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素材と技の集大成! 大木さんが愛してやまない料理の数々
香りと旨みが爆発的に広がるビステッカ「骨付き牛ロースの網焼き」
大木さん
現在使用しているのは北海道白老牛。赤身の美しさに目を奪われます。外はしっかりと焼き切りながら、中はしっとり。塩味だけでこれほど旨いのかと唸りつつ、一気に骨までしゃぶりつくすほど。必ず骨にも齧り付いてください。ここに付いている肉も抜群にうまいんです。
イタリア直輸入の素材を香り豊かに仕上げた「朝鮮アザミのケッパーソース」
大木さん
オーブンで焼いたような香りがただよいますが、アーティチョーク(和名は朝鮮アザミ)を茹でた料理です。発酵バターとアンチョビのソース、ケッパーとのバランスが最高で、ワインが進み過ぎます。
新型コロナウイルスの影響で一時は空輸が難しかったというイタリア産アーティチョーク。レモン水に漬け込みアク抜きをしてから軟らかく煮込み、その茹で汁に漬け込むことで、素材本来の魅力を活かしつつ端正な風味に仕上げている。春の食材らしく心地よい苦味が印象的。層状に重なったツボミの食感も、春の訪れを連想させる。
パルマ産プロシュートの旨みを活かした「手打ちパスタのアマトリチャーナ」
大木さん
猪狩シェフはビステッカだけでなく、手打ちパスタの名手としても評判です。弾けるような食感の手打ちパスタにトマトソースとチーズが絡まり、うまい理由しかありません。
本来は塩漬けの豚肉(パンチェッタ)を具材にするが、猪狩シェフの場合はパルマ産24ヶ月熟成のプロシュートでも、もっとも旨みが出るという脚の付け根まわりの肉を使用。3時間ほどかけてじっくり煮込み、熟成された旨みを抽出することで、シンプルなトマトソースの味を深めている。なお、現在はアフリカ豚熱の影響でイタリア産の生ハムが一時的に輸入禁止となっており、このメニューもいつまで続けられるか分からない状況という。
味と食感の絶妙なバランスで成立している「カラスミ、ニンニク、赤唐辛子のスパゲティー」
味の決め手はサルデーニャ島のボッタルガ・ディ・ムッジネ(ボラのカラスミ)。パスタの茹で汁とオリーブオイルを乳化させたソースに各素材の風味が染み渡る。時間経過とともに味と食感の絶妙なバランスが崩れていくため、できるだけ早めに食べきることを推奨したい。
「中途半端な料理は出しません。そのための良い食材が段々と手に入りにくくなって……いつまで続けられるのか」と現状を嘆く猪狩シェフ。レジェンドが手掛けるイタリアン、末永く楽しめることを切に願うばかりだ。