書『ビル・ゲイツ未来を語る』『思考スピードの経営』は、このシンク・ウィークから生み出されたものだ。90年代に将来のデジタルビジネスについて語ったもので、当時はビジネスのヒントを得ようと多くのビジネスパーソンが手に取った。今読み返してみても示唆に富んでいる本である。

 

ゲイツはもともと読書家だ。マイクロソフトを起業するときも、ビジネスに関する法律書や会計書、経営書などをプレイボーイ誌でも読むように、濫読していたという。世界的な富豪になってからは、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿『レスター手稿』、西洋初の印刷物であるグーテンベルク聖書を個人所有し、知に対する関心は非常に強い。しかもナポレオンの研究家でもある。その意味で、ゲイツは、技術オタクではなく、戦略家だった。競争にどうやって勝つのか。その戦略性を磨くために、本や資料を読み、深く考えることを大事にしていたのである。

 

銀座の蕎麦店で将来を考える

ゲイツのように、休みを考える時間に充てる。この夏、もしそんな「シンク・ウィーク」を過ごしたいと思ったら、どうすればいいだろうか。1週間とまではいかないまでも、2泊3日くらい、ホテルや旅館で、一人で過ごすのもいい。実家に帰って3食昼寝付きというのもありだ。そのとき大事なことは、その期間を出来るかぎり、禁欲的に過ごすことだ。集中して、神経を研ぎ澄ませながら、考えるのである。

しかし、ホテルや実家は、いずれも何らかのノイズがありそうで、集中力が途切れるかもしれない。だから、あえて自宅で過ごしてみることも一つの選択肢だ。冷房をガンガンにきかせながら、部屋に閉じこもって読書や資料を読み込む。自分が考えたことをノートに書いて、自分の将来の構想を練ってみるのである。

 

そして、最も大事なことは休み最終日の夕方の過ごし方である。禁欲的な時間を過ごした分、最終日は久しぶりに俗世間に復帰する意味でも、ゆっくりお酒を飲みながら、考えたことを反芻し、しみじみと一人で過ごしてみるのがいい。

 

そこでお薦めしたい店が、銀座の「そば所 よし田」だ。いわゆる銀座の名店の一つで、今は移転してビルの2階にある。店には、業界人や企業役員といった玄人のオジサマたちが訪れ、大人の雰囲気がする。私も一度、資生堂の名誉会長である福原義春さんが一人でざるそばを食しているのを見たことがある。

 

蕎麦屋では、やはり日本酒とつまみがいい。夏は冷酒をいただきながら、「板わさ」「やきとり」「まぐろぬた」などをつまみながら、ざるそばで〆る。ちなみに、この店の名物は、「コロッケそば」だ。皆が想像するようなコロッケとはちょっと違い、和風に仕上げてあるからそば出汁とよく合う。ここでゆっくりと過ごしながら、将来の構想を改めて振り返ってみる。そうやって考えているうちに、お酒で次第に頭がやわらかくなっていく。その感じが何とも心地良いし、不思議と充実感がある。ゲイツとまではいかないまでも、そんな休みの過ごし方を一度試してみてはいかがだろうか。

 

 

出典:バムセ&マイケルさん
出典:nao-sannさん