緊急事態宣言発令に伴う営業時間短縮の要請を受け、テイクアウトに注力する店が急増している。そこで、フードライター・森脇慶子が「お店ならではのクオリティの高さに注目!」と熱弁を振るう、テイクアウト特化編をお届け。今回は、チャーシュー丼、プルドポーク丼、ホットドッグと、3店舗でまったく異なるメニューを味わえる「麺屋武蔵」のテイクアウト&デリバリー限定メニューをご堪能あれ。

【森脇慶子のココに注目 テイクアウト特化編】店舗ごとにまったく異なるメニューを楽しめる「麺屋武蔵」

ラーメン業界のカリスマ「麺屋武蔵」。1996年、青山で創業以来、常に革新的なラーメンを世に送り出し、躍進を続けてきたこの名店から、今年の5月末、ユニークなテイクアウト商品が次々に登場! フリークの間で今、ジワジワと耳目を集め始めている。

神田「麺屋武蔵 神山」からは、鰻重に見立てた蒲焼チャーシュー丼が登場!「ちゃあ重専門店 蒲や」

まず、圧巻なのは、神田「麺屋武蔵 神山」のテイクアウト&デリバリー専門ブランド「ちゃあ重専門店 蒲や」だ。元々同店のウリだった“蒲焼チャーシュー”を鰻重に見立てたもので、見た目も味も、鰻の蒲焼を彷彿とさせる逸品に仕上がっている。

「蒲焼チャーシューは、豚バラ肉を醤油や砂糖、みりんで作ったタレにつけ、サラマンダー(表面に高温で焼き目や焦げ目を付ける器具)で表面をカリッとを焼きあげています」と、社長の矢都木二郎氏。

なるほど、こんがりと焼き上げられたチャーシューは、厚さ2〜3cmはあろうかという豪快さ。鼻腔を擽る香ばしい風味に誘われかぶりつけば、口中に溢れる肉汁ととろける柔らかさに陶然となる。一見、脂が強そうだが、豚バラ肉は事前に長時間蒸し、余分な脂を抜いているゆえ、見た目ほどは重くない。

「竹」

スタンダード「竹」1,200円のほか、特に人気なのは、鰻の中入れ丼よろしく肉厚のチャーシューをもう一枚、ご飯とご飯の間に忍ばせた「極み」3,000円の2種。

「極み」
ご飯の間に潜むもう一枚のチャーシュー

この「極み」に至っては、カットも豪快。ご飯よりも肉の方が多いと言っても憚らないボリューム感には、かなりの大食らいでもきっと満足できるはず。ご飯も、栃木県・海老原ファームの安全でおいしいコシヒカリを用いている。

上野「麺屋武蔵 武骨相傳」は、人気上昇中のBBQ料理で勝負。「プルドポーク専門店 Porkマニア」

「麺屋武蔵 神山」がチャーシュー重なら、つけ麺専門店の上野「麺屋武蔵 武骨相傳」は、最近人気上昇中のプルドポークを使った丼で勝負をかける。

ちなみに、このプルドポークとは、アメリカのBBQの代表的な料理。豚肩肉の塊に低温でじっくりと火を入れ、細かくほぐしてバーべキューソースと和えたものだ。

「プルドポーク丼」

ここでは、つけ麺の具としてチャーシュー代わりにのせている自慢のローストポークをプルドポークにアレンジ。ジューシーな豚肩ロース肉を通常よりもしっかりと焼きあげ、フォークで細かく裂いた後、チリパウダーやクミン、コリアンダーにガーリックパウダーといったスパイスでアクセントをつけている。

「プルドポーク丼 チリ」

甘辛ベースの醤油タレに漬けこんだ肉との相乗効果も上々。旨味を重複させていく味わいは、いかにもアメリカンなおいしさだ。プレーンの「プルドポーク丼」とチリ風味の「プルドポーク丼 チリ」の2タイプあり、各850円。

肉厚のローストポークのトッピングも可能で、それぞれプラス400円になる。

吉祥寺「麺屋武蔵 虎洞」で普段はラーメンのトッピングとして登場するソーセージが主役!「ホットドッグ専門店 タイガードッグ」

さて、オーラスは、なんと驚きの“ホットドッグ”。吉祥寺「麺屋武蔵 虎洞」の、その名も「タイガードッグ」がそれだ。店長の平山元氏がこう語る。「店名の『虎洞』にちなんで、虎の尻尾に見立てたソーセージをラーメンやつけ麺に角煮と並べてつけているんですが、このソーセージを今回は、本来の姿、というかホットドッグにしてみたんです」。

「タイガードッグ」

かくいう平山店長、このソーセージを作るために、創業八十余年を誇る武蔵境の老舗、ドイツハム・ソーセージ店「マイスタームラカミ」に弟子入りまでしたとか。それゆえ、もちろん一から手作り。羊腸を用い、牛挽肉と豚の粗挽きをブレンド。ラーメンの具ゆえ、味つけはチャーシュー風ながら、ニンニク、生姜、ブラックペッパー等で風味付けしたそれは、かなりの本格派。ソーセージ単品としても、充分成り立つ出来栄えだ。かねて、ソーセージだけの販売を望む向きがあったというのも頷ける。

「タイガーチリドッグ」

羊腸ならではのパリッとした歯応えに、肉の旨み溢れるスパイシーな味わいが醍醐味だ。ケチャップやチャーシューダレ、ワインビネガーで作ったオリジナルのBBQソースとの絡みも巧妙。ホットドッグらしいジャンクさを満喫させつつ、どこか品のある佳品に仕上がっている。それも、添加物を用いず、手間暇かけて作っていればこそ、だろう。

「タイガーチーズドッグ」

ロングサイズのソーセージを丸ごと一本挟んだホットドッグは、プレーンの「タイガードッグ」600円、「タイガーチリドッグ」650円、「タイガーチーズドッグ」700円の3種類。3種類一度に購入すると1,850円。100円お得なセットとなる。

ラーメン店でありながら、ラーメンではなく独自に商品を開発する。しかも、それぞれの店の個性を生かしたアイデアが生きている。そんなウィットに富んだテイクアウトメニューも「麺屋武蔵」らしい趣向と言えそうだ。

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

※本記事は取材日(2021年5月26日)時点の情報をもとに作成しています。

文:森脇慶子

撮影:麺屋武蔵、食べログマガジン編集部