〈食べログ3.5以下のうまい店〉
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので「3.5以下のうまい店」にこそ注目し、今のうちにと楽しんでいる人も多いらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、Sumally Founder & CEOの山本憲資さんが「NYスタイルのピザが手軽に味わえるお店」としておすすめのお洒落なダイナーをご紹介。
教えてくれる人
山本憲資
Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。
麻布十番駅を出てすぐの場所に佇む、本格派のNYスタイルのピザ店
昔ながらの商店街と近代的な高級店が混在し、近年はニューヨークスタイルやハワイスタイルなど、海外気分に浸れるおしゃれな飲食店が増えている麻布十番。中でも、とことん本場を追求した味わいでリピーターを増やしているのが、麻布十番駅7番出口からすぐの場所にある「Nim’s Pizza」だ。
店内はピカピカに磨き上げられた1950年代アンティークのスツールや、ミントグリーンのソファなどが配され、スタイリッシュなアメリカンダイナーの雰囲気。
ショーケースに並ぶホールピザの大きさにまず圧倒されるが、1/8にカットされた1スライスからオーダーできるシステムとなっている。
「作り置きなのか……」とがっかりするなかれ。NYスタイルピザは、一度冷まして再度オーブンで温め直したほうが、余分な水分が飛んでおいしくなるのだとか。
内装は「NEW CLASSIC」をテーマに、NYで活躍するデザイナーとともに作り上げたもの。地下フロアにはNYを代表するグラフィックアーティスト、カーティス・クーリグのグラフィックアートが展示されている。近隣に大使館が点在する場所柄、外国人ゲストも多いため、NYにトリップした気分でピザを堪能できる。
山本さん
知人においしいとおすすめされて。ナポリ的ではなく、NYスタイルのピザが手軽に味わえてうれしいなと思いました。週末は遅くまでやっていて、麻布十番で飲んだ帰りにシメ的に食べるのもまた楽しいです。
独学で突き詰めた、NYピザの真髄
ここで腕をふるうのは、なんと独学でピザ作りの技を習得しNYでのピザ作りの経験もあるというオーナーシェフの新村馨さん。前職はアパレル業で、商品の買い付けのためにたびたび訪れていたNYで食べた本物のNYピザのおいしさに魅了され「グルメなNYスタイルピザを自らの手で表現したい」と一念発起。ピザ作りの知識だけでなく、天然酵母の作り方や発酵についてなど、持ち前のオタク気質であらゆる勉強を重ね、2020年12月に同店をオープンした。
コンセプトとしているのは、形だけの“NY風”ではなく、製法からこだわった本物のNYスタイルピザ。現地でも当然、地域や店によって味のクオリティーに差があるが、新村さんが参考にしているのは、ブルックリンにあるニューヨーカーたちに人気の店だ。今も毎年NY現地で30店舗以上のピザを食べ比べ、現地のピザ職人仲間たちと連絡を取り合い、生地の配合などについて日々ディスカッションを行っている。
「日本でNYスタイルをやるからには、リスペクトを持たなければ。リスペクトを持つとは、しっかり勉強することだと思うので」(新村さん)
試行錯誤を重ねてたどり着いたオリジナルブレンドの生地は、48時間じっくり低温熟成させるなど、独自の発酵方法で旨味をアップ。トマトソースは、フレッシュトマトと2種のトマトペースト、数種のハーブを使用し、1日冷蔵熟成させることで、ハーブの香りとトマト本来のみずみずしい味わいが広がる仕上がりとなっている。
店内に設置されたガスオーブンで焼き上げるピザは、外はサクッと香ばしく、中はもちもちとした食感と、噛むほどに感じる小麦の甘みが特徴。1スライスでも大ぶりな見た目に反して、口当たりは軽い。
山本さん
個人的にピザは生地が命だと割と思っているのですが、薄いクリスピーなので割と大きめでもさくっと食べてしまえてよいです。