年に1回、食べログユーザーからの投票で決まる「The Tabelog Award」。全国に星の数ほどある飲食店から選び抜かれる受賞店の魅力を伝えるとともに、店主の行きつけの店をご紹介。食べログの全国うなぎランキングでも常に上位に居続ける「うなぎ魚政」の初代店主が選んだ名店とは?

〈一流の行きつけ〉Vol.18

うなぎ「うなぎ魚政」葛飾・四つ木

高評価を獲得した全国の店の中から、さらに食べログユーザーたちの投票によって決定する「The Tabelog Award」。どの受賞店も食通たちの熱い支持によって選ばれただけに、甲乙付け難い店ばかりだ。

当連載では一流店のエッセンスを感じてもらうべく、受賞店の魅力やこだわりとあわせて店主が通う行きつけの店を紹介する。

第18回は2017年を皮切りに7年連続でBronzeを受賞、「食べログ うなぎ 百名店」の常連でもある「うなぎ魚政」。父からのれん分けして店を立ち上げ43年、現在は2代目を継いだ息子・隆寛さんと店に立つ鈴木 俊男氏にお話を伺った。

うなぎに人生を捧げて43年の店主が営む

あるぱかーん
立派な天然木の看板がかかる店先には「天然うなぎ入荷」を知らせる札が   出典:あるぱかーんさん

京成押上線四ツ木駅から徒歩1分。都心から少し離れた下町に創業し43年になる「うなぎ魚政」は「今まで食べたうなぎの中で一番うまい」「これまで食べたうなぎと全く違う」と、多くの客が絶賛する名店だ。店主の鈴木氏は昭和27(1952)年に魚屋の四男として生まれ、父が始めたうなぎの店が評判となり、後にのれん分けして四つ木で独立。うなぎに人生を捧げ、2代目が育った今も、毎日うなぎのことを考えているという。

プニプニ51
訪れた著名人のサイン色紙が壁一面に並ぶ店内   出典:プニプニ51さん

2014年にまいろーど四つ木商店街から四ツ木駅前に移転した店舗は、こぎれいでアットホームな雰囲気で、うなぎを焼く香ばしいにおいが漂う。その立地から浅草観光やスカイツリーを楽しんだ後に訪れる客も多く、外国人観光客の姿も珍しくない。ちなみに入店は7歳以上、子ども用のメニューはないため大人と同じ1人前を食べられる7歳以上が対象だ。

予約時間に合わせた“特注活鰻”が評判

焼きは、うなぎの旨みを逃がさず香ばしく焼き上がる紀州備長炭を使用
焼きは、うなぎの旨みを逃がさず香ばしく焼き上がる紀州備長炭を使用   写真:お店から

店のこだわりは登録商標でもある「特注活鰻(とくちゅうかつまん)」という調理法。あらかじめ白焼きにしたうなぎを冷蔵保存し注文後に調理する店も少なくないが、「うなぎ魚政」では予約の時間に合わせて活きのいいうなぎを割き、串打ち、白焼き、蒸しの工程を経て、上質な紀州備長炭でていねいに焼き上げ提供している。

鈴木氏が吟味した、見るからに活きのいいうなぎ
鈴木氏が吟味した、見るからに活きのいいうなぎ   写真:お店から

扱ううなぎは、日本各地から取り寄せる国産うなぎ、「うなぎ坂東太郎」などの国産ブランドうなぎ、春から秋口にかけて入荷する天然うなぎの3種類。問屋から生きたまま仕入れ、店内のうなぎの寝床で保管する。要望に応じて、浅蒸しや地焼き(白焼きを蒸さずにそのまま焼く)など、好みの加減に調整してもらうこともできる。

痩せたいけど食べたいの
鮮度抜群のうなぎだからこそ提供できる肝と骨。うなぎは捨てるところがない   出典:痩せたいけど食べたいのさん

提供までに最短でも40分かかるが「うなぎを待つ時間をゆっくり楽しんでほしい」と出してくれるのが、割いたうなぎ1尾分の肝わさと骨せんべい。油で揚げた骨せんべいはポリポリ、カリカリ絶妙な揚げ加減。ミョウガとともに出される肝わさは、つるりとしてくさみも一切ない。いける口なら「十四代」「而今」「田酒」など豊富な銘柄の日本酒を楽しむのもおすすめだ。

代々木乃助ククル
ブランドうなぎの最高峰「うなぎ坂東太郎」が使われたうな重   出典:代々木乃助ククルさん

いよいよ自慢の「うな重」の登場。ふっくら、こんがり焼き上がったうなぎは、ふわふわトロトロ。皮目はパリッと、身はとろけるようにやわらかいが、くずれるような感じではなく輪郭のあるやわらかさ。米はこだわりのうなぎと、40年以上注ぎ足して使う秘伝のタレに最も合うものを、年ごとに全国から厳選。タレとの相性がよい和歌山県産の山椒をぱらりと振って口に運べば、箸を持つ手が止まらない。

お客様を思う気持ちからネット予約や自販機を

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店頭に設置されているうなぎの蒲焼きの自動販売機   出典:reizxさん

「うなぎ魚政」の予約はネット予約のみ。かつては電話予約を行っていたが、うなぎの入荷状況により提供メニューが変わるため、メニューを第1希望から多いと第5希望まで確認する必要があり、長いと1本の電話に10分近くかかることも。

「その間、仕事が中断され、店で待ってくださっているお客様にご迷惑がかかってしまうことがあり、24時間対応のネット予約を取り入れました。また、近隣にお住まいの方や予約なしで来られて店に入れないお客様のために、2022年から白焼きや蒲焼きの自販機を設置しました」と鈴木氏。自販機の商品は冷凍だが、湯煎するだけでおいしく食べられると喜ばれているという。

今は立派に育った2代目に焼き場を任せる鈴木氏だが、まだまだ現役。妻の知江子さんと2代目と3人で切り盛りする下町の名店は、今日も多くの客の満ち足りた笑顔であふれている。