【第4週のカレーとスパイス】みんな待ってた! 流浪の間借りカレー店「ラナンクルス」が念願の独立店舗をオープン

流浪の間借りカレー店が待望の独立店舗をオープン

新宿歌舞伎町のホストクラブ的なバーの間借りカレー店としてスタートし、その場所の物珍しさのみならず、有名カレー研究家や人気店シェフも通った埼玉のスリランカ料理教室「紅茶屋さん」をはじめ、大阪を代表するカレーの名店のシェフたちに薫陶を受けたからこその実力の高さもあいまって瞬く間に行列の人気店となった「ラナンクルス」。その後、同じ歌舞伎町や新宿界隈で流浪の間借り営業を続けていましたが、2025年7月16日、遂に独立し自身の店舗を落合駅近くでスタートさせました。

落ち着いた雰囲気の店内

通りから少し脇に入ったお店の場所は少しわかりにくいですが、だからこそ隠れ家のような雰囲気。店内はオーナーシェフのセンスの良さが随所に感じられる、おしゃれで落ち着いた空間となっています。(通常は店内写真撮影禁止ですが、今回は取材ということで特別に許可を得ました)

「ゴラカポーク」に「チキン」を追加し「平飼い有精卵のスパイスしょうゆ漬」をトッピング

料理の内容は日替わり。ランチタイムはカレーを1種にするか2種にするか、それにトッピングするかどうかという選択肢です。「ゴラカポーク」1,700円をメインに「チキン」300円を追加、「平飼い有精卵のスパイスしょうゆ漬」180円をトッピングしていただきました。

とうもろこしポタージュの鮮やかな黄色が夏にぴったりのビジュアル

副菜もたっぷりとのるスリランカスタイルですが、オーセンティックなスリランカ料理というよりは大阪スパイスカレーのようなオリジナルの工夫がある仕上がり。例えば出汁パリップにはしっかりと和だしの風味とうまみがあり、とうもろこしポタージュにはカルパシが香るという個性。

ゴラカポークの「ゴラカ」とは、木の実を乾燥して燻製させたスパイスの一種

メインのゴラカポークはスリランカ的でゴラカの程よい酸味が豚肉のおいしさを引き立て、チキンもスリランカスタイルをもとにしながらも少し違う着地で、スパイシーすぎるものが苦手な方でも自然と受け入れられそうなテイスト。たまごは味玉のような形で満足度を上げてくれるトッピングです。

「コルトラーダの麦茶」

カレーにはプチドリンクもついてくるのですが、この日のドリンクは「コルトラーダ」というワイナリーの麦茶。細部にまでこだわりを感じます。

8月からは不定期で夜営業もスタート。「マトンキーマナッツのミニカレー」500円は追加カレーとしてももちろん良いのですが、夜にワインを飲みながらその酒肴として機能しそうなテイストでした。

「マトンキーマナッツのミニカレー」

お酒のみならずソフトドリンクもおすすめ。「ピリッと土器チャイ」350円は先述した埼玉は紅茶屋さんのルフナを使い(茶葉は日替わり)、クローブ、シナモン、カルダモンというマサラチャイの王道スパイスに加え、ブラックペッパーやティンブールも使っていてその刺激が甘やかなチャイと見事に止揚しています。器もシェフお手製ということで、それもまた素敵。

「ピリッと土器チャイ」

ようやく自身の根城を手に入れたということでますます張り切るシェフ。1店舗目から通っている僕から見ても、ひときわ楽しそうに働いている姿が印象的でした。メニューや営業情報はSNSをご確認ください。小さなお店なので3名以上のグループ来店はご遠慮くださいとのこと。1人で行っても良いですし、デートにも使えそうなお店ですよ。

【第5週のカレーとスパイス】群馬の注目店編

北関東でカレーと言えば現地出身シェフの営むスリランカ料理やパキスタン料理の名店が思い浮かびますが、こと群馬県においては日本人シェフによるカレーのお店で注目すべき新店舗が少しずつ増えてきています。

今回はその中から2店舗、僕のお気に入り店をご紹介いたします。

注目の群馬カレーその1「オギノカレー」

「オギノカレー」

藤岡市で2024年11月11日に開店したこちらのお店。近隣で営業していた「インド料理PUNJAB」のシェフが内容も新たにリニューアル移転したお店です。シェフは群馬を代表する高崎の老舗「ニューデリー・マハトマ」で修業後、そこで出会ったインド人シェフと共にパンジャブを立ち上げ、立ち退きに伴いご夫婦でオギノカレーをスタートしたという流れ。

