仔羊、スパイス、餃子!? 国境を越えた飲ませる味づくり

「飲みの街」に誕生したイタリアンだけあり、自由度が高いメニュー構成も「PotaLa」ならでは。福田さん曰く「お酒のアテにぴったりの餃子もご用意しています。だけど普通の味だと面白くないから」と考案したのが「仔羊 スパイス餃子 パクチー」。

「仔羊 スパイス餃子 パクチー」4個880円

仔羊ミンチをベースに、五香粉やナツメグなど8種のスパイスを配合したエキゾティックな味わい。そのまま味わうのもよいが、黒酢をちょんっとつけてパクチーと共に頬張れば、中国と中近東がミックスしたような、国境を越えた味の広がりが楽しい!

餃子にはビールが定番だが、ドリンクリストを眺めるほどに、うれしい悩みは尽きない。飲み物を担当する田中さんは「この界隈で飲む大人たちは、ハイボール好きが多くて」と、竹鶴や知多、山崎12年などジャパニーズウイスキーも揃える。さらに「若い世代は、サワーが好きだから」と、レモンサワーは広島産レモンをシロップ漬けするところから。

自家製レモンサワー、金柑サワーは各650円。ウイスキーはソーダ、ロック、ストレートのいずれかで。知多880円、山崎12年1,800円。ワインはグラス900円〜。

イタリアを中心に揃えるワインはボトル100種をストックし、グラスは泡・白・赤合わせて10種近く。「日本酒にも手を出そうと思ったのですが、何屋かわからなくなるので我慢」と苦笑する田中さん。曰く「仔羊餃子の複雑なスパイス感は、エキス感の強いオレンジやロゼワインと相性が良いですよ」。

パスタや炭火焼は、イタリアンの基本に忠実に

「自家製サルシッチャ ジャガイモのピューレ」2本1,540円

もちろん骨太なイタリア料理を味わえるのが「PotaLa」の真骨頂だろう。自家製サルシッチャは、島根・石見ポークの肩ロース肉をミンチにするところから。頬張れば、プチッと弾けるとともに、濃厚かつクリアな肉汁が溢れ出る! セージやローズマリーといったハーブや、ナツメグやキャラウェイなど各種スパイスを混ぜ込んでいて、食欲をそそりお酒も進む味わい。しかもジャガイモのピューレは艶やかでいて滑らか。その清々しい風味にも唸るはず。

シチリア特有のショートパスタ「ブシャーティ」。ちょっとマニアックな自家製パスタが登場することも

いっぽう、名イタリアン出身の2人が織りなすパスタも必食。「水とセモリナ粉だけを使いました」と福田さんが話すのが、聞きなれないショートパスタ「ブシャーティ」。シチリアで馴染みのあるパスタで、生地を棒に巻きつけてカールさせたようなユニークな形状。

牛ウデ肉や香味野菜などをじっくり煮込んだ、コクの深いラグーソース実によく絡んでいた。

「牛ラグーソース ブシャーティ」1,870円

カウンター6席、テーブル9席のコンパクトな店内。「ワイン1杯だけでもいい?」なんてひとり客もいれば、しっかりとディナーを楽しむ女性同士の姿も。その隣席では、天満市場で働く人たちが、飲み会を開いていたり。幅広い世代のお客さんが、それぞれのシチュエーションで楽しんでいる。

「PotaLa」の周辺には飲食店も多い。「向かいのバーのマスターが、お客さんにウチの店を紹介してくださるなど、ご近所付き合いもあり本当にありがたいです」と福田さん

ちょっと奥まった路地裏の落ち着いた立地で、「酒場」と「イタリアン」を掛け合わせたような自由度の高さと、名店仕込みの味づくり。それらのギャップが、界隈で異色の個性を放つ。

※価格はすべて税込

文:船井香緒里 撮影:東谷幸一