〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は山本憲資さんがおすすめする穴場的な日本酒バーをご紹介します。

教えてくれる人

山本憲資
Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、Sumallyを起業、2023年10月末に代表を退任し顧問に就任。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

立石の呑んべ横丁「おでんや」店主が銀座で開いた日本酒バー

「GINZA SIX」から東銀座方面に向かった路地裏のとある雑居ビル。その地下1階には、スープカレー屋や寿司屋などが入居するこぢんまりとした飲食フロアがある。このフロアに2023年2月にオープンしたのが、日本酒バーの「めっけもん」だ。

 

山本さん

銀座においしいおでんやさんがあると聞いて、行ってみました。

店主の佐藤哲也さんは、酒呑みの聖地・立石の呑んべ横丁で20年以上続いた「おでんや」を営んでいた。それより以前は友人と一緒に六本木で和食屋を運営していたこともあり、和食歴が長い。立石の「おでんや」は、再開発のあおりを受けてやむなく閉店。移転先として浮かんだのが「いつかはお店を出してみたい」と思い描いていた銀座だった。おでんをメインに焼酎と日本酒を合わせていた「おでんや」の屋号ではなく、日本酒をメインにおでんと酒の肴が味わえる「めっけもん」として新装開店。

元々小料理屋だったという年季を感じる物件には、「おでんや」時代から使ってきたという古箪笥や食器、酒器や酒燗器などをうまく配置してある。近代化が進む銀座の街からタイムスリップしたかのような、郷愁を感じさせる雰囲気だ。

 

山本さん

オープンして1年程度ながら、毎日つぎ足しで作られているおでんの出汁がとにかくおいしい。そしておつまみもどれも気が利いていて、酒のつまみとして最高です。 

40種類以上の日本酒は400円〜、手作りの料理は500円〜

佐藤さんが「自分がおいしいと思った銘柄を中心に選んだ」という日本酒は、北は北海道から南は九州まで常時40種類以上あり、1杯400円、1合1,200円と銀座とは思えぬ良心的な価格で味わえる。そこに合わせる日替わりの酒肴も500円、もしくは800円だ。

 

山本さん

日本酒は店主のこだわりのラインアップで、リーズナブルに楽しめるところが魅力です。   

「ペリカンパンと食べるイカ墨キノコカレー」

「ペリカンパンと食べるイカ墨キノコカレー」(800円)は、店主が愛する浅草の名店「パンのペリカン」のロールパンを味わって欲しいと考案された料理。トーストしたロールパンに、椎茸やマッシュルーム、舞茸、エノキ、シメジなど数種類のキノコを炒めてトマトケチャップをベースにカレー粉、イカ墨で味付けしたイカ墨キノコカレーと、タカナシのリコッタチーズを添えている。

一緒にパンに塗って味わうと純喫茶で味わうカレーパンのような親しみやすい味わいながら、咀嚼していくごとにさまざまな風味のキノコの滋味がじんわり開いていく。

 

山本さん

ペリカンのパンにのせて食べてもおいしいですが、お願いすれば出してくれるご飯と食べても当然おいしいです。  

「ペリカンパンと食べるイカ墨キノコカレー」に合わせてもらったのは、愛知県にある山忠本家酒造の「義侠」だ。ほがらかな甘さがありつつ、バランスが良いお酒で料理の邪魔をしない一方、カレーにも負けない力強い新酒の爽やさもある。「常温でもおいしいですし、ソーダ割りもおすすめです。30度程度の日向燗もいいですよ」と佐藤さん。燗酒にすると、炊き立てのご飯のような味わいが広がる。