素材の味を引き出す、シンプルでも味わい深い料理
佐藤さんの料理は家庭料理のようにシンプルな調理だが、有機野菜を使い素材の味をぐんぐん引き出すメニューが多い。「ブラウンマッシュルームとレンコンのサラダ仕立て」(500円)もその一つだ。レンコンは湯通しして、レモン水に長時間漬け込みマリネにしてあり、カットしたブラウンマッシュルームを添え、塩、胡椒、レモン汁、米油を回しかけてある。簡素な料理に思えるが、咀嚼する度にあふれるブラウンマッシュルームの味わい高さに驚くはずだ。
「焼白子のオイル漬」(800円)と「マグロの辛づけのりまぶし」(500円)は日本酒を飲まずにはいられない酒肴だ。その名の通りマダラの白子を焼き、米油に漬けておいた「焼白子のオイル漬」で、白子のとろみや濃厚さがありながらも、タラの味わいと香りが強く引き出されている。「マグロの辛づけのりまぶし」は、マグロを三升漬けにしたものだ。三升漬けとは、醤油と米麹と青唐辛子を一升ずつ混ぜ合わせたタレに漬け込む北海道で知られている調理法のこと。同店ではマグロを3日ほど漬け込み、仕上げに香り海苔を散りばめている。赤唐辛子よりも辛さの強い青唐辛子が使われているが、三升漬けされたマグロは丸みを帯びた程よい辛さで、ねっとりかぐわしく酒を飲む手が止まらない。
おでん4種盛り合わせで1,200円という幸福
日本酒と同じく看板メニューとなっているのが、カウンター前から湯気が立ち上るおでんだ。昆布と鰹節、鯖節をベースに井上醤油店の古式じょうゆや塩、みりん、砂糖で味付けした出汁をつぎ足して食材を煮込んでいる。
山本さん
お出汁がとにかくおいしい。そこにきのこの旨みが混じり合い、抜群の旨みコンビネーションに。 日本酒との合わせも良いです。
おでんは単品300円、4種の盛り合わせで1,200円と懐にも優しい。店主の地元である浅草の雷門近くで仕入れる豆腐や、北千住のおでん種屋から仕入れる練り物など、下町素材が光る。黒々と輝く「ガングロたまごちゃん」はぜひ食べてほしい一品だ。3日以上じっくり煮込んだ玉子は、燻製したような香りと味わいをまとっている。
おでんは日本酒とセットになった「きき酒セット」(2,000円)もあり、本日の日本酒3種におでんが2品もつく。訪れた日は「不動 一度火入れ 純米超辛」「萩錦 おまち 純米吟醸」「東一 純米酒 うすにごり 生酒」が「きき酒セット」になっていた。
きらびやかな銀座という一等地に、止まり木のように存在する日本酒バー。まさに知ることができたら自慢したくなる「めっけもん」なお店だ。