【定食王が今日も行く!】
亀戸で味わえる極上マグロは、「飲み物」である!
人気レビュアーが100回以上通った
食べログの定食ランキング日本一が亀戸に!
定食の食べ歩きをライフワークにしているからには、やはりこのジャンルのトップに挑んでみたくなる。食べログで日本の定食ランキングを検索すると、北は北海道から青森、南は佐賀と新鮮な魚介類が獲れる地域の居酒屋や食堂が上位を占めている。実に多くの人が新鮮な魚介の定食を求めているかがわかる。しかし、現在(2017年8月22日時点)の1位は、なんと東京。江東区亀戸にある「よねさん」なのだ。
「よねさん」との出会いは、実は検索からではなかった。私がフォローしていた食べログレビュアーさん、THE 錦糸町さんのログからだ。ご本人とはまったく面識がなく、お顔も知らないのだが、錦糸町や亀戸エリアにある下町のいい店や日々のご飯を紹介していらっしゃる方だった。「よねさん」はそのレビュアーさんのお気に入りの店のようで、なんと100回以上も訪れているという。
食事というのはその店選びやメニュー選びに、人柄や、人生、価値観が表れる。「あ、この人似てるな」とか、「面白いチョイスするな」など、食べ歩きストたちはお互いの人生を垣間見て、刺激を受け、その人の人生を追体験する。例えば憧れの有名人の、好きな店の好きなメニューをテレビや雑誌で見て同じものを食することで、自分の体で同じ体験をすることができる。なんとも不思議で贅沢な体験だ。
空席でも入店許可を待て!
店主のこだわりが詰まった木曜限定ランチ
実はこの「よねさん」の定食ランチは木曜日限定。水曜日が定休日ということもあり、前日に仕込みをしているのだと思われる。11時オープンのため、11時30分ではすでに表に人が並んでいる。入り口には「一度、声をかけてください」という貼り紙があり、店内に入ってご主人に声をかける必要がある。
店内はカウンター8席と小さなテーブルが5席。 半分以上の席が空席だったが、「声をかけるまで外でお待ちください」と指示を受ける。独自のルールがあるようだ。しばらくして入店を許される。不思議な緊張感があるが、丁寧な接客だ。
この店の名物は、とにかくマグロ。全国を食べ歩いたご主人が、美味しいものだけを入手し希少部位などを提供しているとか。今回はマグロと旬の焼き魚を両方堪能できる「よねさん定食」を注文。
6種類あった本日おすすめ焼き魚から、金目鯛をチョイス。からし高菜、数の子とコーンのマヨ和え、お新香の3種類の小鉢が一緒に提供される、1汁5菜の贅沢な定食だ。
マグロは飲み物!?
既成概念を変える食感に驚愕せよ
そして、これこそが日本一と言われるマグロの刺身だ。口の中にスルスルと滑り込み、あっという間に舌の上でとろける。「マグロって飲み物だったんだ!」と思わず心の中で叫んでしまう。一番良い状態で食べられるように、提供する直前に魚の皮を引くというご主人のこだわりがうかがえる。それが空席があっても、入店を待たせる理由なのかもしれない。
マグロのわきには、ご主人が手作りしたという、生わさびに茎わさびを合わせたものが添えられる。出汁醤油と一緒にいただくと、マグロの脂の甘みがとことん際立つ。これはお酒のアテにぴったりでお茶漬けにしてもわさびの風味が立って最高だろう。
大間や戸井をはじめ、金沢や沖縄まで、いろいろなマグロを食べてきたが、久々にマグロの新境地を開拓した気がした。まさか亀戸でこんな体験をするとは想定外だった。
人生最後の日、何を食べる?
日本一のマグロ定食との出会いに感謝
店内のカウンターには、予約席用の尾崎豊の像が飾られている。没後25年以上経つが、どうやらご主人は熱烈なファンのようだ。
実はこの店を知るきっかけになったレビュアーさんが、半年前亡くなったことを知った。亡くなった後も、彼がよねさんを訪れた100回記念日に、彼を慕う方たちが偲んでこの店を訪れているようだ。レビューページにはのべ1,300軒以上のログがあり、まだ100軒近くの「行きたい店」が登録されている。自分も行きたい店のリストは増え続けていくから、死ぬまでに自分が行きたい店すべてに行くことは不可能だろう。彼の最後のログは、某牛丼チェーンの鮭定食だった。
「生涯最後の食事はいつかやってくる。その最後の一食は何になるだろう?」。会ったこともないレビュアー(THE錦糸町)さんが教えてくれたマグロの感動に包まれながら、ふと思った。その最後の日に後悔しないように、いろんな味を体験したいものだ。