ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第18回は、東京・国分寺「ジミーズダイナー」の魅力をじっくり教えてもらいます!

【じっくり食べたいハンバーガー】第18回「Jimmy’s DINER」(ジミーズダイナー)

今年2021年は、「マクドナルド」日本上陸50周年の節目の年です。ひと昔前まで、ハンバーガーと言えば「チェーン店で食べるもの」と半ば相場が決まっていましたが、ここ10年ほどの間にチェーン店“でない”、その店1店舗きりのハンバーガー“専門店”が、それこそ駅ごとに1店ぐらいの勢いで増えて、ハンバーガーという食べ物の認識もだいぶ変わってきたように感じます。国分寺にもそんな“グルメバーガー”の名店がありまして……。今年最初の連載はその店、「ジミーズダイナー」の紹介から始めたいと思います。

再開発で様子が一変したJR国分寺駅北口から徒歩約5分。ちょっと渋めの路地裏の、ひときわ目立つ黄色い店構えがジミーズです。黄色い扉を開けると中も黄色。ひと目ですべてが見渡せるコンパクトで明るい店内に黄色い席が15席。オープンは2015年。店主の平川さんと明日花さんの2人で回しています。

平川さんは飲食業歴20年超のベテラン。大手外食企業に十数年勤めた後、かねての目標だったカフェを始めようと計画。しかし、「カフェだけでは足りない。何か欲しい」と考えた末、「そうだ、ハンバーガーだ!」とひらめき、そこでなんと、私の著書『THE BURGER MAP 首都圏版』(幹書房)をお買い上げになりまして、それを手にハンバーガー屋への就職活動を開始。結果、採用されたのが足立区は北千住の名店「サニーダイナー」でした。

明日花さんもサニーダイナーの元スタッフです。口を揃えて2人が言うには、サニーダイナーは「ヤバイ、死にます」というぐらいメチャメチャ忙しい店で、おかげで2人とも相当鍛えられたそうです。店内外の造りから、マンゴージュースの缶に至るまで、ジミーズはサニーダイナーの影響を色濃く受けた店で、外に向いたグリドル(鉄板)の配置もサニーダイナーと同じ。北千住から西に30km離れた、国分寺の「黄色いサニーダイナー」と敬意を込めて呼びたい、ジミーズはそんなバーガー店です。

バーガーメニューはレギュラー14品、チキン4品、フィッシュ3品に加え、午後3時から販売のサンド1品、さらに季節限定のバーガーがその折々に登場します。まずは「チーズバーガー」からいってみましょう。

「チーズバーガー」1,180円。ポテトはこれで並盛り。ピクルスは現在、希望する客のみに提供

パティは良質な国産牛100%の重量110g。上にチェダーチーズ1枚。バンズは国分寺の人気店「木もれび」作。マーガリン、ショートニング不使用のトランス脂肪酸フリー。ゆえに縦に膨らまず、横に平たい形状で、クラウン(上バンズ)の裏にマヨネーズ。野菜は積まずに横置き。その隣に細身のポテトがもれなく山盛りで付いてきます。

粗みじんに刻んだオニオン。このザクザク感と適度な辛味がジミーズのバーガーの大きなポイント

顔を近寄せれば、芳ばしく焼けたパンの香りにビーフの香り、そして、チーズのいい香り。野菜を挟むと、オニオンの辛味にマヨネーズが重なった感じがすごくいいです。粗みじんに刻んだオニオンは「ザクザク」感も素晴らしくて、このオニオンがジミーズのバーガーの大きなポイントと言ってよいでしょう。

ですが、オニオン以外の野菜はバーガー全体の味を薄めてしまう感じがして、私は不要に思いました。そんなときは、野菜は野菜で食べてもらって、ハンバーガーは、バンズとパティとチーズとオニオンだけで“スナック”感覚で食べることをおすすめします。外国人(アメリカ人)もそういう食べ方をよくしていますよね。アノ感覚です。

「Wチーズバーガー」1,580円。パティを2枚にすると野菜とのバランスがちょうどよい

そこで、「Wチーズバーガー」をオニオンだけのせて食べてみたところ……こっちは野菜“も”挟んだ方がおいしい(笑)。野菜を足すと味に広がりとまろやかさが生まれ、味わいが豊かになります。

整理すると、パティ1枚の「チーズバーガー」はオニオンだけのせて食べるのがおすすめ。パティ2枚の「Wチーズバーガー」は野菜をすべて挟んで食べるのが私のおすすめです。その辺りのバランスの妙……皆さんも試してみてください。

野菜別添えのバーガーは、野菜「あり・なし」のチェンジが簡単にできるので、いいですよね。理に適っていると思います。

ジミーズの集大成的一品「ベーコンエッグチーズバーガー」1,380円。ベーコンは薄めのものをあまり焼き込まずに1枚。エッグはサニーサイドアップ=片面焼き。野菜は全部挟んだ方が美味

そして一番人気の「ベーコンエッグチーズバーガー」、これが美味! ベーコンの塩気とエッグのコク、マイルドなマヨネーズ、そこへ粗みじんのオニオンがクサビのように随所に辛味を利かせて、すべて合わさったときのこの抜群のスナック感! 薄く平たく食べやすく、ストレスなく「スッ」と胃の腑に落ちる、その食べ心地の好さ。カンペキ! 冷えたコーラが進むこと! コレだけのためにわざわざ食べに行く価値アリのおいしさです。

なお、コーラをはじめとする炭酸飲料各種は、こんなカップに注がれて出てきます。これで容量1リットル! 隣の瓶や小鉢と大きさを比べてみて下さい。ランチタイムは無料でハンバーガーに付いてきます。

「ガーリックチキンバーガー」1,180円。ちなみにスタッフ明日花さんのおすすめは「スウィートチリフィッシュバーガー」にパインのトッピング。これがメチャクチャおいしいそう

最後にジミーズらしいメニューをもう一品。グリルした鶏モモ肉200gの上にオリーブオイルで炒めたニンニクがのる「ガーリックチキンバーガー」です。ちょっとガーリックシュリンプみたいな味がするチキンサンドですが、これがまぁ、ニンニク利きまくりの悪魔的なおいしさで(笑)。ワルい味ですよぉ〜(笑)。一度、悪魔に魅入られたら最後、ずーっとハマってしまいそうな、常習性満点の極悪サンドです。

ジミーズのハンバーガーはわかりやすくて、元気が出るような、明るく陽気なバーガーですね。オニオンの辛味とザク感を軸に、ケチャップなどの力を借りずに食べさせてしまうあたりが実力です。あと、バンズがいい。表皮のちょっと張った感じと微かな芳ばしさがポイントでしょう。

こんなバーガー店が近所にあるなんて、国分寺の皆さんは幸せ者! テイクアウトも大人気!

※価格はすべて税抜

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

※本記事は取材日(2021年1月19日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文・撮影:松原好秀