【THEご褒美スイーツ 〜知っておきたい通な店〜】

「食事と同じくらい、スイーツにも絶対手を抜きたくない!」と、日々美味なるスイーツを探し求める甘いもの好きさんにお届けする本連載。スイーツの歴史研究のみならず、製菓にも精通するお菓子の歴史研究家・猫井登さんが太鼓判を押す、ご褒美スイーツを紹介します。

〈第14回〉「ダ ルチアーノ」

お店は京王堀之内駅から徒歩10分ほどの場所にある

「ダ ルチアーノ」は“イタリアンジェラート”の名店。京王堀之内駅より徒歩約10分だが、お店の周囲に駐車場が約30台分確保されており、車でも行きやすい。また、お店の一角にはワンちゃん同伴可のスペースも。

フレーバーは、日替わりで18種。「ミルク」「ピスタチオ」といった“定番”のものから「マンゴー」「フランボワーズ」などの“フルーツ系”、「イチゴミルフィーユ」「ティラミス」などの“ケーキ系”のほか「八王子しょうが」といった地元野菜を活かしたユニークなものまで。季節限定商品も合わせると、約200種類のフレーバーがラインアップされているという。

店内のショーケース

今回は、秋ならではの組み合わせのフレーバー2種と、定番の組み合わせ1種、さらにお店のスペシャリテ的な1品も加えた合計4種をいただくことに。

【ご褒美スイーツその①】見た目からしてハロウィーン感のある「ネッロ」×「かぼちゃ」

「ネッロ」とは、イタリア語で「黒」の意味。見た目にもインパクトがあり、思わず「イカ墨のジェラート?!」と思ってしまうが、実は「黒五粉末」と「食用活性炭」で作られたジェラートだ。「黒五(くろご)」とは、野生種の黒食材である、黒米・黒松の実・黒大豆・黒胡麻・黒かりん(カシス)の5種を丸ごと粉末にしたもの。黒い色の食べ物は「仙人食」とも言われ、ミネラル、ビタミン、食物繊維も豊富で、古来より滋養源として取り入れられてきた。

写真左から「ネッロ」「かぼちゃ」(ダブル 500円)

また「食用活性炭」は、体内で不要になった老廃物や有害な毒素を吸着し、体外に排出するデトックス作用が期待できるとされ、代謝が良くなり、ダイエットにつながると考えられている。漢方薬的な味わいがするのかと思いきや、穏やかで、懐かしさを感じるゴマの味わいと黒豆の味わい。ややミルキーなニュアンスもある。

黒×黄色の組み合わせはまさにハロウィーンカラー!

「かぼちゃ」は、落ち着いた黄色で、色合いが美しい。安定した味わいを維持するためにこちらではピューレ状のかぼちゃを使用しているという。優しい口当たりと、後からかぼちゃのうまみが口中に広がっていく印象で、フルーティな甘みが感じられる。両方を混ぜると色合いがトラ模様になるが、味わい的には違和感なく穏やかなうまみと甘さが感じられる秋っぽい味わいに。

【ご褒美スイーツその②】秋といえばやっぱり栗!「カスターニャ」×「チョコレート」

「カスターニャ」は、イタリア語で「栗」という意味。イタリアでは涼しくなると街角に焼き栗の屋台が出て、秋の到来を告げる。これをイメージして、毎年9月頃からお店に登場するジェラートだ。

自分のオーダーしたジェラートがカップに盛り付けられていく様子を眺める時間もワクワク!

ミルクベースのジェラートにイタリア産の栗のブロークンと香りづけのラム酒を少し、さらにマロングラッセを混ぜ込んで作られている。最初はミルクの穏やかで優しい味わいながら、あとで栗の味わいがしっかりと追いかけてきて、余韻が長く感じられる。栗のつぶつぶ食感もいい。何だかウイスキーと合わせたくなる味わいだ。

写真左から「カスターニャ」「チョコレート」(ダブル 500円)

「チョコレート」は、社長が惚れ込んだという濃厚な味わいのチョコレートをふんだんに使い、企業秘密のレシピ?で作られるジェラート。ビター感がある大人の味わい。濃厚ながらもくどさはなく、ずっと味わっていられる感じだ。こちらもウイスキーやラム酒などと合わせたくなる味わい。

両方を混ぜても、まったりとしたマロンの甘さとチョコレートのほろ苦さがよくマッチした上質な味わいに。なめらかな中にも、ときおり主張してくるマロングラッセやブロークン栗のつぶつぶした食感や味わいも楽しい。

【ご褒美スイーツその③】何度も食べたくなる定番の組み合わせ「ミルク」×「ピスタチオ」

こちらの「ミルク」には地元八王子にある磯沼牧場の牛乳を使用。磯沼牧場では日本の牛の99%を占めるホルスタインの他に、ジャージー、ブラウンスイス、エアーシャー、モンペリアルド、ミルキングショートホーンの6種の牛を飼育しており、お店では最も状態の良い牛乳の供給を受けてジェラートを製造している。

