日本の陶磁器の産地を巡り、その土地の食と器の魅力を、ドラマティックな演出で伝えるプロジェクト「The DINING HACK」。去る11月中旬、佐賀県・有田で行われた、記念すべき第1回のイベントをレポート。器だけではない、食の宝庫としても注目を浴びる有田。この冬の旅先として候補に入れてみては。

大人のためのエクスクルーシブな一夜

会場となったのは、佐賀県有田町にある「幸楽窯」。慶応元年(1865年)より、製陶業一筋の伝統的な窯元。昭和37年には、今回の会場でもあるここ有田町丸尾に新たな窯を築いた。現代の生活にもフィットする家庭用食器から割烹食器に至るまで、さまざまなシーンで食を華麗に彩る器を焼き続けている。

広大な器工場にテーブルをセッティング。クロスはこの日のために用意された、9メートルの一枚布。

 

「The DINING HACK」プロデューサーの伊藤レイさん。日本の器をテーマに、和をハイブリッドなスタイルで表現するテーブル空間スタイリスト。現在は、九州と東京を行き来しながら活動。以前、「幸楽窯」を訪れた際に、壮観な風景に魅了され、ここで器と料理のイベントをしたい!と、当企画が浮かんだそう。

器と地元食材の競演が幕をあける

お待ちかねの食事は、福岡のフレンチ「Pinox」より水野健児シェフが腕を奮う。地元食材を驚くべきアイデアでよりおいしく魅惑的に調理することで名高い水野シェフならではの、サプライズがつまった料理をコース仕立てで堪能。お皿ごとに用意された、ワインと地酒とのペアリングを楽しむ。

コースは、12品仕立て。すべてのメニューにおいて地産の食材を使用、水野シェフが生産者と直接会い食材を見聞きして食べてメニューを考案するという、手の入れようだ。その分、食材の潜在力をとことん引き出した唯一無二の創作メニューに仕上がった。

牛乳の可能性―「蘇」のチップと数日熟成させたババロア カボチャの種と塩の結晶

「蘇(そ)」とは、平安時代に作られていた日本古来のチーズともいわれるもの。唐津から仕入れた搾りたての牛乳を作りそれを水野さん流に再現した。写真手前のチップは、牛乳を8時間ほど煮込みどろどろになったものを薄くのばし、オーブンで4時間ほど焼いたもの。さらに、同じ牛乳を40℃で加熱し3日間熟成して固めババロア状にした。同じ牛乳から作られた、食感の異なる“両極端のチーズ”が誕生。フレッシュな牛乳の風味を引き立てるのは、塩の結晶とオリーブオイル。初冬にぴったりの一皿。

鯉白子のロワイヤル。鯉の出汁とその身のコンフィ

有田で有名な鯉料理。水野シェフは今回鯉料理を作るにあたりフランス料理の文献を調べたところ、白子をたくさん使ったメニューが多いことに気がついたそう。そこで思いついたのが白子を使った洋風茶碗蒸し。上には鯉の頰のお肉と卵を添えて。出汁は鯉の骨を3時間ほど焼いてスープにして3時間ほど煮詰めたもの。海の魚にも負けない濃い味わい。

パプリカのマカロン 安納芋のタルト大豆のプラリネ 紅茶のギモウブ

最後は、ゴールドの紋様を大地に見立てて、大人らしい色味のプティフールが登場した。

ダイニングシーンを盛り上げるインスタレーション

イベントのサブテーマは、「大人のためのインスタレーションパーティ」。世界の花の展覧会にも召喚されるフラワーアーティストの井上博登氏による、フラワーアレンジメント。ハイブランドのパーティのDJや音楽制作活動をするDJ AMIGA氏がラウンジやチル音楽をムーディに演出するなど、1万坪を誇る敷地を生かし、ダイナミックかつ洗練された演出が繰り広げられた。

会場では、器を使ったフラワーアレンジメントが花を添える。

 

「DINIG HACK」は、今回の有田を皮切りに、日本全国の窯元で開催される予定だとか。SNSでは、水野シェフが食材元を訪ねた際の様子や食器選びなどのメイキングストーリーのほか、次回の開催時期や、近況などはSNSで随時発信される。ぜひ、チェックしてみて。

 

 

有田の郷土&名物料理を食べられるお店

最後に、有田を訪れた際に立ち寄りたいお店をピックアップ。参考にしてみて。

天然醸造の味噌を使った川魚料理/龍水亭

イベントで話題をさらった鯉を使った料理。そこで提供された鯉を提供してくれたのがこちらの「龍水亭」。お店のある竜門の水は名水百選に認定されたもの。

 

全国駅弁グランプリに輝いた「有田焼カレー」は必食/創ギャラリーおおた 本店

 

有明海や玄界灘の海の幸に、地産の山の幸を使った料理を有田焼の器で召しあがれ/日本料理 保名

 

佐賀牛を使った肉料理が評判のお店/和食処赤絵

写真:亀川涼、6photo