教えてくれる人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 
好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。最新刊「東京最高のレストラン2024」が発売中。

虎ノ門ヒルズ、新エリアで注目のお店はこちら

昨年末から1月にかけても話題のお店が続々とオープンしています。多くのニュースで取り上げられたのが2024年1月16日、一気に20店舗がオープンした虎ノ門ヒルズステーションタワー4階レストランフロアですね。

人気イタリアンが虎ノ門へ

まず堪能したのは「falò+(ピュウファロ)」。東京を代表するイタリアンのひとつ、自由が丘「モンド」の大ヒット姉妹店・代官山「falò」の新店です。

「falò+」イタリアっぽい風呂吹き大根

「falò」同様、オープンキッチンの焼き台。炭火で焼かれる肉や野菜を見るだけで食欲があふれてきます。多彩なグラスワインを飲みながら、オールアラカルトの魅力的なメニューをじっくり拝見。発酵調味料をアクセントにしていて、サルシッチャに麹を混ぜた「イタリアっぽい風呂吹き大根」など、本当においしい。江口拓哉シェフをはじめ、若いスタッフが懸命かつ楽しそうに働いていて、応援したくなるレストランです。

タイ料理と融合したイノヴェーティブ寿司

「鮨すがひさ」お持ち帰り用の3種のタイ稲荷

「鮨すがひさ」のチャレンジも注目です。溝の口時代は、通常は江戸前の寿司店で、月に3日だけ「変タイ鮨」という、親方の経歴を生かしたタイ料理と融合したお寿司を出していました。それが移転に伴い「変タイ鮨」に特化。普通なら大丈夫なんだろうかと思ってしまうところですが、ぜひ一度味わってみてください。

写真:お店から

お寿司が見事にタイ料理の味になっています。いまだに初めて食べた「グリーンカレー稲荷」や、「トムヤム車海老」の衝撃は忘れられません。お昼は予約不要のタイ風チラシを食べられるようです。日本発のイノヴェーティブ寿司に期待しましょう。

表参道のスーパーと提携したレストラン

「W Toranomon」

そして「虎ノ門ヒルズ」にはB1フロアにもおすすめが。「cask」はお酒販売で有名な信濃屋さんの新形態のスーパーで、表参道などにある「W」と提携したレストラン「W Toranomon」を併設しています。このお店、窓際に座ると、階下には虎ノ門ヒルズ駅の吹き抜けの駅前広場が、数十メートル先には日比谷線のホームが見えて、まるで海外に来たような気分になれます。さらにセラーで小売りされている高クオリティのワインも、プラス1,500円(通常の半額くらい)で持ち込めます。「cask」のオリジナル商品群も購買意欲をそそりますので、いい具合に酔っぱらった後にショッピングもお楽しみください。

自由が丘と幡ヶ谷にはカジュアルだけど高レベルな中華が

立ち飲みで本格的な中華

「立呑み中華 起率礼」よだれ鶏

2023年12月19日、自由が丘にオープンしたのが「立呑み中華 起率礼」です。立ち飲みブームとはいえ、東京で中華形態は珍しい。4坪程度の細長い店内ながら、厨房のガス台は中華仕様の本格派。大阪出身の井上史子シェフは、まだ20代ですがウェスティンホテル東京の「龍天門」、広尾「中華香彩JASMINE」などの有名店で修業をしていて、看板メニューの「よだれ鶏」、ジャスミンライスを使った「ハムユイ炒飯」といった定番はもちろん、アレンジメニューも高レベル。しかもポーションが少ないのでひとりでもさまざまな料理を楽しめます。小皿は明治・大正期のアンティーク。学芸大学の人気店「立呑み 鉄砲玉」の姉妹店で店主の正木勇貴さんがサービスを担当し、気さくな雰囲気を作り出しています。こんなお店が近所にあったらたまりませんね。

お店に入った瞬間から楽しめる餃子店

「餃子が主役」
「餃子が主役」   写真:お店から

カジュアル形態の中華では12月11日、幡ヶ谷に餃子居酒屋「餃子が主役」がオープンしました。虎ノ門ヒルズステーションタワーにも入った「餃子マニア」のプロデュースで、芸人・森脇優雅さんの「ハラミが主役」の姉妹店になります。外観、内装、サービスときちんとコンセプトが統一されていて、食べる前から笑顔に。

「餃子が主役」パリパリピーマン
「餃子が主役」パリパリピーマン   写真:お店から

お通しのザーサイは食べ放題です。看板の餃子はオーダーが入ってから包み、焼き餃子は羽根つき、5種の水餃子はモチモチでジューシー。さらに揚げ餃子もあって、一皿4個なので、ひとりで訪れてもさまざまな味を楽しめます。「外国のパリパリピーマン」もぜひ。

“ネオ街鮨”と昼だけの“いなり専門店”、100年企業の新店も

動画で研究した握り

「sushi AKEBONO」
「sushi AKEBONO」   写真:お店から

昨年12月15日、曙橋にオープンした「sushi AKEBONO」も注目です。実はオーナーである38歳の立花大輔親方は寿司店での修業経験はなく、握りは動画で研究という経歴。しかし、前職では数々の飲食店の立ち上げに関わっており、ヒットの法則を熟知しています。このノウハウを大好きな寿司に注ぎ込んでいるから面白い。

「sushi AKEBONO」

コンセプトは“ネオ街鮨”。仕入れは今までのネットワークを駆使して豊洲はもちろん、漁港直送の魚もそろえ、1貫からオーダーOK。酒肴は朝採れ野菜の焼き物から春巻きまでバリエーションが豊か。BGMは80~90年代の懐かしいJ-POPのカバー曲。飲み放題もあり、いかようにも楽しんで、という雰囲気が満載です。これで好きなように食べて飲んでも10,000円以下ですからたまりません。

昼限定のテイクアウトいなり寿司

「KITAINARI」

お寿司屋さんのお昼だけのテイクアウト店もオープンです。1月16日、麻布十番にいなり寿司専門店「KITAINARI」ができました。「鮨 割烹 ゆうずうむげ」が昼だけのれんを変えて展開するお店です。なんと砂糖不使用で、油揚げは甘酒と鰹出汁で煮込んでいるので、一口目はいなりの甘さが無い!とびっくりします。しかしかみしめると、ああ、これはアリだよねえというおいしさ。おかか、すき焼き卵黄、カレーなど8種の味を楽しめるセットが1,500円。パッケージも含めて、まさに麻布十番らしい商品で、差し入れや手土産として重宝されそうです。

手巻き発祥の店として有名な老舗チェーン

「築地すしくろ 銀座インズ店」

今年創業100年を迎える「築地玉寿司」が12月25日にオープンした「築地すしくろ 銀座インズ店」も使い勝手のいいお店です。銀座でゆるく、回らない寿司を楽しめるというコンセプトなんですが、日本酒は十四代、新政、磯自慢、飛露喜、日高見、東洋美人、田酒などの人気どころがカジュアルな値段でラインアップ。“手巻き発祥の店”としても有名ですが、「元祖末広手巻」はなんと45種も。これをあて巻きとして酒を飲むという使い方は、すごく楽しいです。老舗チェーンならではの懐の深さを感じました。