金融の街に誕生したモダンとクラシックが融合したおしゃれ空間

おいしいベーカリーは街を楽しくしてくれる。2022年12月、金融の中心地でもある日本橋兜町にオープンした「Bakery bank(ベーカリー バンク)」もそんな存在だ。オーソドックスでありながら独自の個性を持つパンは、界隈で働く人々のみならず、パン好きの人たちの心をがっつり掴み、遠方からわざわざ訪れる人も絶えない。

建物の前部分を少しセットバックし、店舗前の空間を広げている。街の人々の憩いの場になってほしいという思いからの発想だ

「ベーカリー バンク」があるのは、銀行だった建物をリノベーションし、ビストロやカフェなどが融合した施設「BANK(バンク)」。入口にある樹齢1000年というジブリの映画に出てくるようなオリーブの樹が遠方からも目を引く。

古さと新しさ、硬い素材と柔らかい素材をミックスした独特の空間がおしゃれ

建物のいかめしいドアを開けると、古材やむき出しのコンクリート、レンガなどにモダンな家具を配したどこか懐かしさを覚える空間が広がる。その空間に満ちているのが、オープンキッチンからあふれる焼きたてパンのなんとも口福な香り。アンティーク風のガラスのショーケースの中には、見目麗しいパンがぎっしり並び、パン好きにはたまらない光景だ。

仕掛け人はマルチな才能を持つ人気パティシエ

近年、次々とセンスの良いショップがオープンし、注目を集めている日本橋兜町。その一翼を担っている仕掛け人であり、食の複合ショップ「BANK」をプロデュースしたのが、パティスリー「ease」のシェフパティシエ大山恵介さんだ。

大山さんは、都内の名パティスリーのみならず、フランスでも修業を重ね、福岡や都内のレストランで名パティシエとして活躍。独立後に日本橋兜町に「ease」を開いた。店舗運営の傍ら、店舗のプロデュースやオリジナル商品の開発を手掛けるなど、パティシエの枠にとどまらないマルチな活躍ぶりが、常に注目されている。

大山さんはパティスリーを開く前からずっとベーカリーをやりたかったという。これまでもクロワッサンに取り組んだり、天然酵母も育てたりするなど、いつかベーカリーを開くためのノウハウを積んできた。そして、長年のパン作りへの思いが詰まった「ベーカリー バンク」が誕生した。

オーソドックスに個性をひとつまみ! 唯一無二の味わいのパン

店頭には、ハード系やデニッシュ、総菜パンなど平日で常時36~40種類、週末・祝日なら55種類を用意。テイクアウト専門だが、買ったばかりのパンを座って食べることができるテーブルも2つ用意されている。

「ベーカリーバンク」のパンの魅力は正統派パンにリスペクトしつつ、大山さんらしいひとひねりした個性を加えていることだ。

「BANK」(ハーフ)950円

高加水、低温熟成発酵という同店のこだわりを表現したのが、シグネチャーでもあるサワードゥ「BANK(バンク)」。

独自に育ててきた天然酵母を使い、粉は力強い味わいがある石臼びきのグリストミルと、北海道産キタノカオリの全粒粉をブレンド。低温熟成発酵させた生地を高温で一気に焼き、そこから温度を下げるという独特の焼き方で、表面は薄くカリッとし、中は指で触ると生地が吸い付くほどしっとりしたパンが生まれる。

ベースのサワードゥに様々な具材を混ぜたものもラインアップ。写真は「枝豆ベーコン」「コーンとブルーチーズ」

酸味はマイルドで、ほんのりと小麦の甘さが香る。モチモチ食感のパンは口どけが良く、いろいろな料理と相性が良さそう。洋食だけでなく、和食にも合わせたくなる。

あんこ好きのハートを射止めるあんバター

「あんバター」400円

オープン以来の人気者なのが「あんバター」。パンは「あんバター」に合うように生地を調整した全粒粉のパン。湯種を用いてモチモチ感をアップし、フワッとした軽さもある。

砂糖ではなくザラメを使ったあんはコクがありつつも上品な味わい

魅力の秘密は品の良いあんと、まるで餅のような食感のパンにある。あんは、職人手作りのあんが評判の老舗の製あん所「木下製餡」に特注。豆の粒感もしっかりありながら、すっきり上品な甘みのあんは、あん好きも納得のおいしさだ。バターもこのあんにあわせ、あっさりした味わいの発酵バターを選んでいる。

人気商品なので、週末などでは早い時間に売り切れてしまうこともあるのだそう

噛んだ時ムニュッと伸びるパンが餅を思わせる食感で、まるで和菓子を食べているような心地がする。あんとバター、パンの3つの味わいのハーモニーが絶品でやみつきになるおいしさだ。