【肉、最前線!】

数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!

 

連載9回目に登場するのは、“復活オープン”を果たしたアメリカンスタイルのローストビーフの名店! 流行中のクラフトジンと極厚カットのローストビーフを合わせることで生み出される、旨みの幅が広がるマリアージュに注目だ。

Vol.9 意外でクセになるマリアージュ!肉とジン編

クラフトジンブームが世界的な盛り上がりを見せている。日本でも今年の夏に、大手酒販メーカーが続々とクラフトジンを発売し、話題を呼んだのは記憶に新しい。ジンといえば、トニックウォーターとライムを加えたジントニックが有名だが、クラフトジンの魅力は個性が豊かで、さまざまな食事に合わせやすいという点にもある。

 

クラフトジンが世界的ブームとなった背景には、クラフトビールやウイスキーなど造り手の個性が見える“クラフト”人気が高まったことが大きい。クラフトジンの定義はジュニパーベリー(ねずの実)を使用することのみで、蒸留期間も短いためスピリッツのなかでは比較的、参入しやすいマーケットということも、クラフトジンブームを巻き起こした一因として考えられる。

写真:ロウリーズ・ザ・プライムリブ赤坂

 

お酒と食事の組み合わせとしては少々、意外に感じられるかもしれないが、その新しいマリアージュを体験できるのが、この9月に赤坂に“復活オープン”した『ロウリーズ・ザ・プライムリブ』だ。

 

1938年、ロサンゼルスのビバリーヒルズにプライムリブの専門店としてオープン。日本では、2001年に赤坂に上陸を果たし、極厚カットのローストビーフや、絢爛豪華な空間、エンターテインメント性溢れる演出で大きな話題を呼んだ。赤坂ツインタワーの建て替えにより、2014年に惜しまれつつも閉店。同年、恵比寿ガーデンプレイス内に再オープンした際は、ファンの心を大いに沸かせたが、今回の赤坂復活もまた、当時の『ロウリーズ』を知る人々にとっては、嬉しいニュースといえるだろう。

クラフトジン850円~

 

新生『ロウリーズ』としてオープンするにあたり、バーメニューを強化。クラフトビールやワインのラインアップも充実しているが、とくに注目すべきはやはり、クラフトジン。昨年リリースされ、瞬く間に人気ジンの仲間入りを果たした京都の季の美や、製造工程の一部で純金のポットスティルが使われるというゴールド999.9など、個性豊かなクラフトジンを取り揃えている。

プライムリブ(ロウリーカット)6,900円

 

特製スパイスを塗り、低温でじっくり焼き上げる『ロウリーズ』のプライムリブは一度食べたら忘れられない芳醇な旨みが特徴的だが、ハーブや柑橘系の果物を用いたクラフトジンとの相性は想像以上。とくに、イングランドの小規模生産の蒸留所で造られるタークィンズ・ハンドクラフティド・コーニッシュ・ドライ・ジンは、コリアンダーやカルダモン、シナモンなどを配合。ややスパイシーでドライな風味が、旨み濃厚なプライムリブにぴたりとハマる。

タークィンズ・ハンドクラフティド・コーニッシュ・ドライ・ジン 1,000円

 

食前にバーラウンジでゆったりとクラフトジンを飲んでからメインダイニングで食事をするも、食中にさまざまなクラフトジンとプライムリブの相性を楽しむもよし。肉とジンの意外でクセになるマリアージュがいま、日本でも本格ブームを迎えようとしている。

 

 

ロウリーズ・ザ・プライムリブ 赤坂店 TEL 03-5545-1429

写真:富澤 元
取材・文:小寺慶子