胡月

別府発祥の名物は、とり天だけではない。
「別府冷麺」という料理がある。なんでも、別府市民のソウルフードらしい。
戦後に引き上げてきた人たちが、朝鮮冷麺を和風にアレンジしたのが広まっていったということである。

不動産屋社長
出典:不動産屋社長さん

そこで、別府駅からは離れた「胡月」にやってきた。「胡月」の先代が、昭和20年代に始めたということで、駅前の「大陸ラーメン」とともに別府冷麺の老舗とされている。
「胡月」は、2017年に一旦閉店し、常連客が味を引き継いでやられているのだという。

店の前には定義が記されていた。
1. そば粉配合のコシの強い麺
2. キャベツの自家製キムチ
3. 牛肉のチャーシュー
この3点が「別府冷麺」の原則らしい。

確かに韓国の冷麺は、そば粉、さつまいも粉、じゃがいもやとうもろこしのでんぷんを使用した麺があるし、キムチは白菜、肉は牛肉であるがゆで肉である。
店に入って品書きを見ると「冷麺」と「チャーシュウ冷麺」しかなく潔い。

ぴーおか #麺タリズム
冷麺   出典:ぴーおか #麺タリズムさん
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チャーシュウ冷麺   出典:不動産屋社長さん

やがて運ばれて来た冷麺のスープを一口飲んで、頬が緩んだ。
昆布や醤油は感じるが、牛肉の出汁なのだろうか。澄んだ味わいで塩気も淡く、粉の味も感じず、しみじみとうまい。そしてそば粉と小麦粉を合わせたという麺がたくましい。平壌冷麺を少し太くしたような麺はコシが凛々しい。
ぐっと顎に力を入れないと噛みきれない強さを持ち、口の中で30回以上噛まないと消えていかないのである。一回啜って15回ほど噛んでいるところへ、レンゲでスープを流し込む。これがいい。
澄んだうまみを持つスープの味わいの中で、たくましい麺が舞うというそのコントラストに惚れてしまう。

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出典:sanokuniさん

具は、キャベツのキムチ、牛チャーシュー(と書かれているが、スネ肉系をゆでたスユク的なもので韓国冷麺に準じている)、ネギ、胡麻、ゆで卵になる。
韓国冷麺ならここに溶きカラシや酢、韓国醤油を入れて味変するところだが、卓上にはなく一味を入れて味変をした。

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キャベツの自家製キムチ   出典:ぴーおか #麺タリズムさん

とにかく噛む回数が多いので「冷麺(並盛)」900円でも十二分にお腹が膨れてくる。そして最後には、もう一口、もう一口とスープを全部飲み干してしまうのであった。

※価格は税込

文:マッキー牧元