おいしいもの好きのあの人に「食べログ3.5以下のうまい店」を教えてもらう本企画。今回はフードライター船井香緒里さんが、思わず飲みたくなる、酒場のようで酒場じゃない、名店出身の2人による本気のイタリアン「PotaLa」をご紹介。

教えてくれる人

食通たちが、2023年に惚れ込んだ名店や極上の一皿をご紹介。フードライターはなともさんをうならせたスイーツとは?

船井香緒里
福井県小浜市出身、大阪在住。塗箸製造メーカー2代目の父と、老舗鯖専門店が実家の母を両親に持つ、酒と酒場をこよなく愛するヘベレケ・ライター。「あまから手帖」「dancyu」「BRUTUS」などでの食にまつわる執筆をはじめ、「dancyu.jp」で連載「大阪呑める食堂」を担当。食の取り寄せサイトや、飲食店舗などのキュレーションもおこなう。「Kaorin@フードライターのヘベレケ日記」で日々の食ネタ発信中。

「ポンテベッキオ」出身の2人による最強タッグ

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

大阪メトロ天神橋筋六丁目駅からすぐの場所に店はある。日本一長い商店街「天神橋筋商店街」や、庶民の台所「天満市場」にも近い。

大阪メトロ天神橋筋六丁目駅からJR天満駅にかけてのエリアは、街全体が酒場と言っても良いくらい、飲み歩きが楽しいエリア。そんな酒場天国の少し外れの路地裏に「PotaLa」はある。今回紹介するのは、名店出身の2人が開いた、自由度が高すぎるイタリアンだ。

共同代表を務めるのが、福田直也さん(写真右)と田中大貴さん。2人は、関西のイタリア料理業界の名門「ポンテベッキオ」山根大助シェフのもとで経験を積んだ料理人だ。その後、別々の道を歩むことになるのだが、「店を開くなら一緒に」という念願が叶ったのは、2023年6月のこと。

写真右から。福田直也さんは「ポンテベッキオ」で5年修業の後、大阪・箕面「ピッツェリア エ トラットリア アーラ」にて主に料理を担当。田中大貴さんは「ポンテベッキオ」で6年、広島の「トラットリア ピッツェリア ポリポ」を経て今に至る。

「持ち場は、それぞれの得意分野で」。そう話す田中さんは、前菜と飲み物全般を。一方の福田さんは、パスタやメインなど加熱を必要とする料理を担当する。それぞれが互いのサポートに入ることがあれば、サービスも行う。修業時代、苦楽を共にした2人らしい阿吽の呼吸が、店づくりや味づくりの随所に宿るのだ。

名店で培った技が光る、素材感みなぎる前菜

メニューはアラカルトが主体。冷菜、温かい一品、揚げ物、パスタ、肉料理など、カテゴライズは独特。最初に味わっていただきたいのは、旬の素材を用いた冷菜。近所には「天満市場」があるため、とっておきの新鮮な食材を毎朝、仕入れることができる。

春野菜とうすいえんどうのスープサラダ1000円。これからの時期は、夏野菜を用いたガスパチョとサラダの組み合わせも登場予定。

なかでも「春野菜とうすいえんどうのスープサラダ」は、旬野菜の個性が際立つ一品。スープに見立てたのは、うすいえんどうのピューレ。「豆を皮ごと茹で、茹で汁と塩だけで調味しました」と福田さん。口に運べば、香り高く、優しい甘みがじんわりと広がる。蒸し焼きにしたモロッコインゲンやアスパラガスはジューシーなうまみを放ち、バターソテーしたインカのめざめの濃厚な甘み、自家製のドライトマトの凝縮感ある味わいが、時間差で押し寄せてくる。さらには、パンチェッタやパルミジャーノ・レッジャーノのうまみがじつにいいアクセントに。

「一番気をつけているのはあんばいでしょうか。塩が薄すぎても、強すぎてもいけない」と福田さん。2人の師匠・山根シェフが提唱する“素材の旬と質に細心の注意を持ち「最適調理」に徹する”というスピリットを感じさせる一皿に仕上がっていた。