緊急事態宣言発令に伴う営業時間短縮の要請を受け、テイクアウトに注力する店が急増している。そこで、先月公開した、実力店のランチメニューに特化した臨時特別号の第2弾として、フードライター・森脇慶子が「お店さながらのクオリティの高さに注目!」と舌を巻く、テイクアウト特化編を全4回にわたり紹介。今回は、東京・新富町の中華料理店「新富町 湯浅」のメニューを堪能あれ。

【森脇慶子のココに注目 テイクアウト特化編 Part2】「新富町 湯浅」

銀座の華やかさから一歩外れた新富町界隈。三業地として栄えた歴史を持つこのエリアには、近頃、話題のレストランがちらほらとオープン。食に関心を持つ人々の注目を集めている。

そんな美食の街に店を構えて丸2年を迎えた「新富町 湯浅」もまた、注目を浴びる一軒だ。それも、ご主人の湯浅大輔シェフは、ミシュラン二つ星の名店「赤坂 桃の木」や銀座「筑紫樓」で修業を積んだ経歴の持ち主と聞けば納得。この店では、四川、上海をベースにしつつも、コンセプトには囚われず、少しだけ中華の枠を越えた料理の数々で食通たちの舌を楽しませている。

今年1月からの緊急事態宣言を機に始めた新アイテムのテイクアウト商品「スパイス香るローストビーフ」2,484円もそのひとつだ。湯浅シェフ曰く「おせちの一品として出していたんですが、評判が良くて。常連さんには赤身を好む方が多いので、牛は北海道産国産牛のもも肉を使っています」とのこと。

「スパイス香るローストビーフ」

肉は、ジューシーさを逃さぬように4kgほどの塊を100℃のオーブンに入れ、約40〜50分かけて焼き上げている。下味は塩と胡椒のみとシンプルだが、スライスした断面に、自家製の辣醬とレモングラスのような香りを持つ馬告(台湾の山胡椒)を振りかけている。そのまま食べれば酒の肴に。添えてある甜醤油(中国の甘い醤油)をつければ、ご飯のお供にもぴったりだ。

「フカヒレ弁当」

だが、フカヒレ料理をスペシャリテに持つ湯浅シェフのこと、一押しは、やはり限定10食の「フカヒレ弁当」だろう。現在お店では、ポピュラーなヨシキリザメをはじめ、モウカザメやアオザメなど常時3〜4種類以上を揃え、用途に応じて使い分けている。今回の弁当には、それらの中から「ヨシキリザメの胸ビレの散翅(ヒレの繊維がほぐれた状態のフカヒレ)を使っています。繊維の太さや長さも塩梅よく、ゼラチン質もあるので、ご飯との相性もバッチリだと思います」と、湯浅シェフ。

自らフカヒレを戻す手間隙もさることながら、そのスープが力作だ。鶏のもみじ4kgに手羽先2kg、加えて鶏の胴がら、鶏油、豚ばら軟骨等を、約8時間強火で炊き込んで取る白湯は、ゼラチン質ならではの濃厚なコクと旨味が持ち味。奥行きのあるフカヒレの滋味と相まった余韻豊かな味わいは、お店でいただくときと変わらない。1人前50gも入っているそうで、ボリュームも充分。これで2,808円は、お値打ちと言えそうだ。

前回に続くベストセラーメニューは、「よだれ鶏」。お店でも不動の人気を誇る逸品で、1パック1,080円とお値段も手頃。鶏は、サッパリとした味わいで柔らかくジューシーな山梨の健味どりを使用。その腿肉を清湯に入れた状態で約30分、83℃の温度で蒸しあげている。こうすることで、鶏の旨味を逃すことなくしっとりと仕上がるわけだ。

その鶏の旨味に甘みをグッと控えた男前なタレがベストマッチ。4種の唐辛子と花椒、八角、桂皮、にんにくなどで作る自家製辣油の香りが食欲をそそる佳品だ。ちなみに、このよだれ鶏のタレは別売りもしており、1瓶1,404円。鶏だけでなく、蒸し豚や茹でじゃが、冷奴、餃子のタレ等々。アイデア次第で如何様にも使える優れものだ。

※価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

※本記事は取材日(2021年2月12日)時点の情報をもとに作成しています。

文:森脇慶子