【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#30】「喫茶 壁と卵」
幡ヶ谷という街をご存じでしょうか? 新宿にも下北沢にも近く、商店街もあって非常に住みやすい街です。個人的にはカレーのおいしいお店や素敵な喫茶店も多いというのが、幡ヶ谷が魅力的に感じる重要なポイントなのですが、そんな幡ヶ谷にカレーがおいしい喫茶店が移転してきました。その名も「喫茶 壁と卵」。
新代田からのお引越しで、2021年5月に幡ヶ谷での開店となりました。住宅街の中に佇むお店は、新しいお店ながら昔からそこにあったような温かみのある雰囲気を感じさせます。入店と同時に手洗いのお願いがあり、しっかりと手を洗ってからの着席。このご時世の中ではむしろ安心感があって良いですね。
この日のカレーのメニューはポークビンダルーとチキンカレー。一般的に無難なチキンカレーをメニューの最初に持ってくるお店が多い中、こちらはポークビンダルーが先にあります。ということはこちらが看板ということでしょう。他のお客さんからの質問に対しても「ポークビンダルーはインドのゴア地方の名物料理で、酸味と辛味のあるカレーです。好き嫌いはあるので食べやすいのはチキンカレーの方かもしれません」と丁寧に説明されていました。
僕は大好きですから「ポークビンダルー」1,100円をいただくことにしました。せっかくの喫茶店ですから「コールドブリュー」550円と「マツェルトフ」450円も食後にオーダー。
レコードから流れる心地よいBGMにくつろぎながら店内を見ていると、石鹸が売られています。これはお店の方のご家族が化学物質過敏症を発症してしまったことから香害フリーのお店を目指し、お店でも洗剤は化学物質を使用せず、昔ながらの100%の無添加石鹸や重曹、クエン酸などでナチュラルクリーニングを行うようにしているのだそうです。同じ病気で苦しむ方の為にも無添加石鹸を販売しつつ、それによって化学物質過敏症を知らない方にもそれを認知してもらいたいという思いがあるようです。そんなお店ですから、香水は極力控え、タバコも吸った後に行かないなど、客側も配慮して行きたいものですね。
カレーも非常にヘルシーです。パパド(豆粉のせんべい)やポリヤル(南インドの野菜炒め)も一緒にのった一皿。シャープな酸味と豚肉の甘味やうま味が渾然一体となり、刺激はありながらも重くない、喫茶店のカレーとして理想的なものでした。
シェフご自身がカレー好きで10年程前からスパイスカレーを作り始め、人気店でも働いてその腕を磨いたそうです。だからこその本格的なおいしさなのですね。夢中になってカレーをたいらげたらデザートとコーヒーの時間。
まずコールドブリューを一口飲んでみると、軽やかで爽やかな酸味が印象的。マツェルトフとはスフレチーズケーキのしっかりしたものと言えばわかりやすいでしょうか。こちらもやわらかい酸味をほのかに感じ、カレー、コーヒー、ケーキで酸味の三重奏。あるいは酸味三昧。ひとくちに酸味と言っても様々で、多角的に「おいしい酸味」を味わうことができ、とても楽しい時間となりました。
コーヒーはバリスタチーム「私立珈琲小学校」から入手。スイーツは奥様が長年フランス菓子店に勤めていたそうで、だからこその丁寧な仕上がり。カレーもコーヒーもスイーツも全面的に信頼できる最高の喫茶店です。
まだ開店してからそれほど経っているわけでもないのですが、既に常連さんらしき方もちらほら見えたのは、お店が幡ヶ谷の街に早くも根付きつつある証拠でしょう。こんな素敵なお店が近くにある方がうらやましい。幡ヶ谷に住みたくなってしまいました。