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「素材の味を感じてもらうため、手を掛け過ぎない」がモットー
甘々娘の冷製コーンスープ
「甘々娘(かんかんむすめ)の冷製コーンスープ」に使用する食材は、厳選したとうもろこしと海塩のみ。とうもろこしの芯で出汁を取った潔い仕立てだ。黒田シェフは「素材の味を活かすことを日本料理の大将から教わりました」と語る。とうもろこしは、徐々に銘柄を変え、7月末頃まで提供予定。
ペアリングで日本酒の「すっぴんるみ子の酒」の生原酒を合わせている理由をマダムはこう語る。「油脂がない料理のため、ワインよりも日本酒が合います。料理も日本酒も余計なものが入っていないもの同士なので相性が良く、しっかりと寄り添います」
外川さん
冷製コーンスープは、口にするとハッと驚かされる味わいです。クリーム感ではなく、とうもろこしのうまみや甘みで勝負しているといった印象。
穴子のリゾット
「穴子のリゾット」は、特別栽培米の「にこまる」を米糠が付いた状態から炊いている。串打ちして焼いた穴子を食べやすいサイズにカットしてのせ、その上に穴子の骨を煮詰めて赤ワインと合わせたソースを。チーズもクリームも使用しており一見濃厚そうだが、非常に軽やか。仕上げにかけた山椒と赤ワインから感じるスパイシーさが見事に重なり合う。
外川さん
「リゾットというより雑炊」という黒田シェフの説明が腑に落ちる味わいです。香ばしい穴子が贅沢にのって満足感たっぷりですが、なんとも軽快な食後感。
爽やかさや軽やかさに魅了される、身体思いのフランス料理
あおさ海苔と茸のパテを塗って焼いたマナガツオ 甘夏のソース
優美な魚料理「あおさ海苔と茸のパテを塗って焼いたマナガツオ 甘夏のソース」は、あおさ海苔とブラウンマッシュルームのパテを塗った瀬戸内産のマナガツオを、上下の火加減を調整できる調理器具・サラマンダーで火入れ。ソースに使用する甘夏は、愛媛県宇和島でみかんを栽培する高木農園から仕入れている。もともと農水省にいて柑橘を研究し続けている園主の高木信雄博士による独自の栽培法の柑橘は風味が格別だ。
仕上げに添えたディルの花は、黒田シェフの両親が栽培するもの。合わせるワインは、フランスのロワール地方で、夫婦で営むワイナリー、リズ・エ・ベルトランの「ジュセ プルミエ ランデヴ」で、ワインが持つジャスミンのようなニュアンスが、コクの中にも爽やかさを感じる甘夏のソースと重なり合う。
外川さん
魚の火入れがうっとりしてしまう絶妙さ。ディルや甘夏が爽やかで、夏に食べたくなる爽やかな魚料理です。
アマゾンカカオのオペラ
市販のチョコレートは有名なメーカーでも香料を含むため、「アマゾンの料理人」の異名を持つ太田哲雄氏が直接ペルーで仕入れたクリオロ種カカオから作られたテンパリング前のチョコレート(カカオマス)である「アマゾンカカオ」を使用。コーヒーシロップを染み込ませたカカオ生地、カカオとアールグレイのムース、ガナッシュを薄く6層に重ねている。小麦粉や白砂糖を一切使用せず、米粉や原料糖を代用した完全無添加のデザートは、レシピ作成に最も時間がかかったそう。ディナーコースでたまに登場するとのことなのでお楽しみに。
外川さん
フランス料理のデザートにオペラと聞くと、ちょっと重いかと思いきや、驚くほどテンポよく食べてしまう口当たり。さすがパティシエ出身!とデザートは毎回感動させられます。
シェフの料理にマダムがセレクトするワインが寄り添う
ワインや日本酒は、シェフの料理との相性を考慮してマダムが厳選している。「ひたすら味わいをチェックして選んでいるのですが、自然とナチュラル、ビオディナミ、オーガニックのワインが多くなります」。
ノンアルコールのペアリングは、ハーブやスパイス、無農薬のフルーツの酵素などをオーガニックのお茶と合わせるなどオリジナリティ溢れる一杯に出会うことができる(仕込みが必要なため要予約)。ランチコースは6,600円~、ディナーコースは9,900円~、アルコールペアリングは8,800円、ノンアルコールペアリングは6,600円。
外川さん
ワインや日本酒への愛情が滲み出ているマダムの解説に、よりおいしさがアップします。アルコールでもノンアルでもペアリングが絶対おすすめ!
厳選している食材の素晴らしさに加え、日本料理を経験しているからこそのレシピによって完成する料理は、どれもホッと和むような優しさで、まさに親が子に作るような思いを根底に感じる味わい。それでありながら、非日常の特別感もしっかり感じることができる「La mère」。ただいまと帰ってきたくなるような一軒だ。
※価格はすべて税込、サービス料10%別