ダニエル・カルバート氏のおすすめ4軒

家族や友人、来日中のシェフ、時には1人で足を運ぶこともあるお気に入りの店は、ピザ、フレンチ、そば、とんかつと幅広い。新進気鋭のシェフお気に入りの4軒とは。

ディナーのおすすめ①PST東麻布(Pizza Studio Tamaki ピッツァ スタジオ タマキ)

カルバート氏が「来日前から多くの友人に薦められていたお店で、初めて行ったのは5年前。休日に妻と一緒に、月に1度は出かけます。」と教えてくれたのは「PST東麻布」。「食べログ ピザ 百名店」に選ばれ、ミシュランガイドにも掲載されているピザの実名店だ。

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都営大江戸線 赤羽橋駅から徒歩2分、1階・2階を合わせて32席   出典:masa84mo10さん

レンガ張りの外観と浮かび上がるネオンサイン、どことなく海外の街角を思わせ、昼夜インターナショナルな客層でにぎわいを見せる。

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カジュアルで入りやすい雰囲気の店内。奥にはキッチンも見える   出典:オールバックGOGOGOさん

ニューヨークで5年暮らした経験があるカルバート氏が滞在時を思い出すような店で「入ってすぐオーブンがあり、窯のにおいがして炎が見える、そういったライブ感も気に入っています」(カルバート氏)。

薪火で焼き上げるピザはスモーキーで香ばしく、食パンのような香りと甘みが引き出され、どこまでも軽い食感が楽しめる。生地には5年の歳月を経て完成させた店自慢のオリジナルブレンド粉が使われ、窯にピザを1枚入れるごとに、オーナー・マスターピッツァイオーロである玉城氏の故郷・沖縄のミネラル塩を窯に振るのだが、これにより塩のミネラル分が食材になじみ「PST」ならではのピザが焼き上がる。

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ピリ辛でお酒が進む「ディアヴォーラ」。程よく焦げ目をつけるのも大事な隠し味だ   出典:a0b841さん

「シーズナブルなピッツァにもトライしたいが、この2つが特にお気に入り」とカルバート氏が教えてくれたのは、王道「マルゲリータ」とイタリア語で「悪魔的な」を意味する「ディアヴォーラ」。マルゲリータの具材に自家製ポークソーセージと唐辛子、オリーブをプラスした「ディアヴォーラ」は、ピリリとした辛さが特徴で、カルバート氏も「セモリナ粉の使い方が素晴らしい。食べた時のサクッとした食感がいいですね」と絶賛。

ピザはトマトソースベース10種、チーズベース9種に加え月替わりもあり、温冷の豊富な前菜、デザート、ワインをはじめ各種アルコール、こだわりのソフトドリンクも豊富で使い勝手の良いピッツェリアである。

・マルゲリータ、ディアヴォーラ、ドリンクなど 予算~10,000円以下

ディナーのおすすめ②エスキス(ESqUISSE)

カルバート氏がディナーの2軒目に挙げてくれたのは、銀座のフレンチ「エスキス」。「The Tabelog Award」常連店であり、2013年から連続でミシュラン二つ星を獲得し続けるグランメゾンの代表格として知られる。

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世界に名だたる名店で研鑽を積み2006年に来日したリオネル・ベカ氏。出身はフランス コルシカ島   出典:hiro0827さん

「エスキス」という店名はフランス語で「ドローイング(素描)」、束縛のない自由な感性を意味し、エグゼクティブ・シェフは来日16年を数えるリオネル・ベカ氏が務める。

「リオネルシェフは日本の食材をフレンチに取り入れる技術やセンスが誰よりも上手。日本在住年数も長く、学ぶところが多いです」とカルバート氏。来日中のシェフや友人とともに少なくとも年3回は訪れるという。

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昼は自然光、夜はキャンドルの灯りが心地よい雰囲気を創り出す   出典:葡萄党幹事長さん

豪華絢爛な調度品や美術館のようなしつらえのグランメゾンも珍しくないが、洗練されたグレートーンでまとめられた空間は、包み込まれるような居心地の良さに満ちている。「グランメゾンであるにもかかわらず規模が大きすぎず、全体のサービスもワインのセレクトも素晴らしいですね」(カルバート氏)

大地の恵みである食材の声に耳を傾け、食材に新たな命を吹き込むリオネル氏の一皿
大地の恵みである食材の声に耳を傾け、食材に新たな命を吹き込むリオネル氏の一皿   写真:お店から

