食材のポテンシャルを引き上げた王道イタリアン

前菜盛り合わせ

6〜7種の盛り合わせ

本場イタリアでも人気のメニューである「アンティパストミスト」。その日の気分で作った野菜料理やリエット、生ハムなどを盛り合わせています。

長野県「ジャンボン・ド・ヒメキ」の生ハム
仕上げにはオリーブオイルを

基本はレバーペーストをのせたクロスティーニやしらすのフリッタータなどの定番料理ですが、リエットはほうき鶏を使ったり、じゃがいもではなく里芋をコンフィにしたりと日本の食材を使ってアレンジすることも。椎茸、舞茸、ポルチーニなど5種類のキノコを使いしっかり塩を利かせたスフォルマートはワインが進みます。

 

高橋さん

1990年頃のイタメシブームにハマった私としては、シンプルな味付けで食材をおいしくする基本に忠実なイタリアンが食べられるのはうれしいですね。合わせてくれた「Terre Verdi Verdicchio Classico 2021」はこれだけ多彩な味わいすべてにピッタリと合う。すごくバランスの良いワインです。

十勝若牛のトリッパのサフラン煮込み

桜色のロゼは「Maria Pia Bardolino Chiaretto2021」

新鮮なトリッパは下ゆでする必要がなく、タマネギと水だけで1時間半ほどじっくり煮ていきます。サフランと白インゲン豆を加えてさらに煮込んでから香味野菜のペーストでソースにとろみをつけています。

トリッパでは珍しいサクッとした食感

「トリッパをナイフで切って食べることはあまりないだろうと、あえて大きなサイズにしています」と話すそのトリッパはサクサクと歯切れよく、ふっくらとやわらかい白インゲンとの食感の対比が舌を喜ばせます。

 

高橋さん

イタリアでもシエナあたりでしかサフラン味のトリッパは食べないそうですが、このソースがかなり秀逸。トリッパと豆の味に優しく寄り添っていて、トマト味とは違うおいしさがあります。合わせたロゼは渋みがなくスッキリした味わいで、このソースの良さを支える縁の下の力持ち的な存在。キレイな桜色にもキュンとします。

マッシュルームのラグーのパスタ

パスタはイタリアの「ダル クオーレ」の1.7mmスパゲティ

大きな鍋で粗みじん切りにした2kgのマッシュルームを3時間煮て塩とオリーブオイルだけで味付けしたラグーのスパゲティは味よし、香りよし、食感よし!「このラグーに関しては味を守るという意味でマッシュルームと塩とオリーブオイルの分量を正確に量って作ります」と西山さん。主張することも強すぎることもなく、毎日食べたくなる、これぞ王道イタリアン!

ワインはCantine Antonio Caggiano Tauri Irpinia Aglianico 2021を合わせて
 

高橋さん

完璧なるアルデンテ! 小麦の甘みを最後に感じるスパゲティは、このラグーの塩加減がベストマッチ! めちゃくちゃおいしくてパスタの量は50gとコース料理では多い方ですがお代わりしたくなります。イタリアで食べたのはこういうパスタだったなと記憶が蘇りました。

近江牛のモモのグリル

脂のくどさがまったくない素晴らしい近江牛

コースのメインは必ず肉料理が提供されます。料理人の技術と調理環境を考えて肉を手当てすることで知られる滋賀県の精肉店「サカエヤ」の肉は本当に宝のようだと西山さんは話します。盛り付けると後から肉汁がじわじわとあふれてくるのはうまみと脂をしっかり閉じ込めて焼いているから。

焼き時間は10分弱

はじめに炎の中で焼いた後は、中火で焦がさないように焼いては休ませるを繰り返して肉汁を中に閉じ込めます。それから肉に油をまんべんなく塗って焼くと立ち上がる煙をまとい、まるで燻したかのように仕上がるのです。「以前は超強火で焦がす焼き方でしたが今はカリッとさせる程度の焦がし具合です。肉は常に動かし続けてグリルパンの焼き目をつけず、均等に火が入るように焼いています」と。

添えるのはゲランドの塩のみ

ナイフを入れると肉がしなるほどやわらかく、表面はカリッと香ばしくほのかに薫香が漂います。炭でも薪でもなくグリルパンでこの香りをつけられるのはすごい! 噛みしめるとじんわりと脂が広がりますが、くどさは微塵もなく肉のうまみを堪能できます。合わせた「I Selvatici Chianti Colli Aretini Riserva 2018」の重すぎない熟成感はワインと料理の相乗効果がどれほどのものかを教えてくれます。

グリルパンで焼いたのが信じられないほど美しいロゼ色の仕上がり
 

高橋さん

見た目は焦げているかと思いきや、焦げの膜がうっすらと覆っている程度でスッと切れることに驚きます。これがA5のモモ肉とは思えないほど脂がすっきりとしていて、まるでフィレのような味わい。近江牛ってなんておいしいんだろうと再認識しました。

隙のない完璧なマリアージュが味わえる!

シャイなので会話上手になりたいと話す西山さん

サービスマンで働いているうちにワインのおいしさに目覚めた西山さんは、イタリアのトスカーナワインに精通、特にブルネッロに造詣が深く、2008年にイタリアのモンタルチーノ市から「ブルネッロ ディ モンタルチーノ」の普及、啓蒙活動に尽力した人に贈られる「Leccio d’Oro」を受賞しています。これはアジア初の快挙だそう。

「イタリア人にとって料理とワインは二つで一つ。最後の一口まで一緒に味わって欲しいからフリーフローにしました。気兼ねなく思いっきり飲んでください」と太っ腹。2月はタパスのように小さめポーションのアラカルトメニューにしたバールスタイルで営業するそう。こちらも楽しみ!

※価格はすべて税込

文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 撮影:溝口智彦