お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第28回は、ハイレベルなパティスリー&パン屋がひしめく、横浜市青葉区のスイーツスポットを紹介します。後編では、東急田園都市線・たまプラーザ駅〜江田駅エリアを探訪!

【猫井登のスイーツ探訪28・後編】~横浜市青葉区のスイーツショップを巡る(東急田園都市線・たまプラーザ駅〜江田駅)~

【4軒め】「アン・プチ・パケ」

 

食べログマガジン編集部

真っ黄色の外観が特徴的なお店ですね!

 

猫井先生

こちらは、世界でも指折りの凄腕のシェフのお店ですよ! お菓子のワールドカップ「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」の個人部門で2度も1位を獲得され、2012年には超一流のパティシエのみ入会が許される「ルレ・デセール」のメンバーにもなられた及川太平シェフのお店です!

 

食べログマガジン編集部

ルレ・デセールって、どういう組織なんですか?

 

猫井先生

1981年にフランスで創設されたパティシエ・ショコラティエの組織で、より質の高いお菓子を作るための意見交換をする会ですが、厳しい審査があり、会員の多くがM.O.F.(フランス国家最高職人章)受章者などで占められています。日本人としては、2000年に京橋「​HIDEMI SUGINO」の杉野英実氏が加入を認められたのが初めてで、現在日本人としては7名が加入されていますね。

 

食べログマガジン編集部

権威ある会なんですね。そんな及川シェフのお店でまず食べるべきはどのケーキが良いでしょうか。

 

猫井先生

どれもおすすめなので、気になったものを選んでいただければ解説しますよ!

 

食べログマガジン編集部

では、やはり栗マニアとしては見逃せない「栗のタルト」はマストで。美しいフォルムの「クレメ・ダンジュ」、あとはカラフルな見た目の「ラルク・アン・シエル」も気になります。

「栗のタルト」506円
 

猫井先生

ホントに栗が好きなんですね!「びっ栗」です!

 

食べログマガジン編集部

そんな栗のケーキの解説を「じっ栗」と聞かせてください!

 

猫井先生

無駄に文字数を稼いでしまいましたね(笑)。では、「栗のタルト」から。フランスでは栗とカシスを合わせるのが王道とされていて、こちらもセオリー通り、栗にカシスでアクセントをつけています。上には栗の渋皮煮をのせ、栗の歯応えも楽しめる作りになっています。

 

食べログマガジン編集部

タルト生地自体にも栗がたっぷり入っているので栗好きにはたまりませんな! お次は「クレメ・ダンジュ」について教えてください。

「クレメ・ダンジュ」594円
 

猫井先生

「クレメ・ダンジュ」は、フランス・アンジュ地方発祥で、フレッシュチーズに泡立てた生クリーム、メレンゲなどを加えて水気を切ったデザートで、ガーゼなどに包まれているものをよく見かけます。ベリーのソースをかけることが多いですね。こちらのものは、フロマージュブランという少し酸味のあるフレッシュチーズに、濃厚なクリーム、サワークリームを合わせた軽い食感のチーズケーキにフランボワーズのジャム、焼いたメレンゲ、生クリームなどを重ねたものになっています。爽やかなチーズケーキと甘酸っぱい杏が、素晴らしいハーモニーを奏でます。

 

食べログマガジン編集部

たしかに巷で見かけるものは真っ白い生地の上にブルーベリーソースをかける組み合わせが多いですが、こちらのクレメ・ダンジュは層として重なっているのが特徴的ですね。 そして一際目を引く「ラルク・アン・シエル」ですが、味の想像がまったくつきません!

「ラルク・アン・シエル」528円
 

猫井先生

「ラルク・アン・シエル」とはフランス語で「虹」の意味です。名前の通りカラフルなケーキで、構成としては、ピスタチオのダックワーズ生地にピスタチオのマジパン、フランボワーズのバタークリーム、杏のコンフィとなっていますが、マジパンはアーモンドが香り立ち、バターのコクとフランボワーズの甘酸っぱさが渾然一体となったバタークリーム、ねっとりと旨味のある杏……。一つ一つの香りと味わいが素晴らしく、それでいて調和がとれているという、まさに一流のオーケストラの演奏を彷彿とさせるような逸品です!

※価格はすべて税込