本連載のナビゲーター、肉バカの小池克臣さん

小池克臣が推す「予約困難予備軍」の焼肉店

巷には「予約困難」な焼肉店がたくさん存在している。口コミやメディアへの掲載など、予約困難となる要因はさまざまだ。本連載では肉バカ・小池克臣さんに早めに押さえておくべき「予約困難予備軍」の焼肉店を焼き方のポイントとともに教えてもらう。

教えてくれる人

小池克臣
横浜の魚屋の長男として生まれるも、家業を継がずに、外で、家で、肉を焼く日々を送る。焼肉を中心にステーキやすき焼きといった牛肉料理全般を愛し、ほぼ毎晩、牛三昧。その様子をInstagramYouTubeで発信中。著書に『肉バカ。No Meat, No Life.を実践する男が語る和牛の至福』(集英社刊)。公式ブログ「No Meat, No Life.」。

昭和48年創業の老舗焼肉店で味わえる、最高峰の和牛を求めて……

メイン通りの一角にある洒落たカフェを曲がった横路地に現れる、赤い看板が目印

「これまた、凄いお店があるんですよ!」との小池さんの一声で向かった今回の店は、東陽町の一角にある、知る人ぞ知る松阪牛をメインに黒毛和牛を取り扱う老舗焼肉店。とにかくレベチ!な仕入れルートを持つ「松阪牛 田じま」の魅力に迫る。

地下への階段を下りると、エントランスにある肉塊の保冷庫がお出迎え。期待値も高まりつつ、未知なる焼肉体験がスタート

「松阪牛 田じま」は、焼肉のほか、すき焼き、しゃぶしゃぶ、ステーキなどの飲食店から、惣菜や弁当の販売、東京食肉市場内の精肉卸「肉の田じま」まで幅広く展開する、“肉選び職人”の異名をもつ田島慎太郎代表が率いる一大グループの内の一軒。

エントランスを入ると地下に広がる広い店内に驚かされるはず。テーブル席のほか、奥に雰囲気のよい小上がりの座敷席もある。カウンター席も完備され、デートから接待、家族との食事まで、幅広く利用できる

田島さんの祖父の代に馬や牛の内臓卸業からスタートし、創業45年を超える信頼の仕入れルートと妥協なき審美眼で選び抜いた、上質かつおいしい肉だけを提供し、顧客たちをうならせ感動させてきた。小池さんもそのひとり。

美しく並ぶ肉塊に心が躍る、枝肉の保冷庫。肉のポテンシャル最大限に高めるよう見極めて、すぐ出すものや熟成させるものなどを分別する。黒毛和牛の雌を一頭買いし、そのすべての部位を余すことなく使い切る

卸業や解体処理作業から店舗経営までを、すべて田島3兄弟の連携プレーで手掛ける圧倒的な総合力が唯一無二の強みだ。

最高峰の松阪牛の証として個体識別番号や生産者が記載されている。小池さんともなると、生産者の名前ですぐにわかるというから驚きだ
 

小池さん

僕がこちらを好きな理由は、田島さんの圧倒的な肉選びに信頼を寄せているから。一頭買いをして、すべての部位を活かすサイクルが自社でできているので、最高の肉が循環する理想的なスタイル。正肉には個体識別番号がついているのですが、内臓肉には番号がないので選べないのが通常。そこを長年培ってきた田島さんのルートなら、最高品質のものを狙って確実に入手できてしまい提供することができる。唯一無二の極上だけを仕入れられる基盤があるからおいしい確率が上がるんです。

数々の名店で切磋琢磨してきた調理長が、肉の食べごろを見極める

調理長・吉田博幸さん。55歳

自社の「肉の田じま」から入荷される間違いないクオリティの肉を、さらによりよい状態で活かすかは、調理長・吉田さんの手腕にかかっている。例えば、どう切って提供してもおいしい鮮度のよい肉を、入荷直後だとやや硬いと判断し、約6日セラーで吊るして水分状態をコントロールしてから初めて調理するなど、個体によって熟練の経験値による絶妙な判断やコントロールが必要不可欠。10代から誰もが知る名焼肉店の数々で修業してきた吉田さん。上質肉のよさを最大限に引き上げる役目を担う。

 

小池さん

吉田さんが以前にいらした某・焼肉店時代からのお付き合い。東陽町店オープンのタイミングで調理長に就任され、どのくらいの厚さや大きさにカットしたらみんながおいしいと感じるかなど、日々考えて追求する妥協しない姿勢に共感しています。