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定番・季節もの・変わり串、多種多彩な串揚げに出会える
工夫を凝らした数々の串には、江戸前の細かな技が施されている
「串揚げ」と一口にいっても「串徳」のそれは他とは一線を画す。まるで寿司のように細やかな仕事が施され、端正な姿で登場するのだ。「父から譲り受けたことが大半ですが、自分で工夫したものもあります。季節を感じる食材を大切にしていきたい」と三串さんはいう。
串揚げのたねは豊富で、定番が約30種類、この他に季節の串を5種類ほど用意する。これだけの種類があるので、何度訪れても初めて食べる串揚げに出会えるのも魅力だ。基本はおまかせで、苦手な食材などを確認したら、あとは食べるペースを見ながら「ストップ」がかかるまでエンドレスに揚げてくれる。女性でも15本くらいはペロリと食べられるそうで、予算は14本で5,000円前後。
山本さん
一串一串、しっかり丁寧な仕事がしてあって、口の中でちゃんと旨みが広がるようになっているんです。
薄い衣をまとい、旨みと香りに口福感が広がる「カニ爪」
ズワイガニのカニ爪も名物メニューのひとつ。大ぶりのカニ爪は、まるで揚げていないかのように軽やかで、火を入れることでカニの甘みが広がり、香ばしい衣の香りが鼻に抜ける。
山本さん
衣と蟹の旨みとの相性が抜群! 塩とレモンでいただくのがおすすめです。
シンプルだからこそ、おいしさがダイレクトに伝わる「茄子」
茄子は一口サイズの小茄子を使い、中にひき肉を詰めて片側だけに衣をつけて揚げる。トロトロに揚がった茄子からほろりと肉の旨みが飛び出すのがたまらない。
山本さん
火入れが抜群で、茄子っておいしい食材だなぁと改めて感じさせてくれます。
食材同士がおいしさを引き立たせる「オクラチーズ」
一口大に切ったオクラの間にチーズを挟んだ串は「いろいろ試した結果生まれた」というオリジナル。サクサクとした食感を残したオクラと、トロリと溶け出すチーズの対比が絶妙だ。
山本さん
オクラとチーズの組み合わせが素晴らしく、つい食べたくなる一品です。
秀逸なセンスが光る「豚バラ生姜巻き」
「串徳」の串は、どれも一工夫を加えているので料理としての完成度が高い。例えば「豚バラ生姜巻き」はあえて生姜を角切りにすることで、噛んだ瞬間に生姜の清々しい香りと汁気がほとばしり、豚肉の脂を包むように設計されている。
特注で細かくひいてもらうというパン粉も繊細な串揚げに一役買っていた。店でもう一度ひきなおしてさらに細かくするので、油を余分に吸わず、口に入れた時の食感も優しい。繊細な串揚げの理由はここにもあったのだ。
山本さん
豚肉の脂の旨味に生姜のアクセントが利いて、センスと仕事を感じます。
寿司店のように先代から次の世代へと受け継がれる細やかな仕事が生きた串揚げ。親子2代、串揚げ一筋に生きる職人の技は、日々磨き抜かれ、たゆまず進化を続けている。この店にしかない圧巻の一串に出会うために一度は訪れていただきたい名店だ。