料理はシェフの創作コースである「Menu spontané(ムニュ スポンタネ)」のみ。ディナーはグラスシャンパン、プレート7品、チーズ料理、パン、ミネラルウォーター、プレデザート、デザート、コーヒー&プチフールで構成され(コースによって異なります。)、フランス料理の伝統と技法に根ざしながらも、日本の食材と技術を取り入れ、先進的で優しいユニークな料理を楽しませてくれる。

・お任せコース:30,000~36,000円(サービス料12%別)

ランチのおすすめ①石臼挽き手打 蕎楽亭(きょうらくてい)

ランチの1軒目は、神楽坂のメイン通りを少し入った路地にある「石臼挽き手打 蕎楽亭」。「日本らしさを感じる街並みが残る神楽坂」が気に入り居住地に選んだカルバート氏が、歩いていて見つけたことがきっかけで、休日のランチに月に2回は奥様と足を運ぶという。

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入口近くの石臼に「商い中」の木札が出ていれば営業中。石臼製粉機が外からも見える   出典:オールバックGOGOGOさん

「石臼挽き手打 蕎楽亭」は「食べログ そば 百名店」の常連でミシュランガイドにも掲載された名店だが、和の佇まいにほっこりする店構えで、入りやすい雰囲気が漂う。

店主の長谷川氏は福島県会津の出身。メインに使う玄そばは福島県河沼郡柳津町産、会津の馬刺しや具だくさんの汁物・こづゆ、福島の地酒がお品書きにずらりと並び、郷土愛にあふれた店である。

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ミツバや白髪ネギなどシンプルな具材がトッピングされた「かけそば」   出典:mako1764さん

カルバート氏がよく注文するのは温かいそば。だしは北海道 尾札部産の真昆布に枕崎産の本節、イリコと乾椎茸を合わせてとったものが使われている。

「来日前に香港で5年暮らしていたこともあり、温かいそばが食べやすくて気に入っています。天ぷらもおいしいですし、一品料理も充実し、味噌キュウリなどもよくたのみます」(カルバート氏)

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季節の食材を味わうのも楽しみな天ぷら盛り合わせ   出典:phili204さん

実はこちらの店、1日1組限定でお任せコースを味わえる「天ぷら 蕎楽亭」としての予約も受け付けるほど、天ぷらに定評があり、まるで生きているかのような稚鮎には目を見張る。カウンターにはレンコン、ナス、シシトウ、キノコなど、出番を待つ旬の野菜が並び、後方の厨房で揚げたてアツアツを順々に提供。薄衣でサクサク、素材の味もしっかり楽しめる。

・かけそば、天ぷら 予算:3,000~4,000円

ランチのおすすめ②車力門 ちゃわんぶ

ランチの2軒目にあげてくれたのは、新宿荒木町に店を構えるとんかつ専門店「車力門 ちゃわんぶ」。本格的な来日前に日本を訪れた際、友人に連れてきたもらったことがきっかけで、ショップカードをもらって帰ったという。「予約がとれる時に家族や友人と、カウンター席もあるので時には1人でも食べに行きます」とカルバート氏。

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個性的な飲食店が軒を連ねる車力門通りで以前と変わらぬ佇まいで迎えてくれる   出典:新宿うに姫たるちゃんさん

店主の武澤氏は、幾多の美食家を唸らせてきた伝説の京料理店「京味」で腕を磨き、2009年に日本料理店「車力門 ちゃわんぶ」をオープン。兄弟弟子が開いた割烹料理店「くろぎ」の厨房に立つため2017年に店を閉め、2019年にとんかつ専門店として営業を再開した。

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美しい断面のヒレカツは柔らかでジューシーな味わいで衣もサクサク   出典:Just.do.it.227さん

カルバート氏お気に入りのメニューは「特選ヒレカツ定食」。レア気味に揚げられたヒレはみずみずしく柔らかで、肉の味がしっかり。脂がしつこくないサクッと軽い衣とのコンビネーションが秀逸で「カツソースもご飯もとてもおいしい」とカルバート氏。正統派の日本料理を修業してきた店主だけに、とんかつとの相性が抜群の炊き上がりだ。

Tokyo Rocks
食器をのせる折敷(おしき)が大きく、隣席との間隔もゆったりしたカウンター席   出典:Tokyo Rocksさん

「カウンター席に座るのも楽しいですよ」とカルバート氏が話す通り、カツを切る作業や盛りつけが目の前で見られる臨場感あるカウンター席は4席だけの特等席。とんかつの〆やカツカレーにしてもおいしいと評判の「野菜すり流しカレー」も、カレー専門店を超える味と人気。ご飯のお代わりが無料なのもうれしい。

・特選ヒレカツ定食、野菜すり流しカレー 予算:~6,000円

※価格はすべて税込です。

取材・文:池田実香(フリート)