塩麹、甘酒、味噌玉……etc. 昨年に引き続き、健康志向から発酵食品に関心が高まっている。もともと豊かな発酵文化を誇る日本。昔からの食文化をうまくとりいれおいしいメニューとして提供している、ヘルシーで個性的な発酵食専門のお店を数回にわけてお届け。冬から春へ、季節の変わり目とともに体調を崩しがちなこの季節に訪れてみて。前回紹介した京都の発酵食堂「発酵食堂 カモシカ」に続き、今回は川崎にある「かもし堂」を紹介。

Vol. 2 神奈川・川崎 発酵食品専門カフェ「かもし堂」

健康、おいしいをモットーに、発酵食品で川崎の食文化を盛り上げていくことを目的に置いた「発酵都市かわさきプロジェクト」。平成25年には、川崎市のイメージアップ事業にも認定されたこちらのプロジェクトを牽引するのが、川崎にある発酵食品の販売も行うカフェ「かもし堂」。

オーナーである長谷川さんの前職はなんと、テレビ局の番組制作ディレクター。医学番組や健康にまつわる情報バラエティを手がけるなかで、発酵食品の魅力に迫る番組の担当に。そこで、発酵食品に詳しい、農学者の小泉武夫先生と出会った。番組内では、全国にある酒蔵、味噌蔵などを取材し、発酵食品を科学的に分析した。昔ならではの手法で時間と手間暇をかけて作られたそれらは、実験によると非常に栄養価が高かったとか。そして、何よりもおいしく、徐々に虜になったという。

発酵食品を未来へ紡ぐ、担い手のいないジレンマ

素晴らしい発酵文化と巡り合えたものの、次に直面したのは発酵文化の“危機”だったという。「取材の過程で、発酵文化を受け継ぐ若い担い手がおらず、いろんな蔵が閉鎖に追い込まれているという事実に直面しました。おいしくて健康にもよい、この素晴らしい食文化をもっと広めたいという想いをずっと抱えていました」

 

 

番組終了後も先述の小泉先生と定期的に交流をし、発酵食品を広めるイベントを不定期でとりくむなか、料理人、フードコーディネーターとの巡り合わせがありお店を開くことを決意。当初は、鷺沼にオープンし、3年前に現在の場所に移転。その間に「発酵都市かわさきプロジェクト」が川崎市の認定も受けた。

 

 

発酵食品の素晴らしさを知ってもらうには、食べてもらうのが手っ取り早いと長谷川さんは続ける。

「座学は後で。まずは食べておいしさを知ってもらう。自然の生業がかもす甘みと旨みが格別ですから」

本物の発酵食品のみで作られた、“発酵三昧”のメニュー

「かもし堂ランチセット」1,000円

 

まさに、「かもし堂」の集大成ともいえるのがこちらの定食。長谷川さんが、先述の取材の際に知った全国各地の発酵食品を使った。

 

 

メインは肉と魚から選べるが、この日は鮭をチョイス。減塩の塩麹に2日間漬けた鮭は、身がふっくらとしホクホク。しょっぱさはまったく感じられずむしろ鮭の旨みが引き出されている。サラダには麹でうまみと甘みを引き出した玉ねぎのドレッシングを。こちらはお店のオリジナルで購入も可能。味噌は江戸から続く老舗の愛知県「桝塚味噌」の2年半熟成ものを使用。こちらの味噌は長谷川さんが先述の番組で科学的に分析したところ、一般の味噌よりも明らかに栄養価が高かったとか。ごはんは食物繊維が豊富な十穀米。ランチタイム(11時〜14時)はおかわり自由。漬物は赤カブの甘酢漬け。小鉢は酒粕キムチ煮と麹納豆。納豆が苦手な人でも食べられることから、“関西人でも食べられる納豆”として人気の品。麹と合わさることで力の強い納豆のにおいがまろやかになり甘みも付加される。

「かもし堂」のもうひとつの看板メニューが唐揚げ。にんにく塩麹だれに漬けた鶏肉はやわらかく深みのある味わい。発酵の過程でにんにくのにおいの成分はとんでいるので、においが気になる人でも大丈夫。冷めてもおいしいの特徴のこちらの唐揚げが入った弁当は、ロケ弁コンテストでグランプリを獲得した。864円。

ドリンクとスイーツも発酵のパワーでおいしく健康に仕上がった。米と米麹だけで作った甘酒をミルクで割ったミルク甘酒。麹は、老舗「伊勢惣」のみやここうじを使用。赤の豆味噌を隠し味に使った味噌プリン。大豆100%でコクがあるから、パティシエが隠し味に使うこともあるとか。季節によってフルーツが変わるフルーツ甘酒も好評。林檎など硬いものは1日前から漬け込むが、その際の果汁が甘酒とあいまってたまらないおいしさ。まさに、自然の甘さが奏でるハーモニー。ミルク甘酒 280円、味噌プリン 280円、フルーツ甘酒  280円。

定食のほか、料理で使われる「塩糀ドレッシング」は店内でも購入可能。648円。

 


※定休日は、日曜、祝日
写真:小野広幸