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昼飲み、スパイス飲みにうってつけの料理と酒がここに
野菜も料理も日本酒も、季節感を何より大切にする「タベカレー」。カレー細胞さんがぜひ味わってほしいとすすめる、定番カレーにミールス、スパイス飲みにぴったりなお酒がこちら。
偶然のうっかりが生んだ看板メニュー「こがしキーマ」
その日提供するカレーはSNSで発表。ある日はミールス、ある日は二種盛りカレー、ある日は副菜なしのカレーライスなど、変化とバラエティに富むこの店で、不動の定番となっているのが「こがしキーマ」だ。
カレー細胞さん
「お!」と気づく方もいると思いますが、このカレー、実は埼玉屈指の名店「negombo33」の傑作ラムキーマのインスパイアカレーなんです。ちなみに「negombo33」店主の山田さんも了承済み。ラムを合い挽き肉に置き換えて、オリジナルな味わいにチューニングしています。
「negombo33」のレシピを参考に田部さんのアレンジを加え「当時勤めていた居酒屋から自宅に帰ることが楽しみになるほど、毎晩毎晩、暇さえあれば作っていた」というキーマカレー。
「ある日、自宅で作ったキーマカレーを炒めていたら、うっかり焦がしてしまって。失敗作だけど食べてみたら、思いのほかおいしくて。それが今提供している『こがしキーマ』の元になりました」と田部さん。
ホールスパイスの香りを油に移し、肉、野菜、たっぷりのニンニク、生姜を加えて煮込み、赤ワインを足して肉の脂が出てくるまでさらに煮込んだら、一晩寝かせ、味を落ち着かせたらできあがり。注文が入るごとにフライパンで炒めて「こがしキーマ」に仕上げて出してくれる。
細長いお米は、インドやネパールなどで親しまれる高級米、バスマティライス。炊飯器は使わず、本場と同じ「湯取り法」で、鍋に沸かした湯でゆでるように炊くのだが、これがクセがなくさっぱりとした味わいで、濃厚かつ複雑な「こがしキーマ」に実によく合う。ご飯が足りなければ無料でちょい足しもOKだ。
カレー細胞さん
凝縮された肉の旨味とブラックペッパーをはじめとした濃厚なスパイス感。どんな日替わり料理と合わせても「あ、タベカレーの味だ」って思えるインパクトです。何よりこれ単品で日本酒の肴にもなっちゃう濃厚さです。
混ぜて味わうことでおいしさ倍増!「川越の季節野菜のミールス」
「タベカレー」の真骨頂とも言えるのが、野菜メインの定食ミールスだ。まず中央にバスマティライス、その上にのっているのは豆粉のおせんべいを油で揚げた「パパド」。手前に並ぶのは、スパイスとココナッツで作った和え物のような「ココナッツチャトニ」「大根のウールガイ」、ココナッツの繊維でキャベツを炒めた「キャベツのポリヤル」。
カトリと呼ばれるステンレスカップに入っているのは、スパイスと塩、ヨーグルトを使った「リンゴのライタ」、ダル(豆)と野菜の煮込み「カブのクートゥ」、野菜のカレー「サンバル」、タマリンドの酸味と黒コショウを利かせたトマトスープ「ラッサム」。実に多種類の野菜が使われている。
日本では「三角食べ」と言って、米、汁物、副菜を均等に少しずつ食べていく食べ方が浸透しているのだが、ミールスでこれをするのは御法度、ミールスならではの醍醐味を味わえなくなってしまう。
ミールスは、さまざまな副菜をライスにかけて混ぜ合わせることで、塩味・酸味・甘味・苦味・辛味の五味を楽しみながら味わう料理。「甘酸っぱい、しょっぱい、辛いなど、自分好みにコントロールして楽しむ感じですね。季節の食材によるさまざまな組み合わせに可能性を感じたのも、ミールスを提供するきっかけの一つです。パパドは砕いて、ふりかけのようにかけるといいですよ」(田部さん)
料理との相性を考え選び抜いた、秘蔵の日本酒
ランチ間借りが基本の営業スタイルにもかかわらず、日本酒が充実しているのも「タベカレー」ならではの特色だ。
田部さんが選ぶ基準は「飲み疲れしすぎない」「香りが強すぎない」「ベタベタしない」「特徴に面白さを感じる」酒。「なんとなく仕入れているものは1本もありません」と、全国から一本一本、明確な目的をもって仕入れており、出身地・会津の酒は特にレアなラインアップを誇る。
「日本酒を扱うお店では冷やがメインであることが多いと思いますが、うちでは冷や、常温、お燗酒向きのお酒、すべて対等に取り揃えお客様におすすめしています。その日のカレーや料理に合わせたペアリングはもちろん、お客様の好みに合わせたご提案もさせていただいています」(田部さん)
カレー細胞さん
近年のトレンドでもある「スパイス呑み」、中でも注目されているのが日本酒とのペアリングなのですが、この店はまさにうってつけ。カウンターメインの小さなお店なので、店主からの説明もマンツーマン。店主に聞けば奥からとっておきのお酒が出てくるかも。
「コエドビール」の生が飲める! 限定醸造品に出合えることも
川越の地ビールと言えば「コエドビール」。県外のスーパーや酒店などで見かけることもあるが、生の「コエドビール」にはなかなかお目にかかれない。
「コエドビール」の樽生は、品質管理が厳しく冷蔵が求められるため、川越でも限られた店舗しか卸されていないそうだが、そのうちの一軒がここなのだ。味わえるのは、赤みがかった深い黄褐色の色と香りから名付けられた「伽羅」。上品なホップの香りとビターな味わいで、飲み応えがありながら心地よい後味が広がる。
運とタイミングによるのだが、スペシャルティコーヒーの専門店・堀口珈琲とのコラボによる「克一黒-Kokuikkoku-」のような限定醸造品に出合えることもある。
カレー細胞さん
東京ではあまりお目にかかれない限定ものに出合えるかも?
自分だけの体験を積み重ね、“厚み”のある料理と酒を提供したい
川越駅から徒歩5分とアクセス良好ながら、落ち着いた街の一角にある「タベカレー」。小さな空間ではあるが、そこには「食べた後に体がラクに、自然と心地よくなるような料理を楽しんでほしい」と願う田部さんの、大きく温かな思いがあふれている。
偶然から生まれた「こがしキーマ」と季節を感じるミールス、こだわりの日本酒とのペアリングは、ここでしか味わえない体験。川越まで足を運ぶ価値がある「タベカレー」、ぜひ訪れてほしい。