〈ニュースなランチ〉

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗の新メニューまで、おすすめのランチ情報をお届け!

KEI Collection PARIS

昼も徹底してラグジュアリー。小林圭シェフが手掛ける「KEI Collection PARIS」の日曜限定ランチ

写真:お店から

映画『グランメゾン・パリ』の料理監修を務めたことでも知られるフランス・パリ「Restaurant KEI」の小林圭シェフ。彼が日本で手掛けるグリルガストロノミーレストラン「KEI Collection PARIS(ケイ・コレクション・パリ)」で日曜限定のランチが今春スタートした。

「KEI Collection PARIS」の久保雅嗣シェフ。小林圭シェフとも密にコミュニケーションを取っている

「⻁ノ⾨ヒルズ ステーションタワー」内の専用エレベーターを上がった最上階の49階に位置する同店は、地上250メートルから眺める東京の夜景、隣接するインフィニティプールのライトアップや開放的なガーデンテラスが非日常な様相を呈す。この類いまれなるハイエンドな雰囲気を崩さぬよう、夜しか足を運ぶことができない大人の遊び場だった。しかし「昼間だったら行けるのに」という声も多くあったそうで、オープンから1年経った2025年4月20日、待望のランチ営業が幕を開けたのだ。

ディナーの人気メニュー「さちのくに牧場桜⾁タルタル」もオーダー可能! アラカルトがうれしいサンデーランチ

「さちのくに牧場桜⾁タルタル」

ランチもディナー同様、⽇によって替わる “お品書き”の中から⾃分だけのコースを組み⽴てるアラカルト形式だ。「最中フォアグラ林檎コンフィチュールいぶりがっこ」1,600円など、ディナーで人気のシグネチャーメニューもオーダーできる。

タルタルには、食用に飼育された馬肉を使用している

「さちのくに牧場桜⾁タルタル」2,500円も同店の人気前菜の一つで、質の高い国産食材の魅力をフレンチの技法で引き出した一皿だ。使用するのは、熊本県「さちのくに牧場」の桜⾁の生フィレ。一般的に流通している馬肉の大半が、競走馬や乗用馬、農用馬である中、こちらは食用に飼育された馬肉だ。この馬肉のフィレをコルニッションやケッパー、自家製マヨネーズでタルタルにしている。

脇を固めるのは、長野県軽井沢に構える柳沢農園のフルーツトマトのシェリービネガー漬け、エシャロットのフリット、梶谷農園の江戸前ハーブや芽ネギだ。コルニッションやトマト由来の甘酸っぱさ、フリットの香ばしい甘み、ハーブの清涼感に、低温調理したコクのある卵黄ソースが全体をまとめ上げる。嫌な臭みのない、クリアな赤身のうまみが感じられる桜肉タルタルだ。

構想から約1年! 早くも一番人気のランチ限定和牛ハンバーグ

「KEI Collection 和⽜ハンバーグ」

今回のランチ限定で新たに登場したメニューもある。スタート初週からすでに人気を呼んでいるのが、開発に1年かかったという「KEI Collection 和⽜ハンバーグ」4,500円だ。

人気上昇中のハンバーグは開発に1年を費やしたという

厳選した黒毛和牛を卵やパン粉でつないでタネにし、プランチャというスペイン料理で使われる鉄板で焼き上げてから、炭火で香りをまとわせている。さらにトリュフや生クリーム、卵黄を加えたフランス産ボーフォールチーズをのせてサラマンダーで表面をあぶり焼きに。赤ワインとポートワインを使ったソースを添え、仕上げにパルメザンチーズを削りかけている。

和牛のうまみを存分に堪能できる極上のハンバーグ

約150gのハンバーグは、ゆっくりと低温で火入れされており、ふっくらとほどける食感が美しく、黒毛和牛の甘い肉汁と繊細なうまみが口の中にあふれだす。小林シェフのエスプリを引き継ぐ、1℃単位で⽕⼊れを徹底した、グリルガストロノミーレストランの真価を感じる一皿だ。来店者にテーブルサーブされる「ビーバーブレッド」監修のクルートがしっかりとしたオリジナルサワードゥとの相性も楽しみたい。

オムライスの要素も感じられる、大人も歓喜の「ハヤシライス」

「⿊⽑和⽜ハヤシライス」

「⿊⽑和⽜ハヤシライス」4,600円も、ハヤシライスとオムライスを掛け合わせたような、満足度の高い一皿だ。トマト、赤ワイン、フォンドボーや香味野菜のだしが染み出たハヤシライスには、やわらかく煮込まれたゴロッと大きな黒毛和牛や、ベーコン、マッシュルームが入っている。

“大人のハヤシライス”というキャッチコピーがピッタリのリッチな味わいが魅力

たっぷりの半熟オムレツの下には、バターライスが忍ぶ。ハヤシライスの隠し味にはブランデーとカシスリキュールが入っているのだが、熱で香りが飛ばないよう、クレームドカシスは仕上げに数滴垂らす工夫も。日本人に親しみやすいメニューでありながら、細部にフレンチのエスプリを利かせているのはさすがの一言だ。

季節のフルーツが主役のパフェなど、デザートも徹底してエレガント

小林シェフのエレガントな食に対する美的感覚は、デザートにまで落とし込まれている。季節でフルーツが変わるパフェは、味と見た目のレイヤードが特に美しい。「苺パフェ」2,800円は、フレッシュな国産苺をたっぷりあしらいつつ、甘さだけでなく酸味や苦み、香りの良い要素を合わせて、多彩な食感とともに最後まで飽きさせない一品に仕上げている。

「苺パフェ」

最初の一口では、羽根形のフランボワーズチョコレートや、ミルクアイス、素材の味を生かした苺アイスが、フレッシュな苺の味わいを後押し。食べ進めると、チョコレートをまぶしたフィアンティーヌや、パールクラッカンが現れ、チョコレートの味わいとクレームシャンティのミルキーさが加わる。さらにスプーンを進めると、ジュワッと苺のエキスがあふれるシフォンケーキとともに、ホワイトバルサミコジュレの鮮やかな酸味が舌に印象を残し、苺のピューレが重層的な味わいを生む。

まさに、パフェの語源とされ「完璧」を意味するフランス語「パルフェ」を体現したようなデザート

段階的に食べ進めることで味わいが混ざっては変化する、パフェという構造を熟知したバランス感覚が光る一品だ。

技術と経験はもちろんのこと、類いまれな美意識と感受性を繊細に⽫の上で表現する小林シェフ。より多くの人に開かれた日曜限定ランチで、彼のスピリットが反映された料理を味わってみては。

※価格はすべて税込

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https://www.instagram.com/tabelog/

撮影:大谷次郎

文:中森りほ、食べログマガジン編集部