年に1回、食べログユーザーからの投票で決まる「The Tabelog Award」。全国に星の数ほどある飲食店から選び抜かれる受賞店の魅力を伝えるとともに、店主の行きつけの店をご紹介。丸の内のフレンチ「SEZANNE」のシェフが愛する名店とは?
〈一流の行きつけ〉Vol.19
フレンチ「SEZANNE」東京
高評価を獲得した全国の店の中から、さらに食べログユーザーたちの投票によって決定する「The Tabelog Award」。どの受賞店も食通たちの熱い支持によって選ばれただけに、甲乙付け難い店ばかりだ。
当連載では一流店のエッセンスを感じてもらうべく、受賞店の魅力やこだわりとあわせて店主が通う行きつけの店を紹介する。
第19回は、初ノミネート店の中で得票数が特に多かった上位14店「Best New Entry」に選ばれ、「The Tabelog Award 2023 Silver」を受賞した「SEZANNE」。エグゼクティブ・シェフ(総料理長)を務める、ダニエル・カルバート氏にお話を伺った。
ラグジュアリーホテルの7階に2021年にオープン
東京駅八重洲口のランドマークである超高層ビル、パシフィックセンチュリープレイス丸の内。3~7階はスモールラグジュアリーホテル「フォーシーズンズホテル丸の内東京」、その7階に位置するのが、世界の注目を集めるフレンチレストラン「SEZANNE」だ。
その躍進は目覚ましく、オープンからわずか半年でミシュラン一つ星、翌年には二つ星を獲得。国際的なレストランランキング「アジアのベストレストラン50」では前年の17位から2位に選ばれる快進撃を見せた。
16歳で料理を仕事に、世界の美食都市で経験を
「SEZANNE」のエグゼクティブ・シェフとしてチームを率いるのが、世界が認める若きシェフ、カルバート氏だ。「世界最高のレストランで働きたい」という夢を抱き料理の道を歩み始めたのは16歳の時。ロンドン、ニューヨーク、パリ、香港と、世界の美食都市でさまざまな経験を積み重ね、5番目の都市として東京を選び、33歳で来日した。「日本は調理技術や料理のレベルが高く、東京には素晴らしいレストランがたくさんあります。そこで仕事をすることは、自分にとって大きなやりがいであり喜びにつながっています」(カルバート氏)
店名の「SEZANNE」は、シャンパンの産地で有名なフランスシャンパーニュ地方の町の名前で、カルバート氏の祖父母の家があり、幼い頃を過ごした思い出の場所でもある。カルバート氏が心がける軽やかな料理はシャンパンとのペアリングに最適で、そのスタイルは、繊細で軽やかな味わいが好まれる日本でも通用するとの思いから、この店名を選んだという。
日本の美を現代に融合させた内装デザインは、香港を代表する建築家、アンドレ・フー氏によるもの。典型的なホテルレストランのスタイルではなく、“知る人ぞ知る秘密の隠れ家”がコンセプトで、メインダイニングから窓越しにキッチンの様子がうかがえ、胸が高まる。
食材を生かした軽やかなフレンチが真骨頂
「SEZANNE」で味わえるのは、美食家を魅了する軽やかで美しいフレンチ。ブルターニュ、パリなどフランスから仕入れた食材のほかにアジア、北海道、長野、富山、群馬など日本各地の季節のさまざまな食材を取り入れ、クラシカルなフレンチの技法も感じさせる、これまでに食べたことのないようなモダンフレンチへと昇華させ、楽しませてくれる。
「料理で大切にしていることは、季節の食材を使っていかに『SEZANNE』らしい料理に仕上げるか。何かを作ろうとして食材を手に入れるのではなく、ある食材をどう生かすか、そこにかかっていますね」とカルバート氏。
「SEZANNE」の料理には、食後に重さを感じない、乳製品を使いすぎないなどの特徴があり、伝統的なフランス料理に比べて軽さのあるフレンチに仕上がっているのが特色で、多くのリピーターを生んでいる。