9月14日~21日まで、マルイシティ横浜にて「月よりマッチョを見よう“おマチョ見”」が開催される。筋骨隆々のマッチョをお月さまに住むうさぎに見立て、その模様を愛でながらモチを食べるというあまりにキテレツすぎるイベントを企画したのは、株式会社ハイの鈴木秀尚代表だ。
過去に『マッチョバスツアー』『マッチョカフェ』『マチョ氷』など、さまざまなマッチョコンテンツを仕掛け、その度に大きな話題をさらってきた鈴木代表だが、さすがに今回ばかりはあまりにクレイジーすぎるのではないか――。
マチョ氷 in 丸井錦糸町の様子
その突拍子もないアイデアの源を探るうちに、食とエンタメが融合する醍醐味、そしてその裏にある法律的な問題などなど、我々が知らない“アイデア力”と“実現力”が展開されていることが分かった。
ヒントは今年の「中秋の名月」が9月ではないということ
―― 「月よりマッチョを見よう“おマチョ見”」ですが、具体的にどんな飲食イベントなのでしょうか?
まず最初に伝えたいことは、このイベントに関しては我々も、「もしかしたら爆死するかもしれない」という危機感を持っているということです。ですから、この記事を読んで関心を抱いた方は、冷やかしでもかまいませんから、とにもかくにもマルイシティ横浜まで足を運んでいただきたいということです。
――「マチョ氷」なら、マッチョが自慢の筋肉で豪快に氷を削るなどのイメージが湧きますが、「おマチョ見」は本当に意味が分かりません。一体、何を?
例えば、マッチョの上腕二頭筋を月に見立ててお餅を食べていただいたり、マッチョが餅つきをしている様を写真に収めていただいたり……自分でもびっくりするくらい頭が悪いことを説明しているという自覚はあるのでご安心ください。ちなみに、お餅は自分たちでついたものは販売できないので、市販のものになります。
――ということは、マッチョの方々がマチョ氷のように自慢の筋肉を使って何かを作るわけではない?
基本的にポーズを取るだけ、ということになりますね。
――相当リスキーな勝負に出ましたね。
と言っても、勝算がないわけでもなく。今年はお月見を楽しむ“十五夜(中秋の名月)”が、例年通りの9月ではなくて10月4日というイレギュラーな年なんですね。あまり知られていないので、9月上旬を過ぎたころに、「今年の中秋の名月は来月ということを知っていますか?」みたいなニュースや記事が登場するだろうと考えたわけです。
――なるほど。ネットニュースや夕方のテレビニュースで取り上げられそうなトピックですね。
「今年の中秋の名月は10月という珍しい年なのですが……実は! 例年通り9月でもお月見を楽しめる場所がマルイシティ横浜にあるんです。それがこちらの“おマチョ見”です!」と、カメラをパンしたら月に見立てたマッチョの力こぶがドーンッ!って映るという画が想像できたんですよ。これはそこそこ話題性があるだろうと。
月にマッチョがいるという仮説は立てられる
――今年7月に開催された『マチョ氷 in 渋谷マルイ』は、多くの来場者であふれかえり、他店舗からクレームが出るほどの盛況ぶり。鈴木社長の人に興味を抱かせる術は実証済みですから、「おマチョ見」ももしかすると、ですね。
もう一つ。何の脈絡もなしに月見とマッチョをクロスオーバーさせたわけでもないんです。インドの昔話「ジャータカ物語」を起源に持つと言われている日本の説話に、老人を助けるうさぎ、さる、きつねの話があります。老人を助けるために、さるは山で栗や柿を取ってきて、きつねは川で魚を捕まえてきましたという話……皆さんも一度は聞いたことがあると思います。
――たしか、非力なうさぎは何も獲れず、その身を燃え盛る炎に投じ、自らを捧げたというお話ですよね?
そうです。そして、その老人が実は神様だったため、この素晴らしいうさぎを月の国でいつまでも幸せにしてあげようと、今に到るまで伝説として語り継がれているわけです。でも、「本当にうさぎは幸せなんだろうか?」と考えたんですよ。僕がうさぎだったら、月に送ってもらったところで、自分の非力さを嘆き続けるだろうなって。むしろ、「非力なうさぎでも無重力だったら大丈夫だろう」みたいに思われて、なめられたんじゃないかと。悔しくて、悔しくて、絶対にトレーニングをして脱・非力を試みたと思うんです。“餅をつく”という行為は、うさぎが考案した上腕二頭筋や広背筋を鍛えるためのトレーニングなんじゃないのか、と。
――ジョージ・フォアマン(元プロボクサー)が薪割りトレーニングを行っていたように、うさぎも餅つきで筋力アップを試みていた……と?
時代が下って、どんどんパンプアップしたうさぎは、もはや原型をとどめていないほどにマッチョ化したのではないかと……そのうさぎの姿が、9月14日~21日までマルイシティ横浜で披露するマッチョです! ぜひ皆さん、お越しください!!
株式会社ハイ代表取締役社長の鈴木秀尚氏
――いつものことですが、鈴木社長のアイデア力には驚かされます。絶対に違うはずなのに、うさぎのマッチョ化に異常な説得力があります。
“こじつけ”であることは、ほかならぬ僕自身が一番分かっています。お客さんに楽しんでもらうためには、話題性が大事。話題性って、“誰かに言いたくなる要素”が多分にあることではないかと。どれだけくだらないことでも、人に言いたくなったら、それは楽しめる下地があるってことじゃないですか。でも、楽しませるためにクリアしなきゃいけないハードルも少なからずありまして……例えば、プロテイン。これが厄介なんですよね。
――厄介とは?
今回の『おマチョ見』では、飲み物としてだけではなく、お餅にプロテインをかけるサービスを検討しているのですが、各市町村の行政(保健所)によってプロテインの認識がさまざまなんですね。プロテインをかけることは、生クリームを上からかけることとイコールと考えるところもありますし、パウチしているか否かで是非が変わることもあります。また、プロテインが特殊な食材……つまり健康食品なのかそうでないのかに関しても自治体によって変わってくるんですよね。
【イベント概要】
開催日 2017年9月14日(木)~2017年9月21日(木)
開催時間 10:30~20:30 (最終日は19:30まで)
メニュー おマチョ見団子 500円/マチョ福 500円/プロテインセット 1,500円/マチェキ 1,000円など(すべて税別)
おマチョ見団子
後編は、マッチョ飲食イベントに紐づく条例や法律の話を紹介
「厄介なんですよね」と語るプロテインをはじめ、マッチョイベント開催に横たわる諸々の問題があることは、これまであまりクローズアップされてこなかった。
我々が面白イベントに対して「バカだな~」と笑って片づけることは簡単だ。しかし、企画実現のためスタッフたちが驚きの苦労をしていることを忘れてはならない。
後編では、知られざるマッチョ飲食に紐づく条例や法律のお話を紹介する。
取材・文:我妻弘崇(アジョンス・ドゥ・原生林)