新しいカフェが次々にオープンする中、実は「コーヒーってどこで飲んでも一緒」と思っている人も多いのでは? その答えは、もちろん「否」。カフェの在り方が多様化している今、オリジナリティ溢れる「わざわざ足を運びたい店」が全国に点在する。そんなコーヒーのある風景を求めて、カフェオーナーのリレー形式で店を紹介する新連載がスタート!

【コーヒーショップホッピング】

Vol.1 「コーヒー×モーニング」東京・代々木公園 Cafe ROSTRO(カフェ ロストロ)

第1回は渋谷駅から徒歩10分ほどの神山町・宇田川町エリアから代々木公園駅にかけて広がるおしゃれスポット、通称“奥渋”にある『Cafe ROSTRO(カフェ ロストロ)』へ。

2017年5月にオープンしたこちらは、コーヒー豆のロースト専門店として15年に渡りスペシャルティコーヒーを飲食店に卸している『ロストロジャパン』のアンテナショップ。まずは、代表を務める清水慶一さんにお話を伺ったので、コーヒーへの熱き想いからどうぞ!

コーヒーの理想の味を追求。本物の美味しさを知ってほしい

コーヒーマシン輸入販売会社を経てスペイン、アメリカのメーカーにも勤務した経験を持つ清水氏。スペシャルティコーヒー(※1)の生みの親Erna Kuntsen女史に師事し、コーヒー豆の厳格な格付けの技術を受け継いだ。SCAAカッピングジャッジ(※2)やQグレーダー(※3)の資格を有しており、その確かな技術と経験を生かして、生豆の仕入れから焙煎、カッピング、販売まで一貫しておこない、赤坂にあるフレンチの名店『コム・ア・ラ・メゾン』をはじめ数多くの飲食店にコーヒーを卸している。15年を経てカフェをオープンしたきっかけを聞いた。

 

「マシンの納品で様々な工場に行ったんですけど、スペシャルティコーヒーを謳いながら、実際は使っていないところが多くて。ブームになって言葉だけが先行。(スペシャルティコーヒーを)作った人の想いから離れてしまっているんですよね。それが喫茶店をやろうと思ったきっかけです。本当の美味しいスペシャルティコーヒーを知ってもらいたいです」

 

カフェ ロストロでは、本物の味をカジュアルに楽しめるテイクアウトとカスタマイズが魅力のイートインでメニューが異なる。今回は驚き満載のイートインメニューにフォーカスした。

 

※1  カップ・クオリティのきれいさ、甘さ、酸味、質感、地域特性の表現、後味の印象度、バランスなどの判定を経て、素晴らしい美味しさと評価されたコーヒ。国によって規定が異なる。

※2  現在は廃止となりQグレーダーに統合。

※3  正式名称はLicensed Q Grader。SCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)が定めた基準・手順にのっとってコーヒーの評価ができるとCQI(コーヒー品質協会)、場合によってはCQIとSCAAの両方が認定した技能者のこと

(参考:一般社団法人 日本スペシャルティコーヒー協会)

ドリンクメニューのないコーヒー屋

豆の購入も可能。酸っぱい、苦いにかかわらず、「甘さ」を感じられる焙煎を心がけている。

 

いざ店内に入ると、ずらりと並ぶコーヒー豆を前にして何を頼めばいいか分からず、焦った経験はないだろうか。ビギナーであればなおのこと、さらに追い討ちをかけるように、この店にイートインのドリンクメニューは存在しない。

 

「お客さんの好みを伺って、使う豆も挽き方も抽出方法も変えています。組み合わせは無限。普通に飲めればって言われることもあるけど、話を聞いていくとみんな自分の好み分かっていて。それを引き出すのもぼくたちの仕事。メニューがないことに、苛立ちではなく驚きを感じてくれるので嬉しいです」

 

表現は人それぞれだが、オーダーポイントは「ホットorコールド」「ミルクの有無」「苦い・マイルド・酸っぱい」「香りの強さ」など。詳しくなってくるとついやりがちな「原産国決め打ちオーダー」はおすすめしないとか。清水氏の経験と技術により、ビギナーからマニアまで幅広く対応できるのが強み。臆することなくイメージを伝えてみて。

店内のイメージコンセプトはすし屋?!

中央:代表の清水慶一さん。コーヒーに向き合う姿勢において敬重しているのは、銀座の名店『らんぶる』だと教えてくれた。

 

喫茶スペースで印象的なのが大きなカウンター。内装を担当したのは、裏原宿の店舗デザインを多く手がけるクリエーター集団「M&M」。依頼したイメージコンセプトは「すし屋」なのだそう。

 

「高級な鮨屋はメニューないですよね。お客さんの好み、体調、気分、仕入れ具合などで提供するものが変わるからコミュニケーションが必要。あと、仕込みの凄さです。日本人の『見えないところでやる美学』を大切にしたい」

ライブ感を味わえるのもカウンターの醍醐味。手動ミルで豆を挽く音が心地よく店内に響く。

 

さらに、すし職人に通ずるのが手仕事。

 

「従業員にも技・感覚・感性を磨いてほしいから、ドリップはもちろん、はかりやミルも手動。サイフォンも火力調整が必要なガス。クリエイティブに働いてほしいですね」

 

