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〈秘密の自腹寿司〉
高級寿司の価格は3~5万円が当たり前になり、以前にも増してハードルの高いものに。一方で、最近は高級店のカジュアルラインの立ち食い寿司が人気だったり、昔からの町寿司が見直され始めたりしている。本企画では、食通が行きつけにしている町寿司や普段使いしている立ち食い寿司など、カジュアルな寿司店を紹介してもらう。
教えてくれる人
山本 憲資
Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。
商店街を一歩外れた住宅街に存在する、地域に溶け込んだ立地
祐天寺駅から歩くこと8分。静かな住宅街が広がるエリアにポツンと見えてくるのが「目黒すし太一」。“太一”の文字を染め抜いたのれんが風格を感じさせる入口を入ると、わずか6席をゆったりと配置したカウンターが落ち着いた雰囲気を醸し出している。
山本さん
活気のある明るさ、ハードルが低いけれど下品ではまったくなく、こんな町寿司があったらいいなと思えるポイントが満たされているいい店だと思います。場所も住宅街とはいえ外れすぎていないところがいいです。
大将の田村太一さんは地元出身とあってこの場所には縁もあったという。しかし住宅街で店を開いた理由はそれだけではない。「落ち着いて食べられる店にしたかったんです。それに住宅街の店なら、わざわざ来てくれるお客さんに向けて自分のやりたいことを突き詰められるとも考えました」と話す。
田村さんは18歳で寿司の世界に入っておよそ30年。浜松町の寿司店を皮切りに、途中には料理の幅を広げるために和食店でも働いたという。神田や日本橋、銀座の店も経験し、都会よりも地に足が付いた住宅街で店をやりたいと考えるようになったという。
寿司はハードルが高い店も少なくないが「住宅街に店を持つことで価格を下げて、色々な方に楽しんでもらえるようにしたかった」という。気さくに話せる温かな接客もその心のあらわれだ。
驚愕のコスパ寿司
メニューはコースのみ。一番下の価格帯は6,600円と驚くほどリーズナブルだ。これなら飲んでも1人1万円で収まる価格。しかも、つまみと握りの飲む人向き、握りだけの食べたい人向きの2種類を用意するというから、使い勝手の良さは抜群だ。その上のコースでも8,800円と1万円を切っている。さらにその上には、大将が本領を発揮する時価のおまかせコースも用意されている。
山本さん
この内容で1万円もしないのはもう衝撃のコスパ、としか言いようがないですね。
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濃厚な甘みの「アカイカ」
富山のコシヒカリを使ったシャリは米酢使いが優しく、粒立ちのいいご飯の風味や旨味が際立っている。
この日のアカイカは新島産。包丁を入れるほど甘みを増すというアカイカに美しく細やかに包丁を入れ、ねっとりとした甘みを引き出している。
噛むほどに甘みを増す「車えび」
甘みが強い九州産を使うことが多いという車えび。この日は大分の姫島で水揚げされた大ぶりなものが届いた。毎日、市場へ通うことで馴染みの深い仲買が店に合った魚介を選んでくれるのだ。
赤身と脂の一体感を感じる「まぐろ」
「仕入れには恵まれているんです」と笑う田村さん。まぐろは、縁あってご近所に住んでいる豊洲市場の仲卸から手に入れている。店の価格帯から値の張る生を使うことはできないというが、冷凍ものでも遜色のないおいしいまぐろが出せるのも、そんな仲卸との息の合った付き合いのたまものだ。