昼はカレーランチ、夜はスパイス料理飲みも楽しめる

パンジャブ時代から育んだ地域の農家とのつながりから、地産の野菜を積極的に使用したカレーやスパイスおつまみなど、昼も夜も楽しめるお店となっています。

南インド風キーマとバターチキン

ランチタイムの「あいがけカレー」1,650円は、その日のメニューから好きなものを選ぶ形。甘さ控えめの大人のバターチキン、ココナッツが印象的な南インド風キーマ、インド料理らしい濃厚なサグパニール、そしてマハトマ出身であることがうかがえるカシミールチキン、すべてがおいしいのですが特にカシミールが印象に残りました。

カシミールチキンとサグパニール

カシミールカレーと言えば日本のカレーの歴史を語る上で欠かせない湯島の老舗「デリー」の名物激辛カレーですが、シェフの修業した「ニューデリー・マハトマ」の前身は湯島デリーから派生した「デリース」です。そんな流れもあり群馬はカシミールカレーがおいしいお店が少なからず点在するのですが、こちらのカシミールは辛すぎず、デリーよりもとろみのあるテクスチャで、スパイスカレー的なアレンジのカシミールといった趣で初心者にもわかりやすく、激辛が苦手な方でも程よい辛さで食べやすい仕上がりでした。インド料理をスパイスカレー的にポップにした盛り付けと、正統派だからこその確かな腕。

マンゴープリン

300円追加でマンゴープリンがつくデザートランチというメニューもあり、このマンゴープリンがまた濃厚さと爽やかさが辛いカレーの後に良いです。

夜メニューも気になるものがたくさん。スパイスカレー好きもインドカレー好きも要チェックのお店です。

注目の群馬カレーその2「スパイスカレー MANTRA」

「スパイスカレーMANTRA」

続いてご紹介するのは、東京のカレー激戦区のひとつ高円寺の人気店が2024年8月23日に桐生市に移転したお店。店名は高円寺時代同様「スパイスカレーMANTRA」。

2024年8月、東京・高円寺から群馬・高崎に移転した

シェフご夫妻の地元が桐生ということで、お子さんが誕生したのをきっかけに地元で育てようということになり、この地に移転してお店をスタートさせたとのこと。

MANTRAの特徴は副菜にイタリアンを感じるところ。この日の副菜はブロッコリーのアーリオオーリオ、アーリーレッドのアグロドルチェなど、イタリア料理がベースとなっているものが含まれ、ご飯の上には棒状のゼッポリーネ(ピザ生地を揚げたもの)があしらわれるという楽しさ。

「スパイスカレー2種盛り」

「スパイスカレー2種盛り」1,200円は選べるカレーからラムと青唐辛子、根菜の赤味噌鶏キーマを選択。青唐辛子の辛さより爽やかな香りを立たせた着地が絶妙で、味噌の奥深さと根菜の食感が加わったキーマもオリジナリティのある仕上がり。イタリアンな副菜とも良く合います。

「ビーフカレー」

また、スパイスカレーのみならず欧風カレーもメニューにあり「ビーフカレー」1,250円は存在感ある大きなビーフ。フォンドヴォーのうまみとフルーティな甘味が程よく、欧風カレー好きな方におすすめ。

「自家製クラフトアイス」のゴルゴンゾーララムレーズン

そしてさらに面白いのは「自家製クラフトアイス」400円が常時10種ほどあるということ。その中からゴルゴンゾーララムレーズンをいただきましたが、濃厚なチーズ感はありつつも重すぎないアイスで、他の味も試したくなりました。「いつも10種あるんですか?」と聞くと、「欠品のものが出る日もありますが基本的にはあります。仕込みが大変です(笑)」とのこと。そう言いながらも楽しく地元ライフを充実させているシェフ。高円寺時代よりさらに進化したのを感じました。

どちらのお店もなかなか行きにくい場所にありますが、わざわざ行って損のないお店です。特にお近く在住のカレー好きの方ならすぐにでも行くべきお店。

群馬のカレー界隈がさらに盛り上がっていくと良いなと思います。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

※価格はすべて税込

文:カレーおじさん、食べログマガジン編集部

撮影:カレーおじさん