〈今夜の自腹飯〉

予算内でおいしいものが食べたい!
食材の高騰などで、外食の価格は年々あがっている。一人30,000円以上の寿司やフレンチもどんどん増えているが、毎月行くのは厳しい。デートや仲間の集まりで「おいしいものを食べたいとき」に使える、ハイコスパなお店とは?

「シュリシュリ」で修行したシェフ新田さんと森さんがタッグを組んだ店

 

ガラス張りの外観の右下に注目! 小さなプレートがこの店の看板だ。

乃木坂、青山一丁目、赤坂、それぞれの駅から徒歩10分ほどの場所にある「Filemone」。閑静な住宅街の一角にあるこの店は、全面ガラス張りの外観が目印だ。

上の写真を見てほしい。看板らしきものが見当たらない? いや、ガラスの壁面の右下をよく見ると、石の台の上に白地にブルーの文字で「Filemone」と書かれたロゴがあるのがわかるだろう。控えめな看板になっている。

シェフは「シュリシュリ」で7年、研鑽を積んだ新田大介さんが務め、サービスは森裕太さんが担当している。「ドンチッチョ」と、姉妹店の「シュリシュリ」は青山にあるシチリア料理の草分け的存在の店。東京のイタリア料理好きに長年愛されてきた名店だ。

山梨県出身の新田さんと、長崎県出身の森さん。魚は長崎県五島列島から仕入れ、野菜は山梨県産の物を使うことが多いという。しかも可能な限り、生産者の元へ足を運んでいる。これもこの店のこだわりだ。

カルパッチョは五島列島直送の神経締めした鮮魚

カルパッチョは季節によって魚種がかわる。この日は鰹。

同店のメニューはアラカルトがメインで、新鮮な素材をイタリアの郷土料理に落とし込み提供している。

この日のおすすめ冷前菜は「長崎産 鰹のカルパッチョ」。五島列島から仕入れた鰹は、現地で神経締めして送られてくる。そんな新鮮な鰹は表面を軽く炙って香ばしくしたあと、ハーブとトマトソースと合わせる。

ふんだんに使ったハーブの香りがアクセントの一品。

そこにチャービル、ディル、穂紫蘇などのハーブを惜しげもなくトッピングすると、白い皿の上に赤と緑が映えた、彩り豊かな一品が完成する。

モチッとしたクレープの中から、ホワイトソースがとろ~り

アツアツのうちに食したい「ポルチーニ茸のクレープ 伊産黒トリュフ」。

温前菜のおすすめを森さんに聞くと「ポルチーニ茸のクレープ 伊産黒トリュフ」と教えてくれた。モチモチのクレープの中には、ポルチーニ茸のソテーと、ベシャメルソース。そこにリコッタチーズの酸味を加えて、重すぎないようにしている。仕上げにはトリュフをかけて香り高い逸品だ。

黒トリュフをトッピングしたぜいたくなクレープだ。

濃厚なソースがよくからむ、太めの手打ちパスタ

縮れた手打ち麺「トンナレッリ」は、パスタソースによくからむ。

イタリアンと言えば、パスタは外せない。
同店の人気は、有明海の特産「竹崎カニ」をふんだんに使った「竹崎カニと完熟トマトソースのトンナレッリ」。
有明海の干潟に生息するプランクトンや小魚などを食べて育った「竹崎カニ」は、カニの肉や味噌がたっぷり詰まっているのが特徴だが、その中でも雄に比べて1.5倍ほど大きい雌のカニのみを仕入れている。

この時期人気の「竹崎カニと完熟トマトソースのトンナレッリ」。

シェフが打つ麺は、太く四角い断面でソースがよく絡むよう表面がざらついていて弾力がある。使う卵は、富士山の伏流水で有名な、忍野八海で育ったにわとりから採取したもの。

フォークで麺を巻き上げると、カニの身や味噌、トマトソースがたっぷりからみつく。口に運ぶと味覚、食感、匂い、すべてが申し分ない濃厚な味わいだ。