〈短期集中連載:今、中国料理が面白いvol.2 飲茶レストラン編〉

飲茶レストラン人気が復活!

香港に1990年代にはじめて訪れたときに驚いたのは、数百人規模の巨大な飲茶レストランでした。

朝早くから地元客と観光客が押し寄せ、蒸気が上がるワゴンを押してテーブルのあいだを売り子が多数行き交う中、彼女らを止めてワゴンの上にある蒸し器の蓋をあけて好きな点心を取るのです(ちなみに、日本では点心と飲茶は混同されていますが、簡単に言えば点心とは料理のことで、飲茶はお茶を飲みながら点心を楽しむスタイルのことです)。

 

欲しいものがなければ、リクエストをしておくとそれを積んでいるワゴンがやってきます。
そんな非日常的な楽しみが日本でもあればいいのに、と思ったら、2000年代には新宿や西麻布、新橋にワゴンスタイルの飲茶レストランが次々とできました。しかし、残念ながらどこも閉店。私の知る限り、一軒も残っていません。関係者に聞いてみると、蒸点心は廃棄率が高く、商売としては厳しかったということです。

 

ところが最近、またもや飲茶レストランが人気になってきました。

香港から上陸。行列のできる飲茶レストラン

この春に話題になったのは日比谷にできた「添好運(ティム・ホー・ワン)」。香港発の「世界一安いミシュランレストラン」と称される点心専門店で、ミッドタウン日比谷のすぐ近く、日比谷シャンテ別館の1階にあります。

ワゴン式ではありませんが、メニューにのっている点心を卓上の注文用紙に書いてサービスに渡すと、早いものは数分で運ばれてきます。

メニューは現地とほぼ一緒とのことで、開店当初は、野菜の蒸し餃子、ポークと海老の焼売、スペアリブの豆鼓蒸し、鶏足の香港式煮込、大根餅、白身魚とポークの甘長唐辛子焼き、海老の湯葉春巻、チャーシュー入り腸粉、スペアリブの蒸しご飯、蓮の葉ちまき、本日のココナッツミルクといった塩梅。

添好運 出典:よい子さん

なかでも人気なのは、小型のメロンパンみたいな形をした「ベイクドチャーシューパオ」。中のチャーシュー餡が甘辛くていくつでも食べられそう。テイクアウトもできます。
開店以来、行列が途切れることがないほどの人気ですが、アルコールはビール程度なので長尻は無用。回転は早いようです。

点心+中華料理も楽しめるいいとこ取り

個人的には、飲茶レストランは昔から腸粉がある店が好きなのですが、なかでも添好運と同時期にできた「真不同 飲茶倶楽部 茅場町店」の腸粉は、お気に入りです。
もともとこの店、恵比寿に本店があるのですが、さらにいえば飲茶だけでなく広東海鮮料理が美味しい、日赤通りにある「西麻布 真不同」の飲茶部門が独立してできた店なのです。

真不同 飲茶倶楽部 茅場町店 写真:お店から

西麻布の店の飲茶はランチのみでしたが、点心人気があまりにも高いので、恵比寿と茅場町に点心専門店を開いたというわけです。

なかでも茅場町店は、どちらかというと恵比寿と西麻布のいいとこ取り。点心が主流ではありながら、北京ダックや麻婆豆腐など通常の中華料理も幅広く取り揃えており、とりあえず点心をいくつか注文し、そのあとで中華料理を楽しむというのが面白い。

お店的には、金華ハムスープを練り込んだ名物「頂湯焼売」がイチオシですが(もちろん美味しいけれど)、やはりここの腸粉も試していただきたいなあ。そして最後は、香港の下町によくある「葱油撈麺(焦がしネギ和え麺)」で〆ていただきたいと思います。

ここにしかない点心も。銀座でオーダーバイキング

上記の二店はどちらも香港点心を看板にしているのに対し、日本風の点心を売りにしているのがGINZA SIXにある「JASMINE 和心漢菜」。

広尾に本店のある「中華香彩 JASMINE」の4号店で、こちらは名前のとおり、中国料理が持つ正統な技や考え方に、四季、美感、食材、そしておもてなしの心といった日本らしさをかけ合わせたメニューが並びます。

そのJASMINEが3月から始めたのが飲茶オーダーバイキングです。このために新たに点心師を2名入れ、「香港点心」のほかに、中国各地の「大陸点心」、「和心漢菜」をイメージした青紫蘇やすき焼き風味を取り入れた和風創作点心が楽しめます。

平日ランチ限定90分制で3,500円ですが、点心のほかに油淋鶏や焼き餃子、担担麺も食べられるからうれしい。焼き餃子には常連だけが知っている「よだれ鶏ソース」を追加して(+100円)食べるのがおすすめです。
さらにうれしいのは飲み放題がプラス1,500円でつけられること。もちろんアルコールもOKですから、5,000円で宴会が楽しめるとあってセレブママ友会に大人気。ついでにいえば小学生は2,000円、幼稚園児以下は無料です。

伝統の点心をリーズナブルに

その一報、香港伝統の点心といえば「家全七福酒家(旧 福臨門魚翅海鮮酒家)」の飲茶ランチ。海老蒸し餃子やチャーシュー入り饅頭、小籠飽、蟹肉入りフカヒレ餃子、骨付きバラ肉の黒豆味噌煮、絹笠茸入り五目野菜の湯葉巻き、海老入り春巻、大根もち、海老入りもち米の揚げ餃子など20種類近くから選べ、平日限定の飲茶コースならリーズナブル。特に海老蒸し餃子や大根もちはぜひとも召し上がっていただきたいと思います。

家全七福酒家 写真:お店から

 

かつてのワゴンスタイルの復活はむずかしいようですが、本格的な飲茶レストランの相次ぐ開店は中国料理ファンにはうれしい限りです。