「食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに、デイリー使いできて満足度も高い、東京の“料理がおいしい酒場”を教えてもらう連載! 第8回は、浅草にあるモツ料理の名店「喜美松」のおいしいポイントを教えてもらいます。
【東京メシうま酒場 vol.8】「喜美松」(きみまつ)
浅草でも、観光客で賑わう仲見世エリアとは対照的に、落ち着いた雰囲気の名店が集まる浅草寺の裏手、通称・裏観音エリア。
こちらに店を構えて50年近くという、モツの名店が「喜美松」。夜の町にくっきりと浮き上がる赤提灯と、味わい深い独特な丸いフォルムの入り口が目印。
まずはビールか、それとも焼酎から始めるか、と1杯目のお酒を悩んでいると、壁に見慣れぬメニューが。
果実酢と生ビールで、酢ッビー。
聞きなれない名前だけど、モツを食べる前に飲んだら、スッキリしておいしそう。 ということで、ざくろの酢ッビーを注文。
生ビールにざくろのフルーツビネガーが混ぜてある琥珀色の酢ッビー。藍色のグラスとの色の組み合わせもキレイ。
飲んでみると、ビネガーの酸味と甘みがビールとよく合い、実に飲みやすくておいしい! シャンパンやカクテルと同じ感覚で食前酒にぴったりです。
まずは、こちらに来たら絶対に食べたい、ゆでモツ刺し。お一人客向けに、刺しはすべて半人前に対応してくれるのもうれしいです。
さらに、お願いすれば1/4人前ずつで全種類の盛り合わせも作ってくれます。ということで、メニューには書いていない、1/4人前全部盛りを。
はつ・たま・たん・がつ2種・レバー・子袋・しろの豪華8点。
タレは、醤油ににんにく・からしと、酢みその2種類。
薄ピンク色の子袋のコリコリの食感。赤みがかった、たんやはつはあっさりした旨み。とろっとろのレバーは濃厚なおいしさ。どれも新鮮そのものです。
さらに肉の下にたっぷりと敷かれたオニオンスライスがまた良い仕事をしてくれます。薬味としてモツと一緒に食べるとモツの旨みだけがぐっと引き立ち、これは絶対焼酎に合うやつです。
ということで、すかさずホッピーセットを注文。と、やって来たのがこの2本。焼酎すごい量です! さらに「コップに氷は入れますか?」と。この量の焼酎を、氷で薄めず飲むのが下町流なんです!
もちろん氷を頼めば後からでもくれますし、焼酎の量は自分で調節できるので、ご安心を(僕は氷無しの焼酎激濃い目でいきました!)。
ゆで刺しを全種類しっかり堪能した後は、ひたすらお店の自慢の豚料理をいただいていきます。
豚バラ肉を低温でじっくり調理した「㐂美豚刺し」は、わさび醤油とワインビネガー醤油の2種類で。
生ハムのような味わいのバラ肉がワインビネガーにめちゃくちゃ合う!「これは絶対ワインに合う」という常連さんからの要望で、オーガニックワインをメニューに取り入れたそう。
ビールから焼酎・日本酒・ワインまで取りそろえている名居酒屋ながら、なんとご主人は「僕はお酒飲めないんだよ(笑)」と、意外な一言。なので、料理に合うお酒のセレクトはよく知る酒屋さんに任せているのだという。
なるほど、旨い料理にこだわり、お酒はお酒の専門家に任せる。考えてみれば、フレンチやイタリアンに専門のソムリエがいるのと同じ道理。実はこれこそ居酒屋の最良の形の一つかもしれません。
ジューシーな豚肉とさっぱり飲みやすいオーガニック赤ワインの組み合わせが絶妙です。
名物のつくね三姉妹は、豚つくね、鳥つくね、おやじだんごの3種のつくね。
おやじだんごは、豚つくねにピーマン・にんにく・唐辛子が入った特製つくね。味わい深い豚に、あっさりの鳥、独特の風味がクセになるおやじつくね、三者三様の味が楽しめます。
そして、やきとんといったら僕が絶対頼む、なんこつ!
歯ごたえがしっかりありながらも、硬すぎず食べやすいのは新鮮かつ火入れが完璧な証。豚肉の専門店だけあって、部位ごとの扱いが見事なのです。
日本酒は可愛らしい鳥の柄をあしらった徳利から。最初の酢ッビーといい、酒飲み(と、そこまでお酒を飲めない人)が、ちょっと楽しくなるような仕掛けがあちらこちらにあるのがうれしいです。
ご主人が「お酒に合うから、これもぜひ!」と出してくれたのが、自家製のレバーの風干し。ゆで刺しで出てきたレバーを干した一品。
水分が抜けて、濃縮したレバーの旨みと風味がたまりません。これぞ最高のお酒のアテ! 豚のおいしさを余すところなく味わえて、大満足。
最後はテイクアウト用に、自家製の「なんこつカレー」を。
こちらはスパイスの調合からやっていて、シャバシャバでスパイシーな本格派。飲んだ後に最高のカレーです。
町の居酒屋という気軽な雰囲気ながら、専門店だけあって一つ一つの料理のクオリティが最高。豚のおいしさをしっかり堪能できる名店です。
※価格はすべて税込