そんなクリエイションされたコーヒーは、まさに一期一会。「前に飲んだアレ」というオーダーは難しい。だからこそ、その日の自分に差し出されたコーヒーを味わうのは、想像以上に感慨深い。

左:ホットコーヒー(650円)のカップ&ソーサーは岐阜県多治見市でオリジナル食器を作る「ナカヤマ陶器」の1点ものが多い。

右:コーヒー氷を常備。表現したい味によって水氷と使い分けている

卸先の職人が作る美味しいものも届けたい。

コーヒー豆を卸している飲食店には職人が多いという。その熟練した技術によって生み出された「美味しいもの」を広めたい!と、カフェ ロストロとのコラボフードが実現。

 

「卸先さんが休みの日に食べに来てくれたとき、がっかりさせたくない」と、一見ふつうに見える付け合わせや調味料にも抜かりはない。そんな気合の入った「ここだけフード」はパンがメインなので、とくにモーニングやブランチにおすすめ。その魅力を余すところなくお届けするのでチェックして。

ROSTRO × パン・オ・スリール モーニングセット

トースト、サラダ、ゆでたまご、ヨーグルト、コーヒー又は紅茶 800円

※モーニングセットのコーヒーは数種類あるブレンドから選べる

 

渋谷・宮益坂にある人気店『パン・オ・スリール』の食パンを食べ応えのある3cmほどの厚さにカットしてトーストに。ふんわりした焼き上がりなので、厚切りでもペロリと食べられる。

 

「モーニングの内容は朝食べたいものをスタッフで話し合いました。昔ながらの喫茶店が好きなので、トーストとゆでたまごは外せないと。サラダとヨーグルトは女性スタッフの意見を取り入れています。飽きずに毎日でも食べたくなる、そんな純喫茶の定番はやっぱりおすすめです」

 

古き良きものを次の世代の人たちに伝えたいという清水氏の想いが込められたモーニングプレート。自家製バルサミコ酢ドレッシングや甘みが特徴的なマルドンの塩を添えるなど、さりげなく一捻り加えるのがロストロ流。

ROSTRO × POLDER BAGEL ベーグルサンド

ベーグルサンド(エッグorツナ)、自家製のピクルス&コーヒーゼリー、好みに合わせて作ってくれるコーヒー

又は紅茶 1,200円 ※11:00から提供可能

 

千葉県野田市にある『ポルダーベーグル』の薄焼きベーグルを使ったベーグルサンド。

 

「このベーグルは、たまご・牛乳・バター・保存料・添加物を一切使っていないんです。アレルギーを抱える職人が時間をかけて開発しているんで。食物アレルギーをもつ人にも安心して食べてもらえるし、何より美味しい! 正直ベーグルに興味がなかったぼくが言うんで本当にうまいですよ(笑)」

 

もっちり食感がクセになる薄焼きベーグル。野菜がたっぷり入ったツナのフィリングも嬉しい。

・11:00前でもベーグルが食べたいなら

モーニングセットのトーストをプレーンベーグルに変更可能。焼きが強めなので、外はカリッ、中はモチモチ。サンドの薄焼きとは違う食感を楽しんで。

ROSTRO × 五つのパンと二匹の魚 サンドウィッチ

サンドウィッチ(エッグorツナ)、ほかはベーグルサンドと同じ 1,200円 ※11:00から提供可能

 

埼玉県蕨(わらび)市にある地元民憩いのベーカリーカフェ『五つのパンと二匹の魚』の食パンを使ったサンドウィッチセット。

 

「2種類のたまごを使っています。出汁を利かせたたまご焼きと自家製マヨネーズで和えたゆでたまごと。マスタードは子どもも食べられるように辛さは控えめ。メーカーさんのものをブレンドして、さらにいろいろ加えて。味がぼやけてしまわないよう、組み合わせた隠し味で締めています」

 

出汁の味が消えないように、たまごに少しでも焦げ目がついたものは出さないという力の入れよう。少し甘みがあるしっとり生地とふわふわ食感のたまごの相性が抜群。

【番外編】クチコミで広がった濃厚珈琲ソフトクリームの人気がすごい!

濃厚珈琲ソフトクリーム(カップorコーン) 300円 ※10月頃まで提供予定 

自由にトッピングできるコーヒーパウダーもおすすめ。

 

期間限定のソフトクリームがクチコミで広まり、スイーツ専門店と思い来店する人もいるのだそう。「想定外の反響」と笑う清水氏だが、やはり試行錯誤を重ねた末の「本気ソフト」だった!

 

「ソフトクリームを出すと決めてから相当食べましたよ(笑)。うちのは油や添加物を使っていないから口どけがいい。そして、溶けても美味しいのが本物です!」

 

喫茶スペースでお腹と心が満たされたら、ソフトクリームを片手に奥渋を散策してみてはいかが

【次回予告】焙煎の世界チャンピオンが登場!

コーヒーを知り尽くした清水氏に紹介していただく「おすすめ店」のオーナーは、過去にWCRC(ワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ)で優勝した経験を持つスペシャリスト。どうぞお楽しみに!

 

 

取材・文・撮影 武田梨江