食通が見いだした今月の新店

新型コロナウイルスの流行により苦戦を強いられていた飲食店は、少しずつ元の活気を取り戻し始めています。私たちも我慢の連続から少し解放され、おいしいものを食べて明日への活力に、そして、飲食店をより盛り上げて行きたいですね。

そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。

今回は、フードパブリシストの高橋綾子さんにお答えいただきます。

教えてくれる人

高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

今月のベストワン

Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください

A. 「なかむら」です

店主の中村友紀さんは今や天ぷらで日本を代表すると名高い「成生」で約8年修業されたとあって、「なかむら」はオープン前から予約困難必至と言われた注目店です。

お造り

おまかせコースはすり流し、お造りを楽しんでから天ぷらがスタート。7〜9種揚げたあとにお口直しの一品、さらに5〜6種の天ぷら、炊きたてご飯の天丼か天茶、デザートという内容。魚介は焼津「サスエ前田魚店」の前田尚毅さんの手当てによるもので、野菜はほぼ静岡県産ということや、低温で煮るように揚げたり、高温の鍋肌で焼くように揚げたりと素材によって揚げ方を使い分けるテクニックも師匠譲り。

金目鯛

水分たっぷりの牛蒡、さっくりの後からねっとりが顔を出す烏賊など「成生」を彷彿とさせる天ぷらに、金目鯛にはきゅうりをのせて中華風のタレをかけたり、鯵を磯辺揚げにしたりと中村さんのオリジナル天ぷらも加わり、オープンして1カ月経たないとは思えないクオリティの高さでした。それでも中村さんはもっともっとおいしくできると現状に満足することなく研鑽を積んでいるので、季節が変わる頃にはさらに進化しているに違いありません。

Q. そのお店でおすすめしたいメニューを教えてください。また、おすすめの理由を教えてください

A. 「天ぷら」(コース内に含む)です

例えば「鯵」は大根おろしとつゆの入った器に揚げたてを直接入れてくれるので、衣がまだシュワシュワしている間に頬張れます。サクッとした衣とほくほくした鯵との食感のコントラストが素晴らしい! 鯵ってこんなに厚みがあってゴージャスな味だったかと驚かされます。

ヤングコーンのひげ
さつまいも

また「ヤングコーンのひげ」や「メークイーン」は紙に包んで手渡し。「さつまいも」は丸ごと40分ほど低温で揚げ続けたら少し時間を置いて“蒸し”の工程をとり、仕上げに塩をパラリと振りかけます。食材の水分量、油の温度、揚げ方、衣のつけ方などすべてにおいて、その食材がいちばんおいしくなるように仕上げた天ぷらは感動に値します。

※アンケート内容をもとに、料理名・金額を掲載しています。最新の情報はお店にご確認ください。

写真:高橋綾子
文:高橋綾子、食べログマガジン編集部