〈食いしん坊が集う店〉

食べることが好きで好きで、四六時中食べ物のことを考えてしまう、愛すべき「食いしん坊」たち。おいしいものが食べたければ彼らに聞くのが間違いなし! お気に入りの“とっておきのお店”を教えてもらった。

教えてくれる人

マッキー牧元

株式会社味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチ、エスニック、スイーツに居酒屋まで、年間600回外食をし、料理評論、紀行、雑誌寄稿、ラジオ・テレビ出演。とんかつブームの火付役とも言える「東京とんかつ会議」のメンバー。テレビ、雑誌などでもとんかつ関連の企画に多数出演。

「バー ランドスケープ」

銀座は、背伸びを教えてくれる街である。だから今まで、数多くのバーに通った。老舗格のバーにビビりながらうかがい、新しいバーで刺激を受け、60軒近くは行ったのではないだろうか。だが最近は、もっぱらこの店にしか行かない。気がつくと、足は「ランドスケープ」に向いている。なぜなら、どのカクテルも格別に素晴らしいからである。

マッキー牧元さんおすすめ3品

ジントニック

カクテルで、まずおすすめは「ジントニック」である。ご存じのように「ジントニック」は、ジンとトニックウォーター、ライムジュースによるカクテルである。だがこのカクテルは、果てしなく深い。「ジンの選び方、トニックウォーターの選び方、ジンは冷凍庫に入れるのか入れないのか、氷の大きさ、個数、組み方、注ぎ方、注ぐ順番、グラスの選び方、ライムの搾り方、ステアの速度や回す回数など数多くあります」。そうバーテンダー松尾民子さんは語られた。

見ていると氷は4個入れ、隙間なくぴっちりと組まれている。ステアしても氷が遊ばず、溶けないようにだろうか。ライムは、皮のえぐみが出ないよう、果実のところだけを搾り器の先にあてがって、それを回しながら搾り、最後は手で優しく搾る。トニックウォーターは、氷に当てないように入れ、ゆっくりとステアする。こうして神経を注いだジントニックが、バカラのグラスの中で輝いている。

飲めば、ジンとライムがやって来て、後から炭酸が追いかける。ライムの爽やかな香りとジンのたくましさを、炭酸と甘みが痛快に持ち上げる気配があって、しみじみとおいしい。このカクテルの爽やかなおいしさが体に染み入るはずである。

ラスティネイル

ほかで僕がよく頼むのは「ラスティネイル」というカクテルである。スコッチウィスキーとアマレットを混ぜたロングカクテルだが、注ぎ方と氷の形状、ステアの仕方に工夫がある。その結果スコッチとアマレットがミルフィーユ状に重なり、氷に触らずに静かに飲めば、両者の香りが次々と舌に重なって、夢見心地になれるのである。食事の後にこの店に寄った時は、よく頼む。

飲んでいると、なにか楽しかった食事時間の記憶が、甘く、切なくなっていく。そんなカクテルでもある。

ジャックローズ

女性と一緒なら「ジャックローズ」を彼女に頼むのもいい。とりわけぼくも、この店の「ジャックローズ」は素晴らしいと思っている。

今の時期なら生のザクロを搾ったジュースを使う。薔薇色に輝く液体に口をつければ、ザクロの甘酸っぱい酸味が広がり、奥にとけこんだカルヴァドスの濃密さが顔を出す。このカクテルを飲むと、夜の時間が色気を帯びてくる。