写真左から「ピスタチオ」「ミルク」(ダブル500円にピスタチオ+100円で600円)

この日のジェラートの牛乳は「ブラウンスイス」のもの。乳質が高タンパク、高カルシウムであることから、本来はチーズ作りに使用されることが多い品種だ。実食してみると、コクと甘みがあるのに、しつこさがなくサラッとした後味。

「ピスタチオ」は、イタリアのシチリア・ブロンテ産のピスタチオペーストをふんだんに使った贅沢なものだ。

そもそもシチリアでは品質を守るためピスタチオを2年に1度しか収穫しないが、中でもブロンテ村のエトナ山の溶岩が冷えて固まった肥沃な土地で、1300年前にアラブ人から伝えられたという伝統的な栽培法で作られたものは、甘みとコクが強く「ブロンテ産ピスタチオ」として希少価値が高い。

ピスタチオのジェラートというと鮮やかな緑色を思い浮かべるが、それらは色素や発色剤を施した原料を使っているため。こちらでは無添加の原材料を用いているため、くすんだ緑色となっている。

ピスタチオの自然な色合いは着色料を使用していない証

実食してみると、濃厚で、香ばしくコクと甘みがあり、皮を剥いて食べるピスタチオそのものの自然な味わいで、思わず、ウイスキーかバーボンを合わせたくなってしまう。ミルクとピスタチオの味わいのコントラストを楽しんだら、是非2つを混ぜ合わせて味わってほしい。 優しくコクのあるうまみが口中に広がっていくだろう。

【ご褒美スイーツその④】3つの味のジェラートをブレンドして作り上げる逸品「ネモリーノ」

「ネモリーノ」は、「愛の妙薬」というオペラで、美しい村娘に恋する主人公の青年の名。あえて3つの異なる味わいを合わせることで新たな1つの味わいを生み、それに固有の名前を与えた同店オリジナルのジェラートの1つ。「ココナッツミルク」「チョコレート」「ピスタチオ」の3種のジェラートをブレンドしているのだ。注文すると、ジェラート用のヘラで3種のジェラートをすくった後、適度に混ぜて盛ってくれる。

「ネモリーノ」500円

お店の方は均等にすくってくれるが、3種の比率は微妙に異なるし混ぜ方もその場限り。どこをどのように食べるかで、毎回味わいが異なるのも楽しい。同じ人間でもその時々で異なった表情を見せるのと似ている。

食べる部分によって異なる味わいを楽しんで

全体としては、個性の強い「チョコレート」と「ピスタチオ」を穏やかな「ココナッツミルク」がまとめているイメージだが、一口ごとに味わいが異なり、単品でも最後まで食べ飽きない逸品に仕上げられている。食べる部分により、さまざまな表情を見せるジェラートを是非味わってほしい。

日本におけるイタリアンジェラートの先駆者が店主の名店「ダ ルチアーノ」

広々とした店内

最後にお店の概要を紹介したい。ダ ルチアーノは、1999年創業。現社長で、創業者の植木耕太氏は元々イタリアのアイスクリーム専門機械メーカーの営業職に就いていた。1983年、イタリア大使館の依頼で東京の老舗有名百貨店でイタリアンジェラートを紹介。これがきっかけとなり、イタリア人ジェラート職人のルチアーノ・チェキネロ氏とともに日本全国で講習会や開店指導を行う。自らも研鑽を重ねて「グランドマエストロ」となった、日本におけるイタリアンジェラートの先駆者だ。1999年に独立し自身の会社を設立、お店をオープンした。

店名の「ダ ルチアーノ」は、イタリア語で「ルチアーノの店」「ルチアーノの家」の意味。ルチアーノ氏より直伝された伝統的なイタリアンジェラートの製法により、素材の味わいを活かしたジェラート作りに着手。

動物モチーフのアイスケーキはお子さんや可愛いもの好きな人への贈り物にぴったり

お店では、子供から大人まで楽しめるように、さまざまなジェラート商品を販売。また、ピザやキーマカレーなどの軽食、コーヒーや紅茶などのメニューもある。今では、北海道から沖縄まで全国各地の生産者を回り、果物だけでなく、野菜や穀物などさまざまな食材をジェラートに使用している。

ギフトセットのカップアイスケーキはオンラインでも注文可

珍しいところでは、江戸時代から始まる野菜文化を継承した伝統野菜である「江戸東京野菜」の生姜を使用した「八王子しょうが」や、日本酒を使用した「ほろ酔い桜」、ウイスキーを使用した「ウイスキーG12Y」なども開発・販売している。

今回紹介した商品以外にも、秋らしい「焼きりんご」「キャラメル」、新年には「黒豆」「きなこ」といった独自のフレーバーも登場予定。今後も目が離せないお店の一つだ。

※価格はすべて税込