酒のアテに欠かせない定番ポテサラも、ひと味違う
断面萌えするポテサラは、そばの実を炒ってカリッとさせたものとブラックペッパーがアクセント。トップに添えられた赤いそばの芽(スプラウト)は、カイワレより味が優しくマイルド。
数々の手の込んだ料理をつまみつつ、日本酒をチビチビとまた一杯。「いやぁ、シアワセだな」と思わず感嘆する小宮山さん。店主が厳選した作家さんが作る趣のある皿や酒器を愛でながら、昼から酒が進む。
じつにおいしい、そば屋ならではの“かえし”も堪能できる肴
新潟の名産品である分厚い油揚げは、店主の実家のそば店で代々受け継がれているかえしを使い、ほんのりとした甘さと深いコクが広がる上品な味わい。納豆入り(+100円)アレンジのオーダーも可能。「本枯の鰹節を削りふんだんに使った油揚げは、もちろんおいしいけれど、何とも言えず深みのあるそばつゆのかえしをかけていただくのがたまらない! そば屋で飲む醍醐味を一番感じられる一皿」と小宮山さんが絶賛。
〆のクライマックスは石臼挽き十割そばをせいろでシンプルに味わう
そばが好きすぎて、そばのソムリエ的な資格「ソバリエ」の講座を定期的に受け、神楽坂「たかさご」主人の教室で、そばの打ち方を実践で習うほど、そばに対する熱量が高く追求している小宮山さん。十割そばの素材の味、出汁とかえしの味わいをダイレクトに楽しめるせいろが、今回の昼飲みの〆であり、大本命。店主・山田さんに、普通の人はまず聞かない、マニアックなそば粉の加水率を質問するあたり、そば通の顔を覗かせる。「あえてネギもワサビもつけずに、配されたそばをすぐに食べる!」のが譲れない小宮山流そばルール。そば本来の味わいを真摯に堪能するために、酒を飲む手を止めてそばに集中する姿は、ただ者じゃないそば愛を漂わせていた。
採れたての新そば、水分量の多い上質なそば粉を厳選し、粗く細かく独自のスキルでブレンドしてひいた、絶妙なバランスのしっとりとした石臼挽き十割そばが特徴。そばの香りと旨みを最大限に活かすよう、火力の強いコンパクトな釜で25秒ほどササッと湯がく、鍛錬された手捌きは必見だ。自ら薄く削る鰹節をメインに、10年ものの利尻昆布、椎茸ベースの出汁と寝かせないフレッシュな醤油を軸にした、コクのあるクリアなかえしに、オリジナリティあふれるこだわりを発揮する。そば湯を入れたそばつゆをお供に、最後はまたお酒を飲むのも通だとか。
小宮山さん
少量飲みでも、たくさん飲んで長居してもいいし、自由に調節できるのがそば屋飲みのいいところ。老舗のルーツをきちんと持ちながら、いまどきな感覚もある素敵なお店です。昼飲みで気軽な感覚でも使えるけれど、目当ては基本そば。ちゃんとそばを食べて締まって終わるので、満足度が高いです。今回は、店主・山田さんとおいしいそばを究めるための加水率や作り方、そばに開眼したきっかけの店など、コアな情報も伺えて、そばへの偏愛がさらに深まりました。春夏には、輪切りのブラッドオレンジやピンクグレープフルーツのそばが登場するそうなので、また通いに来たいですね。
季節ごとの楽しみ方もある、実力派そば店。昼飲みに覚えておきたい一軒だ。