フードライター厳選。特におすすめのイタリア料理店はこの3軒!

2021年3月8日、「食べログ イタリアン TOKYO 百名店 2021」「食べログ イタリアン EAST 百名店 2021」「食べログ イタリアン WEST 百名店 2021」を発表した。名だたる名店から新鋭シェフによる注目店まで300ものイタリア料理店が揃う中、まず行くべきはどの店か? 連載「森脇慶子のココに注目」でお馴染み、フードライターの森脇慶子さんに、とっておきの3軒を教えてもらった。

教えてくれる人

森脇慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

【1軒め】「ビンゴ」

赤い看板にBingoの文字。一見してイタリア料理店とは思えぬ外観のこの店が、手練れなグルマン達が訪れる美食の隠れ家だ。

ガレットブルトンヌ
出典:ガレットブルトンヌさん

(厨房では)強面の小林秀徳シェフが日々繰り出す料理は、例えば、この季節ならクリーム系は使わず、シンプルに玉ねぎの甘味を引き出した玉ねぎスープや炭火で軽く炙った旬の鳥貝の野菜ソースなど、季節感溢れる皿の数々が次々と登場。舌を飽きさせない。

撮影:森脇慶子

中にはソースはおろかオリーブオイルさえかけず、ただ炭火で焼いただけの天然鮎の塩焼きが堂々と供せられるなど潔いまでの素材主義。イタリア料理に固執せず、食材本来の持ち味を最大限生かしきるために最善の調理法ならジャンルを問わないという小林シェフのポリシーを象徴するかのような一品だろう。

撮影:森脇慶子

オーガニックトマトを食べて育った北海道よしもりまきばの「トマトひつじ」や小田原漁港直送の生しらす、そして、先の天然鮎も静岡・興津川や山梨・桂川川から届く活けもの等々、趣味の温泉旅のついで?に探しだす食材選びの成果がコース料理の随所に現れている。

撮影:森脇慶子

その素材を見抜く審美眼も確かだ。仕込みは最小限に抑え、客の食べる瞬間に合わせ、出来るだけ一から作る主義(しかもメニューも多い)ゆえ、時間に余裕を持って出かけたい。完全予約制。

【2軒め】「オストゥ」

ピエモンテの方言で「オステリア」(食堂)の意味を持つ店名の通り、北イタリア・ピエモンテ州の料理に特化したイタリア料理店。だが、店内を包むシックな雰囲気と郷土料理を忠実に表現しつつも、どこか洗練されたその味わいは、オステリアというよりもむしろリストランテに近いかもしれない。

タケマシュラン
出典:タケマシュランさん

オーナーの宮根正人シェフは、マントヴァで修業した後、ピエモンテ州バローロ村の一つ星リストランテ「ロカンダ・ネル・ボルゴ・アンティーコ」で5年間研鑽を積んだ経歴の持ち主だ。代々木公園近くにオープンして14年、実力派の一軒として変わらぬ人気を誇っている。

こぐまの森
出典:こぐまの森さん

ピエモンテの伝統的な詰め物パスタ「アニョロツテイ・ダル・プリン」やピエモンテ風内臓の煮込み「フィナンツェーラ」「牛頬肉のプラザード」等々ピエモンテの代表的な料理が並ぶ中、珍しいのはピエモンテのブランド牛「ファッソーネ」。赤身肉でありながら身が柔らかく脂肪分の少ないファッソーネ牛は、あっさりした中にも旨味が豊か。

こぐまの森
出典:こぐまの森さん

ヒレ肉のビステッカ他、人数が集まればTボーンの炭火焼も楽しませてくれる。また、(誤解を恐れずにいうならば)インスタントラーメンのそれを思わせる独特の食感のパスタ「タヤリン」も秀逸。シンプルにバターソースでいただくのが一番だが、晩秋の白トリュフと共にいただく一皿は、毎年足を運びたくなるおいしさ。本場アルバから取り寄せる白トリュフの料理も、ここ「オストゥ」のスペシャリテの一つだ。

【3軒め】「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」

オープンは2006年。その前身の外苑前「トンマズィーノ」時代から数えれば、およそ20年以上も前から、いち早くシチリア料理を標榜、現地の味を伝えてきたのが、石川勉シェフ。言わばシチリア料理の草分け的存在だ。

parisjunko
出典:parisjunkoさん

豊富なメニューに目をやれば、「シチリア風2種のカポナータ」や「カジキマグロの燻製カルバッツョ」「イワシとウイキョウのカサレッツェ」に「カヴァテッリのトラパー二風」etc。シチリアそのままの味がズラリと並ぶ。

りりた
出典:りりたさん

中でも個人的なおすすめは、「カジキマグロのパレルモ風炭火焼」だろうか。肉厚にカットしたカジキマグロにパン粉をまぶして焼いただけなのだが、これがしみじみと旨い。聞けば、パン粉にひと工夫。オレガノやペコリーノチーズ、トマトソースを隠し味に加えることで、さりげなく風味と旨味の底上げをしているのだ。焼き目も香ばしいそれは、がっしりとした食感に身のしっとり感。そして、肉を思わせる力強さとジューシーさが持ち味だろう。

カフェモカ男
出典:カフェモカ男さん

また、シチリアはパレルモの修業先「チャールストン ル テラッツェ」で、日々賄いで食べていたというトマトソースのパスタもさすがのおいしさだ。一見素っ気なくワイルドでありながら、味わいの奥底にどこか繊細さを感じさせるのは、外苑前「ラ・パタータ」のオープン当初から、平田勝シェフに師事していたゆえだろうか。

84年、23歳の時に渡伊。映画『ゴッド・ファーザー』に憧れて一路シチリアへ。パレルモのリストランテでの1年を含め、ボローニャやフィレンツェなどイタリアで3年間の修業を積んだ石川シェフ。彼がシチリアから持ち帰ったものは、料理や技術だけではなく“食事は楽しく”というシチリア人的考え方。そんな活気溢れるサービスとアットホームな雰囲気も、このトラットリアの大きな魅力にほかならない。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

文:森脇慶子、食べログマガジン編集部