【食を制す者、ビジネスを制す】

ポジティブこそが成功へのカギ。京都の名店へ行ってそのヒントを掴む

日経の名物連載「私の履歴書」を読む

仕事柄、日本経済新聞を読んでいるビジネスパーソンは多いだろう。紙と電子版を併用して購読すれば、スマホなどでいつでも読むことができる。私も社会人になってから20年以上は購読していると思うが、楽しみにしている連載の一つに「私の履歴書」がある。日経の名物コラムの一つだから、知っている人も少なくないだろう。

ビジネスの世界では、この「私の履歴書」の対象者として選ばれることが、一つの栄誉だと言われている。功成り名を遂げた人物が、自分の人生を振り返るものだが、優等生的に語る人もいれば、型破りな人生を面白おかしく紹介する人もいる。いずれにしても「私の履歴書」の対象となる人物は、成功者だ。

これまで「私の履歴書」では経営者だけでなく、文化人、芸術家、俳優、スポーツ選手など各界の成功者が自分の人生を語ってきたが、長く読んでいるとあることに気付く。

それは、当然のことでもあるのだが、ストーリーがあるということだ。読ませる人ほど成功と失敗がくっきりしている。ピンチがチャンスになったり、人から助けられたり。ただ、いつも読んでいると、ストーリーが出来過ぎだと思うこともなくはない。

 

運を引き寄せるにはどうすればいい?

なぜ成功者はこうも運がいいのだろう。そう思うことがたびたびあった。例えば、自分の努力だけではどうやっても解決しない問題にぶつかったときに、ふとキーパーソンに出会って助けられる。そうやってどんな難局も乗り越えてしまって、いつのまにか本人が成功者となっているケースだ。あまりにも都合のいい展開に、そんなうまい話なんてないだろうと疑いたくなる。もしあったとしても運のいい特別な人だけだろうと思うこともよくあった。

そこで、ある成功した経営者にインタビューに行った際、話のついでに「『私の履歴書』のように奇跡的な出会いや、出来過ぎた展開に見えるような経験って本当にあるんですか?」と聞いたことがある。その経営者はこう言った。

「それが実際に起こるものなんだよ。ただ、本人は奇跡が起こると思ってやっているわけじゃない。大事なことは自分の未来は明るいと思ってポジティブな姿勢でいること。そうすれば、未来のことを心配しなくていいから、今日一日を一所懸命生きることができる。そうするとチャンスは自然に巡ってくる。ネガティブな人は、今日を大切にしていない。成功した人たちは皆そうだけど、今現在の目の前の課題に対してがんばっているんだ」

そうやって目の前の課題に一所懸命取り組んでいれば、道は開けてくるという。そのことについて、その経営者は面白い言い方をした。

「そのことを僕は“ドアが開く”と言っている。世間では、そのドアは自分でこじ開けるものだと思っている人が多いけれど、こじ開けようとするから開かない。ドアを開けることが目的ではない。目の前の課題を一所懸命やっていると、いつのまにかドアが開いているんだ。しかし、その先の道がもっと重要だ。その先に道が現れないとドアを開けただけでは、崖下に落ちるかもしれない。だからこそ、どんな悲観的な状況にいたとしても、常に未来に対してポジティブでなければならない」

 

ポジティブになれる店とはどんな店か?

ポジティブな精神を常に保つには、おいしい食事をすることが重要だ。暗い気持ちで、冷や飯を食べていれば、ますますネガティブになってしまう。だからこそ、自分がポジティブになれる食事をぜひ心掛けたい。

出典:slm-mtuさん

京都・先斗町にある小料理店「ますだ」は、まさにポジティブになれる食事ができる店だ。京都のおばんざいを提供してくれるこの店は、旅行者にとって「これが京都の名店だ」と感じることができる上質な雰囲気を持っている。注文では白木のカウンターの前に並べられたおばんざいの中から好きなものを選び、それをおつまみに日本酒をいただく。日本酒は樽に入った広島の名酒「賀茂鶴」のみ。これを二合徳利で飲むのが流儀だ。料理も、名物のき寿司(〆サバ)に鴨ロース、鱧などを頼みつつ、炊き合わせなどをいただく。いずれも薄味で、いくら食べても満腹感がなく、お酒をおいしく飲める。あの司馬遼太郎も新聞記者時代から通った馴染み客の一人であり、店内には司馬直筆の書が今も掲げてある。

出典:y_recさん

この店でポジティブな気持ちになったあとは、さらにバーに流れるのもいい。そうやって深くお酒を飲んでいると、またお腹が空いてくる。そんなときはタクシーを使って、京都駅近くで深夜まで営業しているラーメン店「京都たかばし 本家 第一旭」へ。こちらでは瓶ビールに餃子、そしてラーメンをすする。ここまでくれば、なんだか人生は楽しいと思えてくる。おいしい食事は、人を必ずポジティブにしてくれる。絶対に裏切らないのだ。