〈食べログ3.5以下のうまい店〉

「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて言う人もいるが、それは東京や大都市の話。

口コミ数が比較的少ない地方都市では、「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことも十分あり得る。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、サガワねこさんが「糸満屋」を紹介する。平日の夜もきっちり満席になる地元で大人気の居酒屋より、ぜひ食べて欲しいメニューをピックアップした。

教えてくれる人

サガワねこ

沖縄の新タウン情報メディア「ふらびゅう沖縄」編集長。タウン情報誌「おきなわ倶楽部」や「沖縄JOHO」編集部に勤めた経験を元に、フリーライターとしても活動し、企画・執筆・撮影・デザイン・SNS運用の全てをこなす。長年バンド活動をするほど音楽好きなことから、インタビューやライブレポを得意とする。唐揚げとラーメンを愛するがゆえに、万年ダイエットと向き合っている。

“普通の上等”を続けて30年、3代目が守る老舗「糸満屋」

夕方の早くからオープンし、ピークが19時前後というのは、愛される居酒屋の証ではないだろうか。取材中、17時はまだ先なのに何組もの人が「今日はまだ?」「もう入れる?」と訪れる人気ぶり。これでも休業期間の影響で、客足は減ったと言うのだから驚きだ。この地域で最も予約が取れない居酒屋として有名な「糸満屋」は、他店にない特別な何かがあるわけではない。変わった料理を出すこともない。誰もが求める“普通の上等”を守って30年、ただ丁寧に接客し、その日のおいしい物を出し続けてきた名店だ。

食べログでの点数は3.15だが、世代を超えて愛される雰囲気と、いつでも食べたいフワフワのアレについて、ご夫婦で切り盛りする3代目店主に聞いてきた。

那覇市のど真ん中で営業、そこは地域みんなの我が家かもしれない

カウンター、座敷、テーブル席、自分の寛ぎ方で選べる

ワンホールになった店内は手書きメニューやレトロな映画看板、酒造メーカーのポスターが貼られ、初めて来た人でも懐かしさを感じる造り。店奥には15名ほど入れそうな個室も1つある。今でこそ、ゆったり配置されたテーブルだが、2年前まで全席が相席のようにギッシリだった。それでも週末はなかなか予約が取れないと、この地域では有名だ。

沖縄ではよく見る琉装美人のポスターも
お客さんから贈られたものだという映画看板

大半の客は歩いて通うご近所さん。仕事帰りの男性が多めだが、年代は幅広く、中にはここで顔なじみになり待ち合わせる人も。実はこの場所で営業を始めたのは数年前で、元の店舗で急な立ち退き要請があり、急いで引っ越し先を探したそう。その時、再優先したのは広さでも価格でもなく、常連さんが変わらず通える場所であることだった。

 

サガワさん

店名の「糸満屋」は初代オーナーが南部・糸満市出身だったからだそうです。「なんで那覇の中心で糸満?」と不思議に思っている地元の人も多いかもしれません。3代目の新里さんは、店を受け継いですぐの引っ越しだったようで、当時は苦労も多かったと話してくれました。

2人で店を切り盛りする新里夫妻

馴染みの居酒屋へ通う楽しみの一つは、「手書きの日替わりメニュー表」ではないだろうか。ここに書かれる物は、季節ならではの味や、厨房に立つ人が今一番食べて欲しいと思っている自信作。「ポークの天ぷら」や「支那そば」など、沖縄の家庭料理も肩を並べている。

手書きの「本日のおすすめ」