〈ニュースなランチ〉

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

今回は、大阪・中崎町の商店街にある、一見入りづらいスリランカレストラン。実は驚くほどの手間と情熱をかけて作られたカレーやビリヤニがいただける穴場だった……⁉

教えてくれる人

猫田しげる

20年以上、グルメ誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。各地を転々とした挙句、現在は関西在住。「FRIDAYデジタル」「あまから手帖」「旅の手帖」(手帖好き?)などで記事執筆。めったに更新しない猫田しげるの食ブログ 「クセの強い店が好きだ!」。

商店街の中に突如現れる、極狭スリランカレストラン

大阪随一の飲み屋街「天満」と若者に人気のおしゃれタウン「中崎町」をつなぐ、天五中崎通商店街。その中ほどに突如現れるのが、「ニュー ラージャスターン」というスリランカ料理店です。

明らかに店内に納まりきれないテーブルがテラス席みたいな顔で置かれています

真っ黄色の壁に「spicy」「curry」の文字。店頭にはスリランカ食材や雑貨が雑然と並べられ、ここだけアジアのお祭りムードです。

スパイスも格安で販売されています。用途不明ですがつい買っちゃいますよね

オーナーシェフのオストさんは、スリランカのホテルスクールで調理を学んだ後、五つ星ホテルで勤務。さらにドイツのレストランとノルウェーのイタリアンレストランで腕を磨いたというグローバルな経歴の持ち主です。

来日は30年以上前というオストさん。相当難しい日本語も理解してくれます

実はこのお店、商店街の中に来る前は50席を有する大バコ店「ラージャスターン」として近くで20年以上営業していました。しかしコロナ禍で休業を余儀なくされ、当時5〜6人いたシェフも他に行ってもらうことになり、オストさんと奥さんの2人に……。

外国人のお客さんや近所のご老人など客層も多彩。1人客も気軽に入れます

そのためこの小さな建物に移ってきたわけです。それでも、2人だけで厨房とホールを回しているから大変。昼だけでもバイトしますよ!

 

猫田さん

2つの店舗をくっつけた建物で、厨房から客席への通路が狭く、行ったり来たりするのが一苦労って感じでした!

ハーブやスパイスはスリランカの実家の庭まで採りに行っている!

2種のカレーリーフは、店の横にある鉢植えで育てています。外観写真をよ~く見てみてください!

キッチンの棚に並ぶのは、70種を超えるスパイスやハーブ。近くの天満市場で買っているのかと思いきや、「スリランカから取り寄せたり、実家の庭から採ってきたり」とのこと。えっ、庭……⁉

なんでもオストさんの実家の庭にはシナモンやクローブなど多種の植物があり、年に1~2回帰って採取してくるのだそうです。他のスパイス類も現地で粉にしてもらい、ひきたてを仕入れています。

 

猫田さん

輸入もおのスパイスやハーブは時間が経って風味が抜けているものもあるので、採れたてひきたては希少ですねえ。

カレーによってスパイスの種類は違い、だいたい15種ほどをブレンドします。ホールのスパイスは炒めて香りを出してから使うのがポイントだそうです。

気が遠くなるほどの手間をかけたカレーがこの値段でいいのか

さてカレーの話にまいりましょう。ランチは「シングルカレーセット」(700円)や「ワンプレートセット」(900円)など5種あり、一番人気は「ラージャプレート」(1,200円)。カレーをチキン、キーマ、ポークから選べ、白米をバスマティライスに変えると+200円になります。

ラージャプレートは3種のカレーと副菜がモリモリ

ラージャプレート1,200円。カレーと副菜合わせて9種の料理が盛られています。これにショウガやニンニクが利いたスパイシーな卵スープも付いていますが、撮り忘れました

見てくださいこの美しいプレートを! お皿が大きいので相当なボリュームがあります。カレーは、日替わり(この日はポーク)、ダル(豆)、ベジタブルの3種。中央のバスマティライスは、カレーリーフとターメリック、バターで炊いた香ばしいご飯です。サブジやサラダ、パパダン(豆の煎餅)なども付いています。

ポークカレー。臭み消しや酸味付けに用いられる「ゴラカ」で漬け込むことで肉が軟らかく仕上がるそう

カレーは水気のないドライタイプなのですね。ポークカレーは、コリアンダーを中心にクミンやフェンネルなどを配合した肉専用のカレーパウダーに豚肉を30分以上漬け込んで、炒めておいたタマネギを加えて、30分弱火で炊いているのだとか。って自分で書いてて訳わからなくなりそうです。

ダルカレーにもベジタブルカレーにも専用にスパイスを調合しており、それぞれ作り方も違います。スリランカにはベジタブルカレーだけでも100種ほどレシピがあるとか。さすがカレー大国ですね。

ちなみに全て辛さはマイルドにしてありますが、1~5辛まで対応してくれますよ。

ココナッツのシャキシャキ感もクセになる!

副菜も一つ一つに手が込んでいます。このココナッツのサンバルは「日本でいうふりかけみたいなもの」らしく、カレーリーフやチリパウダー、ココナッツ、タマネギを和えたもの。めちゃくちゃ香りが良く、ピリっと甘辛く、ご飯が進みます。

 

猫田さん

スリランカで「サンバル」とは調味料の意味で、辛いものから甘いものまで全てを総称します。ちなみによく聞く「サブジ」は野菜を蒸したり炒めたりした料理ですって。