緊急事態宣言発令に伴う営業時間短縮の要請を受け、テイクアウトに注力する店が急増している。そこで、先月公開した、実力店のランチメニューに特化した臨時特別号の第2弾として、フードライター・森脇慶子が「クオリティの高さに注目!」と舌を巻く、テイクアウト特化編を全4回にわたり紹介。今回は、東京・八丁堀のジビエ名店「ブラッスリー ギョラン」のメニューをご堪能あれ。
【森脇慶子のココに注目 テイクアウト特化編 Part1】「ブラッスリー ギョラン」
緊急事態宣言による時短対応で、コースでも手早く食べられるようにと、アミューズ、前菜、メインにデザートのみの通常より品数の少ない“時短コース”を始めたのは、八丁堀の知る人ぞ知るジビエの名店「ブラッスリー ギョラン」。その時短用のディナーコースをそのまんまテイクアウト仕様にしたものが、ご覧のセットだ。
「昨年4月の緊急事態宣言のときは、“テリーヌとカスレのセット”など5,000〜6,000円ぐらいのセットものが中心のテイクアウトにしましたが、今回は、もっと本格的なフランス料理をご家庭でも手軽に楽しめるようにと、ディナーの内容をそっくりそのままテイクアウトできるようにしました。ボリュームもたっぷりで、食べ応えもあると思いますよ」
こう語る羽立シェフは、白金の名店「コート・ドール」で修業後、フランスやベルギーでも研鑽を積み、原宿「オー・バカナル」や丸の内「ブラッスリー・オザミ」では料理長まで務めた百戦錬磨の大ベテラン。独立を果たしたこの店では、ブラッスリーの名に違わず、テリーヌやスープ・ド・ポワソン、野うさぎのロワイヤルといった王道フレンチが店のメニューにずらりと並ぶ。
テイクアウトも然りで、いずれもクラシックかつ存在感あり! 前菜の「テリーヌ」は、オマール海老かジビエのどちらかを選び、メインも、「尾長ガモの炭火焼」「猪の炭火焼」「蝦夷鹿の赤ワイン煮込み」の3種類から食べたい料理を選べるシステム。
なかでも一番人気は、「尾長ガモの炭火焼」なのだとか。天然鴨がほぼ半身、堂々約200gが入る充実の内容を見れば、それも納得。天然の鴨をメインにしたセットが税込3,000円は、掛け値なしにお値打ちだ。
それには、ひとつ理由がある。実は羽立シェフ、料理人である一方、狩猟歴10年余りの経歴を持つれっきとしたハンターなのだ。それゆえ、店で出されるジビエは、羽立シェフ自ら仕留めた真鴨や尾長ガモを始め、新潟の猪や北海道のヒグマなど皆、羽立シェフの狩猟仲間から届くものばかり。いずれも適切な手当と丁寧な下拵えがなされているのも、信頼のおけるハンターからのみ取り寄せるジビエゆえだろう。
ちなみに、「ジビエのテリーヌ」には、北海道のヒグマに新潟の猪や鴨、蝦夷鹿など数種類のジビエをミックス。黒胡椒をキリリと利かせたスパイシーな風味のなか、様々な野生の肉が織りなす旨味のハーモニーは、ベテランの羽立シェフならではだろう。赤ワインを呼ぶこと請け合いだ。同店ではワインも販売しているゆえ、料理に合うワインを一緒に購入すれば、ちょっとリッチな夕食を楽しめそうだ。
また、「オマール海老のテリーヌ」は、羽立シェフ曰く「『コート・ドール』とほほ同じレシピ」だという佳品。しっとり柔らかな食感のなか、後に残るバターの風味とコクが古き良きフランス伝統の味を忍ばせる。
予約は当日18時までOK。仕事帰りに立ち寄ってみたい。また週末なら、鴨鍋セットも悪くない。こちらは、真鴨がほぼ一羽分と長ネギがついて7,000円。
「先に水からモモ肉を煮込んでいただいてスープを取り、そこに長ネギや鴨を入れて召し上がってください。いいスープが取れると思いますよ」と羽立シェフからのアドバイス。
タレは、塩、マスタード、おろし醤油にポン酢、中華風によだれ鶏のタレなど好みでいろいろ試してみるのも一興だろう。
※価格はすべて税込