【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#3】「ロジャーズ キッチン」
インド料理とほかの料理をイノベーティブフュージョン的に融合させ、進化させた「モダンインディアン」というジャンルは既に世界的に認知されており、日本でも少しずつモダンインディアンのお店が増えてきています。それに続けとばかりにモダンネパール料理を目指すお店も複数出てきたと思ったところに、「モダンスリランカ」を標榜するお店が生まれました。都営地下鉄三田線・蓮根駅から徒歩10分少々の場所にある「ロジャーズ キッチン」です。
店主はスリランカ人のロジャーさん。西麻布の焼肉店で20年以上働いていたそうです。スリランカ料理をモダンテイストで提供できるお店を出したいという念願が叶い、こちらのお店をオープンしたのが2020年10月のこと。
通常時であればこれだけのクオリティと個性のあるお店ですと既に満席状態のはずですが、コロナ禍でスタートダッシュできず足踏み状態という、実にもったいないお店なのです。大通りから少し外れた住宅街の中にぽつんと存在するお店はグランドピアノも置かれ、高級感がありながら親しみやすさも共存する落ち着いた空間となっています。
メニューから、まず気になった「カレーリーフスープ」1,000円をいただきました。こちらはカラピンチャ(スリランカのカレーリーフ)とココナッツミルクでシンプルに作ったもの。スリランカでは、朝に「キャンダ」というおかゆを、食べるというよりも“飲む”習慣があるという話を以前スリランカ関係の仕事をしている方から聞いたことがあるのですが、このスープはそのキャンダをベースにアレンジしたもの。アクセントにお米も少量入っていて、スターターとしてとても面白く、その後の料理への期待感を煽るものでした。
続いて「野菜コロッケ」500円。こちらはじゃがいもやバナナの花を具としたスリランカスタイルのコロッケで、ブラックペッパーがしっかりと利いていておいしいです。ソースもスリランカ式チリソースといったテイストですし、器もそれぞれこだわりを感じます。
「イカと野菜のピリ辛炒め」850円は、スリランカ料理としても有名かつ人気の「デビル」という料理です。中華の酢豚がスパイシーになったような味付けなのですが、程良い酸味と辛味が食欲をそそります。イカや野菜の火入れも絶妙で、クオリティの高いデビルでした。
メインは「スリランカライスプレート」1,600円。スリランカのカレーとライスと副菜が一皿に盛り付けられたスリランカスタイルのカレー&ライス。こちらはモダンというよりは基本に忠実なオーセンティックな雰囲気。それでいて野菜は地元の畑で採れたものをメインに使っているそうです。
この地域は都内ですが畑も結構ありますからね。地域の農家と提携して手に入れた野菜を使うというのも、この地に根差したお店にしていくんだという意気込みが見えてとても良いです。
オーセンティックとモダンの使い分けが見事で、どれを食べてもおいしいのですが、これだけでは終わりません。予約限定の「スリランカ式アフタヌーンティー」2,000円はスリランカの伝統菓子とスリランカ産の紅茶をイギリス式アフタヌーンティーで楽しめるというもの。シェフには「パレスホテル東京」のパティシエをしていた方がいるそうで、スイーツもお手の物というわけです。
さらにまだあるんです。テイクアウトや近所へのデリバリーにも力を入れているということで、「骨付きラムビリヤニ」1,700円をテイクアウトしたらこれがまた本当に凄かった! 血抜きだけで2日かけたという手間暇かけたラム肉は、骨付きでドカンと存在感のあるもの。フォークを入れた瞬間にほぐれる尋常じゃないレベルの柔らかさに驚きました。シナモンとカラピンチャが香り、フライドオニオンやカシューナッツ、そして細かいパイナップルも良い仕事をしています。これがテイクアウトできるって凄いことですよ。もちろんお店で食べてもとてもおいしいでしょう。
スリランカ料理の伝統的な部分をベースに、見せ方や打ち出し方でモダンな雰囲気を演出するお店。ロジャーさんの丁寧な説明も心地よく、勉強にもなります。こんな良いお店がまだあまり知られていないというのは、繰り返しますが本当にもったいないこと。近くに用があった際には是非とも行くべき名店です。
スリランカにもアーユルヴェーダの思想は根付いており、伝統医療としての食事療法もあり、バランス良く食べることで健康になれるといわれています。健康維持の為にも、ヘルシーなお肉と野菜たっぷりのスリランカ料理を楽しみたいものですね!
※価格はすべて税込